独占契約を結んだのに売れない…現地代理店丸投げ輸出の3大失敗パターンとやり直し方

独占契約を結んだのに売れない…現地代理店丸投げ輸出の3大失敗パターンとやり直し方

独占契約を結んだのに1個も売れない——現地代理店“丸投げ輸出”が止まる本当の理由

海外輸出で現地代理店と独占契約を結んだのに、ほとんど売れない——。
そんなご相談を、私たちCOUXUはここ数年で何度も受けてきました。

海外輸出を始めたある日本企業から、私たちCOUXUにこんな相談が届きました。

「現地代理店を見つけて、独占契約まで締結したのに、1年経ってもほぼ売上ゼロなんです。
しかも独占なので、他の会社に声も掛けられない。
正直、失敗だったかもしれないと感じています。」

……実はこの悩み、決してレアケースではありません。むしろ私たちがこれまでに20,000件以上の海外商談を支援してきた中で、最も繰り返し相談される「失敗パターン」のひとつです。

今回の記事では、COUXU社内のディスカッションで実際に議論した内容をもとに、

  • なぜ「現地代理店への丸投げ」が行き詰まるのか
  • なぜ現地企業はそこまで「独占権」を欲しがるのか
  • すでに独占を渡してしまった日本企業は、ここから何をやり直すべきか

を、現場の目線で整理していきます。


【現場のリアル】現地代理店(独占契約)をつくったのに、全く売れていない

現地代理店への丸投げした基本的な構造の図解

まずは、COUXUに実際に寄せられた相談の典型例からお話しします(業種・国・企業は特定されないように加工しています)。

ある中堅メーカーの担当者は、こんな状況に陥っていました。

  • 現地企業から「うちが総代理店になりたい」と打診を受ける
  • 「現地のことは分からないから、任せた方が早い」と判断し、独占契約を締結
  • 日本側は商品を出荷し、「あとは現地で売ってもらう」スタンスを取る

しかし、数カ月〜1年経っても上がってくるのは、わずかな発注だけ。マーケティング活動の報告もほぼなく、

「現地で何をしているのか、正直よく分からない」

という状態になっていました。

さらに厄介なのは、その裏側にある「契約の設計」です。

  • 契約上は「独占代理店」として位置付けてしまっている
  • 国全体での独占なのか、どの販売チャネルを含むのかが曖昧
  • 期間や売上目標の条件も弱く、簡単には解除できない

つまり、

「売ってくれない代理店が、その国の権利を“占有”してしまっている」状態でした。

私たちはご相談の中で、まず次の3点を整理しました。

  1. なぜそのような契約設計になってしまったのか
  2. そもそも、なぜ現地企業はそこまでして「独占権」を欲しがるのか
  3. ここからどうやって販売網と関係性を再設計していくべきか

【分析①】失敗の本質は「代理店のやる気」ではなく「設計ミス」にある

この手の相談で、日本側の担当者から最初に出てくる言葉は、だいたい決まっています。

  • 「代理店が全然動いてくれなくて…」
  • 「こっちは商品を出しているのに、売る努力をしてくれない」

もちろん、代理店側の動きが十分とは言えないケースもあります。ただ、COUXUとしては、ここは少し厳しくお伝えしています。

「本当に悪いのは現地代理店だけですか?」

現場を見ていると、多くのケースで失敗の根本にあるのは、

「丸投げした側(日本企業)の契約設計と役割分担の甘さ」です。

  • 初手でいきなり国全体の独占権を渡してしまう
  • 販売チャネル・エリア・期間の区切りが曖昧
  • 「いくら売るのか」「どうやって売るのか」のコミットがない
  • 日本側は「売り方」を用意せず、「売るのはそちらの仕事」というスタンス

