タイ市場で日本食を売るには?30〜40バーツのお試し価格vs高価格帯の戦略
日本の食品メーカーの海外担当や経営者の方だと思います。「東南アジア、とくにタイで売っていきたい。でも、どのくらいのサイズや価格が現地で受け入れられるのか分からない」
「うちは高価格帯だから、タイのコンビニ価格とは合わないのでは?」
そんな不安やモヤモヤを抱えている方も多いはずです。私たちCOUXUは、これまで2万件以上の海外商談を支援してきましたが、タイ周りでいちばん危ないと思っているのが、「現地の小売価格が安そうだから、うちの高価格商品はムリだろう」と、そもそも検討から外してしまうことです。
2025年9月、私たちのメンバーがバンコク市内の輸入食品店、スーパー、コンビニをまわり、
- いくらぐらいなら「一度試してみよう」と思ってもらえるのか
- どのくらいのサイズが棚を取っているのか
- 売り場で、どんな説明がされているのか
を、実際の棚と価格を見ながら確認してきました。
結論を先にまとめると、こうなります。
小さいサイズ × 現地の感覚に合った「試し買い価格」 × 売り場で3秒で伝わる見せ方
この3つがそろったときに、ようやくタイでの「売れるスタートライン」に立てる。
ここで出てくる「30〜40バーツ(約120〜160円)」という数字は、あくまでコンビニでの“試し買いライン”です。
高価格帯の商品まで、この値段に合わせる必要はありません。
本記事では、バンコク現地の観察をもとに、
タイ市場を起点に東南アジアを狙う食品メーカー向けに、考え方の整理をしていきます。
※価格のイメージは、分かりやすくするために1バーツ=約4円としてざっくり計算しています。
目次
0. タイ市場の前提(バンコク中心で見えたこと)
0-1. 「輸入品=良いもの、でも高い」という前提
バンコクの輸入食品店では、
- 「日本の食品=安心・おいしい」という期待は確かに強い
- その一方で、日本国内よりどうしても高い価格になる
というギャップがあります。
ここで、「なぜ高いのか」が売り場で伝わっていない商品は、棚に置かれても手に取られにくいと感じました。
0-2. 生活の主役はコンビニ
7-Eleven などのコンビニが、毎日の買い物の中心になっています。
- 少量
- 30〜40バーツ(約120〜160円)前後
の食品や飲料が、「ついで買い」「お試し買い」の入り口になっている印象でした。
0-3. 売り場では「色」と「ひと言」が勝負
棚を少し離れて見ると、
- 赤・黄・青などのはっきりした色
- 太く大きな文字で書かれた短いメッセージ
が、とにかく目立ちます。
逆に、日本語だけで世界観をつくったパッケージは、
- 文字が細かい
- 何の商品かすぐ分からない
結果として、そもそも「読まれていない」場面が多いと感じました。
0-4. お酒は販売時間に注意
アルコール飲料には、販売していい時間帯の制限があります。
試飲やキャンペーン、動画の放映なども、販売可能な時間に合わせて組む必要があります。
0-5. ネット動画と店頭がセットで動いている
バンコクでは、
- スマホで短い動画を見て
- 店頭で「さっき見た商品だ」と思い出し
- 棚の前で最後のひと押しが起きる
という流れが、少しずつ当たり前になりつつあります。
お客さん自身やインフルエンサーが投稿した動画が、
「安心材料」「クチコミ」として、そのまま売り場の説得力になっている感覚でした。
1. 売り場ごとの現実:高めの輸入食品店と、数を取りにいくコンビニ
1-1. 輸入食品店(ドン・キホーテ、Gourmet / Villa など)
どんな人が買うか
- 比較的お金に余裕がある
- もともと日本の食品が好き
- 日系のスーパーにも通っている
といった人たちが多い売り場です。
Thonglor や Phrom Phong など、日本人が多いエリアはこの傾向が特に強いです。
どうやって売るか
日本語パッケージのままでも並べられますが、それだけでは
- 「なぜ高いのか」
- 「どこが他の商品と違うのか」
が伝わりません。
たとえば、次のような情報を、棚に付ける小さなPOPや店頭の動画で見える化しているブランドが、きちんと売れていました。
- 国産原料を使っている
- 保存料を使っていない
- 伝統的な製法で作っている
- 受賞歴がある
- 生産量が限られている
