海外輸出実現への商談マニュアル|初めてでも失敗しない5つの準備(資料・価格表・契約・パッケージ・サンプル)
「全部お任せで売ってほしい」というスタンスのままでは、パートナー企業は見つからず、せっかくの商談も成果につながりません。では、日本企業は海外進出を進める際に最低限どのような準備をしておくべきか。
本記事では、海外商談の現場で必ず問われる5つの必須準備項目とチェックポイントを、「なぜ必要か」「どこまで用意すべきか」まで含めて整理します。
目次
まず押さえたい:海外バイヤーが見ている3つの軸
私たちが海外バイヤーと商談を重ねる中で、ほぼ共通している視点は次の3つです。
- ① 比較・検討しやすいか:会社・商品が整理された提案資料と価格表があるか
- ② 売れる形になっているか:店頭に並べたときに売れるパッケージ・ラベリングになっているか
- ③ 一緒に市場をつくる気があるか:契約条件・サンプル提供を含めて、腰を据えて取り組む姿勢があるか
この3軸を具体的な「準備項目」に落とし込んだのが、以下の5つです。
- 提案資料(会社・商品説明)
- 価格表
- 契約条件(特に独占権の取り扱い)
- パッケージ・ラベリング
- サンプル提供
ここからは、それぞれの項目について「何を」「どこまで」準備すべきかを順番に見ていきます。
1. 商談の土台になる提案資料(会社・商品説明)
海外商談で最初に求められるのは、「あなたの会社は何者か」「どんな商品を、どんな強みで売ろうとしているのか」が一目で伝わる資料です。
何を入れるべきか(チェックリスト)
- 会社概要:沿革・所在地・事業内容・主要取引先。海外実績があれば必ず記載(信頼度が大きく変わります)。
- 商品ラインナップ:写真+カテゴリ・用途・特徴などの短い説明で、全体像を俯瞰できる構成に。
- 強み(USP):他社との違いを明確に。認証・試験データ・導入実績など、根拠となる情報も添える。
- 詳細資料(英語版):成分・使用方法・得られるメリットなどを整理。誇大表現は避け、図表や写真を使って視覚的に説明。
バイヤー目線で見ると、なぜ重要か?
- 商談は複数社の比較が前提。資料がなければ検討のテーブルにすら載りません。
- 口頭説明だけでは、相手企業の社内決裁に回せません。資料が「社内共有の原本」になります。
- 整った資料は、「取引しても大丈夫そうだ」という信頼の証明です。スタートラインに立つための最低条件といえます。
よくある失敗:パンフレットや会社案内だけを渡し、「詳しいことは追ってメールで」としてしまうケース。商談の熱量が高いうちに、比較検討に使える資料をその場で提示できるかどうかが、その後の進み方を大きく左右します。
2. 「本気度」が伝わる価格表
次に必ず聞かれるのが価格条件です。ここであいまいな回答しかできないと、バイヤーからは「まだ社内で整理できていない=本気度が低い」と見なされ、商談が一気にトーンダウンします。
価格表に含めたい項目
- 卸価格:バイヤーが仕入れるときの単価を明示。
- 最小注文数(MOQ):例)初回100個〜など。まずは小ロットで試せる条件があると、商談が前に進みやすくなります。
- 数量ごとの割引:例)500個以上5%引き、1000個以上10%引き、などの階段設計。
- 物流情報:重量・サイズ・梱包単位(ケース入数)。輸送コストの試算に必須です。
- 取引条件:通貨(USD / JPYなど)と引渡し条件(FOB/CIFなど)を明記。
バイヤーが価格表で見ているもの
- 価格があいまいだと、「本気で売る気がない」「まだ決まっていない」と見なされ、商談が止まりやすくなります。
- バイヤーは社内で利益率・販売価格・在庫回転をシミュレーションするため、具体的な数字が不可欠です。
- 数字を提示できない企業は、社内調整に時間がかかる=リスクが高いパートナーと判断され、契約候補から外れやすくなります。
3. 契約条件の整理(特に「独占」の線引き)
多くのバイヤーは、自社の投資を守るために「独占契約」を求めます。一方で、売り手側が条件を整理しないまま独占を認めると、「売れていないのに他国で販売できない」という状態に陥りかねません。

事前に決めておきたいポイント
- 独占にするかどうか:「独占/非独占」の社内方針を明確にしておく。
- 契約期間:売り手は1年、バイヤーは3年を希望しがち。
例)初年度1年でスタートし、売上条件を満たした場合に更新する、などの折衷案。 - 売上目標:例)年間◯万ドル以上。未達時には更新しないなど、解除条件をあらかじめ明文化。
- 複数パターンの用意:例)「独占1年+更新条件あり」「非独占だが販売支援を厚くする」など、交渉の幅を持たせておく。
なぜ事前整理が重要か?
