「思考停止の丸投げ」から「戦略的活用」へ。商社を“機能”として使い倒す、海外輸出の「再設計」ガイド【後編】
【シリーズ構成】
① 「思考停止の丸投げ」から「戦略的活用」へ。商社活用の「再設計」ガイド【前編】
② 「思考停止の丸投げ」から「戦略的活用」へ。商社を“機能”として使い倒す、海外輸出の「再設計」ガイド【後編】(本記事)
前編では、
- なぜ多くの企業が「商社任せ」になりやすいのか
- 商社任せのままでは見えなくなる3つのポイント
を整理しました。
後編となる本記事では、
- 海外輸出の3つの構造パターン
- 自社の「任せすぎリスク」を診断する5つの問い
- 商社を“戦略的”に活用し、自社が主導権を握るための具体的な第一歩
を通じて、「商社に任せるかどうか」ではなく、「何を任せて、何を自社の“脳みそ”として握るか」 を整理していきます。
目次
海外輸出の3つの基本構造パターン
前編で見てきたような「見えなくなるリスク」を踏まえると、海外輸出の構造は大きく次の3パターンに整理できます。

パターン① 商社丸投げ型
特徴
- 1〜数社の商社が、海外販路のほぼすべてを担ってくれている
- メーカー側は「商品供給+国内対応」で完結が一般的
- 国別・販路先別の情報は、商社からの報告がないと分からない
メリット
- 社内リソース(人員や時間、費用など)をほとんど使わずに海外展開できる
- 規制・物流・与信(決済の取りこぼし)などのリスクを商社に任せられる
- 海外未経験でもスタートしやすい
デメリット
- 現地の販売状況・価格・顧客像が見えづらい
- 商社の戦略に強く依存する
- 商社側の事情で取扱いが減った/終了したときの打ち手がない
向いている企業
- まずは「海外実績ゼロ → 何かしらの実績を持ちたい」フェーズ
- 海外専任担当を置く余力がほとんどない企業
- 国内市場でやるべきことがまだ山積み/国内市場での売り上げ拡大がまだ見込める状態の企業
パターン② 役割分担型(商社+自社+外部パートナー)
特徴
- 販路開拓や在庫・物流は商社が担う
- 市場理解やブランド戦略、情報整理は自社主導
- 必要に応じて、現地調査やマーケティングを外部パートナーに依頼
メリット
- 商社のネットワークを活かしつつ、情報の主導権を一部握れる
- 「どの国で、どのチャネルで、どんな価格帯で売っているか」を自社でも把握できる
- 中長期の戦略を描きやすくなる
デメリット
- 社内で最低限の海外担当(情報整理・判断役)が必要
- 商社・自社・パートナー間のコミュニケーション設計が必要
- 最初は手間に感じることもある
向いている企業
- すでに海外売上が一定規模(全体の10〜20%)に達している企業
- 「海外を伸ばしていきたい」という経営方針が出ている企業
- 商社との関係は維持しつつ、もう一段階ステップアップしたい企業
パターン③ 自社主導+商社活用型
特徴
- 「どの国で、どのチャネルで、どのポジションで売るか」を自社で設計
- 現地の卸や小売へのアクセスに、商社を“手足”“機能”として活用
- 一部の国・チャネルでは、D2Cや越境ECなど自社直販も組み合わせる
メリット
- ブランド戦略・価格戦略を自社でコントロールしやすい
- 国・販路先ごとの商品や予算の構成(内訳)を柔軟に組み替えられる
- 現地の声を、新商品の開発や国内でのマーケティング/市場獲得にも還元しやすい
デメリット
- 海外事業をリードできる人材・体制が必要
- 規制や与信管理など、一部は自社で背負う覚悟がいる
- 立ち上げ〜軌道に乗るまでの負荷が高い
向いている企業
- 海外売上が既に一定以上あり、「第二の柱」にしたい企業
- 自社ブランドの世界観・価格ポジションを厳密に守りたい企業
- 海外事業を経営のど真ん中に置いていく方針の企業

ポイントは、「どのパターンが良い悪い」ではなく、
「自社は今、どのパターンになっているのか?」
「そのパターンは“意図した形”なのか、“流れでそうなった形”なのか?」
を、一度言語化しておくことです。
自社の「任せすぎリスク」を診断する5つの問い
では、自社がどれくらい“任せすぎ”になっているのか。
次の5つの問いに、直感で「YES / NO」をつけてみてください。
5つの問い(Q1〜Q5)
Q1.
海外向けの販売価格帯(国別・販路先別)を、社内の誰かが「おおよそ」でなく数字で説明できる。
Q2.
「直近1年間で、国別・販路先別の売上構成は?」と聞かれて、3〜5営業日以内に一覧を出すことができる。
Q3.
商社経由以外にも、現地バイヤーやユーザーの声を直接取れる手段(展示会、オンラインミーティング、SNSのDMなど)を、年に数回は持てている。
Q4.
3年後の海外売上について、「全体売上の◯%を海外で」「優先国はA国・B国」くらいまでは、経営陣と共通認識がある。
Q5.