「高いけれど、これなら納得」と思ってもらえる材料を、きちんと目に入る場所に出すことが重要です。
エリアによって“高い/安い”の感じ方が変わる
同じ商品・同じ価格でも、
- あるエリアでは「特別な日のご褒美として買う」
- 別のエリアでは「高すぎて手が出ない」
というように、受け取られ方が変わります。
つまり、「どのエリアの、どのお店で売るか」で、同じ商品でも結果が変わるということです。
1-2. コンビニ(7-Eleven など)
どんな人が買うか
- 通勤・通学の途中
- 仕事の合間
- 夕飯の買い物ついで
に立ち寄る人が中心です。
「30〜40バーツ(約120〜160円)」は、あくまで“試し買いの物差し”
コンビニでは、
- 30〜40バーツ(約120〜160円)前後
- 1〜2回で食べ切れる小さなサイズ
の商品が、「見たことのない日本の商品だけど、一度試してみようか」と感じてもらいやすいラインになっています。
ここで誤解してほしくないのは、
30〜40バーツに合わせられないなら、タイに出る意味がない
という話ではまったくない、ということです。
この価格帯は、あくまでも
「コンビニで初めて買うときに、地元のお客さんが心理的に手を伸ばしやすいライン」
としての目安です。
高価格帯の商品まで全部をこの価格に下げるのではなく、
- コンビニ向けの「お試しサイズ」だけこの帯に近づけるのか
- そもそもコンビニではなく、輸入食品店やギフト売り場を軸にするのか
を考えるための“物差し”として捉えていただければ十分です。
棚での見せ方
コンビニの棚で目立っていた商品には、共通点があります。
- タイ語で書かれた「ひと言の良さ」
例)「濃厚ミルク」「砂糖ひかえめ」「サクサク」「ピリ辛おつまみ」など - 赤・黄・青などのはっきりした色
- 味や使い方がイメージできる写真やイラスト
この3つがそろっている商品ほど、3秒以内に「何の商品か」「誰のための商品か」が伝わっていました。
2. パッケージと価格:試し買いラインと、高価格帯の組み立て方
2-1. 見た目の基本ルール
バンコクの棚を見ていて、強く感じた共通点はシンプルです。
- 遠くから見ても分かる、はっきりした色(赤・黄・青など)
- 太く大きな文字で書かれた、短いメッセージ
- 味や使い方がイメージできる写真やイラスト
伝えたいことを1つにしぼるほど、結局いちばん伝わります。
2-2. どの言語で、何を書くか
- パッケージの正面にはタイ語で「ひと言の良さ」を書く
例)「濃厚ミルク」「旨みたっぷり」「塩分ひかえめ」「サクサク食感」など - 日本語のコピーは、「日本らしさ」「ブランドのストーリー」を伝える役割に回す
最初のインパクトはタイ語で取りに行く方が、棚では有利だと感じました。
2-3. 小さいサイズと「試し買い価格」の目安
バンコクの売り場を見ていると、
- 内容量:30g前後の小さいサイズ
- 価格:30〜40バーツ(約120〜160円)前後
の商品は、「見たことがないけれど、1回くらいなら買ってみようかな」と感じてもらいやすい印象でした。
もう一度はっきりお伝えしたいのは、これはあくまでも「コンビニでの試し買い」の目安だということです。
2-4. 高価格帯商品のイメージ例(すべて試し買いラインに合わせなくていい)
「うちは高価格帯だから、30〜40バーツには絶対に合わせられない」と感じられたかもしれません。
ここで、あくまでイメージとして、2つのパターンを挙げておきます。
パターンA:高価格帯のまま売るお菓子
- メイン商品:1箱 200〜250バーツ(約800〜1,000円)くらいのプレミアムチョコレートや焼き菓子
- 売り場:輸入食品店やギフト売り場を中心に展開
- やること:「なぜ高いのか」をPOPや動画で丁寧に説明し、ギフト用・手土産用としての使い方を提案
→ コンビニの30〜40バーツ帯に合わせる必要はありません。
むしろ、「特別な日のご褒美」「贈り物」としての位置づけを徹底することで、現地でも高価格帯のまま成立させることができます。
パターンB:高価格帯の調味料+小さな試し用
- メイン商品:1本 150〜200バーツ(約600〜800円)のプレミアムだし、ドレッシング、タレなど
- 売り場:輸入食品店・日系スーパー中心
- 追加で用意するもの:20〜30ml程度の小さなパウチやミニボトルを、30〜40バーツ(約120〜160円)前後でコンビニに置く