- 曖昧なまま独占を与えると、売れないのに他社と組めないという、身動きの取れない状況になりかねません。
- バイヤーは投資を守るため独占を求めますが、売上目標や解除条件がないと、相手だけが得をする一方的な契約になるリスクがあります。
- あらかじめ条件を整理しておくことで、商談の主導権をこちら側が握りやすくなります。
4. 「店頭で選ばれる」パッケージ・ラベリング
パッケージは、海外の消費者が商品と初めて接触するポイントです。
どれだけ品質が高くても、「読めない」「何の商品か分からない」状態では手に取ってもらえません。輸出前に、売れる形に整えることが重要です。
パッケージでチェックしたい項目
- 英語表記:成分・使用方法・注意事項など、基本情報は英語で記載。
- 現地言語対応:最初は「英語+現地語シール」でも可(例:ベトナム語・タイ語・タガログ語)。
- 法律の確認:食品表示法や化粧品規制など、国ごとの要件を事前に確認。
- ブランド統一:国内外でロゴ・色・トーンを揃え、ブランドとしての一貫性を保つ。
- 柔軟な変更余地:現地バイヤーの要望に応じて、表示内容やデザインを調整できる体制を示す。
用語の補足
ラベリング=パッケージの表示(成分・注意事項・原産国など)。
国によっては、法律で表示が義務づけられており、要件を満たさないと通関できないケースもあります。
対応していないと、どんなリスクがあるか
- 必要な表示がないと、税関で止められ販売できない国が多くあります。
- 消費者は読めない言語の商品に不安を感じるため、購入のハードルが一気に上がります。
- パッケージ対応まで手が回っていない企業は、「本気度が低い」「継続的な販売が難しそう」と判断されがちです。

5. 商談を前に進めるサンプル提供
最後に、商談の「決め手」になるのがサンプルです。
実物を試せない状態では、バイヤーも社内も販売イメージを持てません。ここでの数千円を惜しむかどうかが、後の売上に大きく影響します。
サンプル提供のポイント
- 基本は無償提供:特に食品・日用品などは無償が基本。高額商材は相手を絞って提供します。
- 高額商品の場合:有望なバイヤーに限定して無償提供、または「購入額を後で返金」する方式などを検討。
- 送料込みのコスト:EMSなどで3,000〜5,000円程度を想定し、将来の契約額と比較して投資判断。
- 試用サポート:使い方・推奨売場・販促のヒントなどの資料を同封し、試しやすい状態をつくる。
- 対象の見極め:誰にでも配るのではなく、見込み度の高い相手に絞って集中投下。
サンプルが持つ意味
- 実物を試さない限り、バイヤーは売れるかどうかの判断ができません。
- 無償提供は、「この市場を一緒に開拓したい」という本気度のアピールになります。
- 数千円のサンプルコストを惜しんだことで、数百万〜数千万円規模の契約機会を逃すケースも少なくありません。
海外市場で日本商品が直面しがちな現実
ここまでの5項目が整っていないと、海外市場では次のような「見えないハードル」に直面しやすくなります。
- 「品質は高いが価格が高い」という印象が根強い。
- 店頭では韓国・欧米ブランドが大きな棚を占有している。
- 一部の高級店にしか置かれず、十分な回転が出ないまま終わってしまう。
示唆:USPの明確化・価格戦略・現地でのマーケティング支援をセットで考えることが不可欠です。
その前提として、ここまで紹介した5つの準備ができているかどうかが、スタート地点での評価を大きく左右します。
商談前に確認したい準備チェックリスト
実際の商談に臨む前に、次の項目にYESと答えられるかを確認してみてください。
目安: YESが3つ未満の場合は要注意です。
現状のままでは、せっかくの商談機会があっても成果につながりにくい可能性があります。
まとめ:海外商談は「準備」で勝負が決まる
海外商談は、その場のトーク力ではなく、事前の準備の質で結果が大きく変わります。
「商社や現地パートナーに任せきり」ではなく、自分たちも一緒に市場を開拓する姿勢を示せるかどうかが、信頼を得られるかの分かれ目になります。
- ①提案資料 … 比較・評価の土台となる情報を整理する
- ②価格表 … 即答できないと商談が止まり、「本気度」が疑われる
- ③契約条件 … 相手だけが得をする一方的な契約を避けるための事前整理
- ④パッケージ … 消費者に伝わる・法規制をクリアした「売れる形」に整える
- ⑤サンプル … 本気度を示し、バイヤーの販売イメージを具体化するシンプルな手段
この5つが揃っているかどうかで、同じ商品でも海外での結果は大きく変わります。
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