少なくとも年1回は、商社と「単価や条件交渉」だけでなく、市場の状況や今後の方針について判断/協議する場 を持っている。
YESの数で、ざっくり3段階に判定
- YESが0〜1個:丸投げ危険ゾーン
海外売上が増えているほど、ブランド・価格・商品や予算の構成(内訳)のコントロールが効かなくなるリスクが高い状態です。
まずは「現状を見える化すること」から着手したい段階です。 - YESが2〜3個:見直しフェーズ
ある程度の情報は握れているものの、「点」の情報で止まっており、「線」や「面」で整理しきれていない状態です。
今の商社との関係性を維持しつつ、役割分担や判断や協議する場を少しずつ整えたい段階です。 - YESが4〜5個:一定コントロールできているゾーン
商社任せになりすぎず、自社としても主導権を持ち始めている状態です。
ここから先は、「どの国・どの販路先に投資を厚くするか」など、中長期の戦略設計に踏み込んでいける段階です。
診断の結果がどうであれ、大切なのは、
「商社任せだからダメ」ではなく、
「自社として、何をどこまで握るのか」を決める
という視点です。
商社を「機能」として使い倒すための第一歩
ここまで読むと、「商社をやめるべきなのか?」と感じるかもしれません。
しかし、現場でご一緒してきた感覚からすると、
「商社をやめる」ことが正解になるケースは、実はそう多くありません。
むしろ、ポイントは
商社を“単なる丸投げ先”ではなく、「物流・商流の機能」として位置付け直し、
自社が“脳みそ(戦略)”を主導権を握り推進していくこと
です。
「商社=何でもお願いする相手」ではなく、
- 在庫・物流・与信・現地ディストリビューションを担う手足の機能
- 一方で、「どの国にどのポジションで出ていくか」は自社が決める脳みそとなる。
という役割分担に切り替えていくイメージです。
そのための第一歩として、すぐに取り組めるアクションを3つ挙げます。
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① 海外売上の棚卸し(国/チャネル/商社ごと)
まずは、現状を「見える化」することが出発点です。
- 商社別
- 国別
- 販売先別(オフライン/EC/他)
に分けて、直近1〜3年分の売上を整理してみてください。完璧な数字でなくても、最初は「推計ベース」で構いません。
ポイント
- 「海外=◯◯商事向け売上」の一行を、もう少し解像度高く分解する
- どの国・どの販路先が伸びているか/頭打ちかを、ざっくり掴む
② 自社で必ず握るべき指標を決める
次に、「ここだけは商社任せにしない」という指標を決めます。
例えば:
- 国別売上・粗利の推移
- 国別の販売価格帯(だいたいのレンジ)
- 重点的に力を入れる販売先(オフライン/EC/越境ECなど)
これらを、年1回〜半期に1回のタイミングで必ず確認し、自社の中で記録しておくルールを決めます。
ポイント
- 最初から “全部” を握ろうとしない
- 「この3つだけは必ず毎回確認する」というラインを決める
ことで、過度な負荷をかけずに「任せすぎ」を防ぐことができます。
③ 年1回の“海外事業について把握/協議”の場をつくる
最後に、商社との関係を「発注先」から“機能としてのパートナー”に変えるために、年1回現状を把握し、議論する場 を持つことをおすすめします。
このような場では、以下のようなテーマを話し合います。
- この1年で、どの国・販売先が伸びたか/苦戦したか
- 現地の競合環境や価格帯の変化
- 次の1〜3年で、どの国・販売先を強化していきたいか
- 商社・メーカーそれぞれができること/期待したいこと
ここで大事なのは、「条件交渉の場」にするのではなく、
自社が描いた地図を共有し、「その地図に沿ってどう動いてもらうか」を相談する場 にすることです。
次の一歩:構造を「見える化」してから判断する
最後に、もう一度この問いに立ち返りたいと思います。
「商社に任せていて、本当に大丈夫か?」
この問いに対して、感覚的な不安だけで「変える/変えない」を決めてしまう のは、正直もったいないです。
まずやるべきことは、
- 今、自社の海外輸出が どのパターン になっていて
- どの国・販路先で、どのくらい売上・粗利が出ていて
- 商社・自社・外部パートナーの 役割分担がどうなっているか
を、「紙1〜2枚で説明できるレベル」に整理することです。
そのうえで、
- このままパターン①を続けるのか
- パターン②の「役割分担型」に一歩進めるのか
- 一部の国だけでもパターン③に寄せていくのか
という判断をしていく方が、結果としてリスクもコストも抑えやすくなります。
COUXUとしてご一緒できること
COUXU株式会社では、これまで2万回以上の海外企業との商談と、400社以上の日本メーカー様の海外輸出支援を行う中で、
- 「海外売上の構造を一緒に棚卸しする」
- 「自社に合った役割分担パターン(商社=機能/自社=脳みそ)を整理する」
といったお手伝いをしてきました。
もし、前編・後編を通して読まれて、
- 「うちの海外輸出も、一度構造を整理した方が良さそうだ」
- 「商社は動いてくれるが、“脳みそ”を担う人材・ノウハウが社内に足りない」
と感じられた場合は、次のような一歩から始めていただければと思います。
- オンラインでの「海外売上の棚卸し相談」
⇒ 【オンライン相談はこちら】 - 5分で回答できる「海外輸出の現在地チェック診断」
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「商社に丸投げだから不安」から、
「商社を“機能”として使い倒し、自社が“脳みそ”として主導権を握る」状態へ。
そのための最初の一歩を、一緒に考えられれば嬉しいです。