→ この場合、主力商品は高価格帯のまま。
そのうえで、「まずは味を知ってもらうための、とても小さい“入口商品”だけ」コンビニの試し買いラインに寄せる、という考え方になります。
実際の設計では、商品特性やブランド戦略を踏まえて、AとBの中間のようなパターンも多くなります。
大事なのは、
「全部を140円にしろ」という話ではなく、高価格帯のまま売る部分と、試し買い用の小さな入口をどう組み合わせるか
という視点で考えることです。
2-5. 原価の考え方(ざっくり)
たくさん売っていきたい場合は、
- タイ側で袋詰めをする
- パッケージ資材を現地で手配する
などして、30〜40バーツ(約120〜160円)前後の“試し買い価格”を守れるように設計する必要があります。
一方で、もともと高価格帯の商品であれば、無理に30〜40バーツに合わせる必要はありません。
- 「高めの価格は維持しつつ、どこまで小さな入口商品を用意するか」
- 「そもそもコンビニには出さず、輸入食品店・ギフト売り場に絞るか」
は、商品ごとに分けて考えるべきポイントです。
ここは、私たちCOUXUが現地の価格感と棚の状況を踏まえて、一緒に設計していく部分になります。
3. 売り場での伝え方:3秒で「なぜ良いか」が分かるようにする
パッケージと価格を決めても、売り場での見せ方が弱いと、結局手に取ってもらえません。
私たちCOUXUが現地で見て、「これなら日本メーカーでもすぐ真似できる」と感じた要素は、次の3つです。
3-1. 小さな説明POPの組み立て方
おすすめは、たった3行のシンプルな構成です。
- お客さんにとっての一番のメリット
- その理由
- 日本らしさを伝えるひと言
例:
- 「濃厚ミルクのコク」
- 「生乳○%だからこその味わい」
- 「日本の牧場からお届け」
この3つがそろうと、「高いけれど、なるほど」と納得してもらいやすくなります。
3-2. 使い方を伝える「写真3枚」
タイではまだなじみの薄い商品ほど、
- 袋や箱を開ける
- お皿や器に出す
- 食べる・使う様子
を写した3枚の写真があるだけで、「難しそう」という不安がかなり減ります。
菓子・調味料・冷食のどれでも、「実際に使う場面」が想像できる写真を1セット用意することをおすすめします。
3-3. 売り場で流す短い動画
次のような内容を入れた、15〜30秒ほどの短い動画を数本用意し、モニターでくり返し流している売り場が増えています。
- おいしそうに食べている人の表情
- 他の商品との違いが分かるワンシーン
- 健康・美容など、プラスαの価値を伝える場面
音が出ていないことも多いので、字幕をしっかり入れておくことが非常に重要です。
4. バンコクで見えた「小さな事例」から学べること
4-1. 納豆:動画と説明POPで「文化の壁」を超える
納豆のように、タイではまだなじみのない商品は、
- 「なぜ食べるのか」
- 「どう食べるのか」
が分からないと、手が伸びません。
- 棚の上のモニターで、食べ方の動画を流す
- そばのPOPで「ご飯にかける」「丼ものに合わせる」などの使い方を書く
というセットで、「よく分からない食品」から「ちょっと試してみたい食品」に変えている売り場がありました。
4-2. チーズ:同じ価格でも「高い/安い」が変わる
同じチーズ、同じ価格でも、
- ある店では「ちょっと高級だけど、買う価値がある」
- 別の店では「高すぎて手が出ない」
というように、評価が変わっていました。
つまり、価格だけでなく「どのエリアの、どのお店で売るか」で結果が変わるということです。
4-3. 美容コーナー:1回分パックの徹底ぶり
美容コーナーでは、1回分の小袋が棚の主役になっています。
これは、
- 「大きいボトルを買って失敗したくない」
- 「まずは少しだけ試したい」
という気持ちに、正面から向き合った売り場づくりです。
菓子・調味料・冷食でも、「まずは1回」という気持ちに合わせた小さいサイズの商品を用意できるかどうかが、タイでは重要になってきます。
5. タイ市場で食品メーカーがまず考えるべき3つの質問
ここまで読んで、
「うちの商品は、タイでどこを目指すべきなんだろう?」
と感じた方も多いと思います。
私たちCOUXUが、食品メーカーの海外担当・経営者の方と話すとき、必ず一緒に考えるのが次の3つです。
- どの売り場から始めるか?
輸入食品店で「日本ブランド」としての実績をつくるのか。
コンビニやスーパーで、試し買いから広げていくのか。 - どんなサイズ・どんな価格なら「まず1回」買ってもらえそうか?
菓子なら小袋、調味料なら少量パウチやミニボトル、冷食なら1食分。
ここで出てくる30〜40バーツ(約120〜160円)は、あくまで「コンビニでの試し買いライン」です。 - 売り場で3秒以内に「良さ」が伝わる準備ができているか?
タイ語の「ひと言の良さ」、小さな説明POP、使い方の写真・動画。
この3点セットを準備できているかどうか。
この3つの質問に自信を持って「はい」と言えないようであれば、
自社だけで走り出す前に、一度立ち止まった方が安全です。
6. 高価格帯だからこそ、設計次第でチャンスが広がる
ここまでお読みいただいて、
「うちは高価格帯の商品だから、30〜40バーツ(約120〜160円)にはとても下げられない」
と感じた方もいると思います。
私たちが現場で見てきた感覚として、“すべてをその価格に合わせる必要はまったくない”と断言しておきます。
大事なのは、
- 高価格帯のまま売るなら、どんな売り場・どんな見せ方ならお客さんが納得して買ってくれるのか
- コンビニなど日常の売り場にも出したいなら、「まず一度だけ試してもらう小さいサイズ」をいくらにするのが現実的か
を、商品ごとに分けて考えることです。
ここは、タイの売り場を実際に歩き、価格と棚を見てきた私たちCOUXUの現場感を前提に、一緒に設計していく場所だと考えています。
7. COUXUとしてタイ市場でお手伝いできること
今回の記事では、あえてタイ市場に絞って、COUXUとしてどこまで寄与できるかをはっきりさせておきます。
私たちがタイ向けにご一緒できるのは、主に次の3つです。
- タイ市場で、御社の商品はどの売り場を狙うべきかの整理
輸入食品店・日系スーパー・ローカルスーパー・コンビニなど、どの売り場から入るのが現実的か。
高価格帯のまま売るべきか、試し買い用の小さいサイズを用意すべきか。
タイ側の価格感・棚事情を前提に、一緒に整理します。 - 現地で売れる商品にするためのマーケティングプランの設計
タイ語での「ひと言の良さ」づくり、パッケージ正面の見せ方、売り場POP・写真・短い動画の構成案など、
タイの生活者に伝わる形にするための設計を行います。 - 現地の小売店舗に商品を置いてもらうための営業活動支援(配荷の支援)
タイ側の小売店・バイヤーにどう話を持っていくか。
どのような条件・提案内容なら検討のテーブルに乗りやすいか。
それらを踏まえたうえで、現地店舗への「配荷」につながる営業活動を支援します。
8. 最後に —— 「タイは安いから合わない」と決めつける前に
東南アジア、特にタイは、
- 「日本の食品」に対する期待値が高く
- 一方で、サイズ・価格・売り場づくりを間違えると、あっという間に棚から消えてしまう
そんな市場です。
小さいサイズ、30〜40バーツ(約120〜160円)という“試し買い価格”、売り場で3秒で伝わる見せ方。
この3つを、御社の高価格帯商品にどう落とし込むかが、これからの勝負どころです。
「うちの商品だと、どのくらいのサイズ・価格・売り場がタイでは現実的なのか知りたい」
「タイ市場でのテストを踏まえたうえで、将来他国も視野に入れたい」
もし、そう感じていただけたなら、一度、私たちCOUXUに現状を共有してみてください。
- いまお持ちの主力商品(菓子・調味料・冷食など)
- 日本での販売価格
- すでにお持ちのパッケージ案や販促物
を教えていただければ、
「タイ市場ではどこにチャンスがあるか」「どの価格・サイズなら勝負できそうか」を、現地感覚を踏まえて具体的にお返しします。
「高価格帯だからタイは難しい」とあきらめてしまう前に、
まずは“タイの物差し”で一度見直してみる。
本記事が、その第一歩になればうれしいです。
- オンラインでの「タイ市場に向けた展開相談」
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