この状態で「任せたのに売ってくれない」と言っても、残念ながら結果は見えています。


【分析②】なぜ現地企業はそこまで「独占権」を欲しがるのか

ここで一度、現地代理店の立場に立って考えてみましょう。彼らが「独占権が欲しい」と言う背景には、明確な理由があります。

一言でいえば、

「自分たちが投資したマーケティングコストを、他社に“ただ乗り”されたくないから」です。

シンプルな例で考えてみます。

  • A社:広告・販促・売場づくりなどに投資し、商品を110円で販売
  • B社:ほぼ何もせず、同じ商品を100円で販売

独占契約を求める現地企業視点の図解

消費者はどちらで買うか——多くの場合、B社です。

するとA社は「じゃあうちは95円に値下げしよう」となり、B社は90円に下げる。こうして価格競争の消耗戦に陥り、

  • ブランド価値は毀損され
  • 利益も削られ
  • 最終的に「この商品を扱っても意味がない」という結論になりやすい

このリスクを避けるために、彼らは「自分たちだけが扱いたい」と考え、独占権を要求してきます。

つまり、独占権を欲しがること自体には、彼らなりの経済合理性があるのです。

問題は、

「その独占を、日本側がどの条件で、どこまでコントロールした上で渡しているか」

という点にあります。


【分析③】本来あるべき“独占契約”の設計

私たちCOUXUが現場で一貫してお伝えしているのは、次のような考え方です。
独占契約の失敗パターンと本来あるべき設計

1. 初手から独占を渡さないのが原則

最初から「国全体の独占」を前提に話を進める必要はありません。むしろ、

  • まずは通常取引でスタートし、小さく実績を積む
  • 半年〜1年の実績と動き方を見たうえで、「独占を検討する」

という順番が、現実的かつ安全です。

2. どうしても独占を求められるなら、「期間・売上・範囲」で縛る

それでも「どうしても独占がほしい」と言われる場合は、最低限、次の3つをセットで設計すべきです。

  • 期間:「まずは半年」「まずは1年」など、期限を決める
  • 売上:「半年で○○円(○○個)以上売れたら、その後の独占を検討する」
  • 範囲:「国全体」ではなく、「エリア」や「チャネル」で区切る

例えば、次のような設計です。

  • オフライン小売のみを独占とし、ECは別で検討する
  • 国全体ではなく、主要都市のみを対象にする

3. マーケティングプランを「定性+定量」で必ず出させる

独占を検討する前提として、現地企業からは必ず「定性+定量」のマーケティングプランを出してもらうべきです。

  • 定性(Whatをどうやるか):
    ・どの小売チェーンに、どの順番で提案するのか
    ・オンラインならどのプラットフォームを使うのか
    ・SNS、インフルエンサー、イベントなど、どの施策を組み合わせるのか
  • 定量(いくらかけて、いくら売るのか):
    ・各施策に対して、いくら投資するのか
    ・そこからどれだけの売上・粗利を見込むのか
    ・6〜12カ月でどの売上水準を目標にするのか

この「定性+定量」が出てこない企業に対して、いきなり国全体の独占権を渡すのは、ほとんどギャンブルです。


【分析④】「独占契約を欲しがられるほどのブランド」か、冷静に見直す

社内ディスカッションの中で、私たち自身が何度も確認している前提があります。それは、

「そもそも、独占権を欲しがられるほどのブランド力が、自社に本当にあるのか?」

すでに現地での認知が高く、指名買いが起きるようなブランドであれば、

  • 「独占は付与しません」と言い切ることもできる
  • それでも扱いたい、というパートナーは現れる

しかし、私たちが日々ご一緒している多くの中小〜中堅メーカー様は、ブランドが育ちきる前の段階で海外に出ていくのが現実です。

このフェーズで「独占」を乱発すると、

  • 売れない代理店に権利を抑えられる
  • 国・チャネルを変えたくても動けない
  • 社内で「やっぱり海外は難しい」という空気だけが残る

という結果になりがちです。


【分析⑤】本来やるべきだった「営業の順番」

社内ミーティングの終盤で出たのが、次のポイントです。

「本当は、『代理店に売ってもらう』前に、小売店に営業すべきだったのではないか?」

よくあるのは、次のような流れです。

  1. まず代理店に営業する
  2. 代理店に仕入れてもらう
  3. そこから代理店が小売に売っていくのを「待つ」

しかし、海外でまだ実績がない日本企業であれば、発想を逆にした方が筋が良いケースも多いです。

  1. 先に小売店に提案し、反応を見る
  2. 「この商品なら仕入れたい」と言ってくれた小売に、普段使っているディストリビューター(代理店)を紹介してもらう
  3. その代理店に対して、「この小売が仕入れたいと言っているので、御社経由で卸してもいいですか」と話を持っていく

現地代理店の適切な営業手順の図解*小売店舗と代理店の順番は逆でも問題ないです。消費者との接点から得られる情報は非常に貴重であるため、代理店や現地パートナーを通して売り先が見えているという状態であれば、何も問題はありません。

この順番だと、代理店側は「すでに売り先が見えている状態」で話を聞けます。結果として、

  • 導入の意思決定が早くなる
  • マーケティング投資のイメージも持ちやすくなる

というメリットが出てきます。


【COUXUの提言】「もう独占を渡してしまった」担当者が明日から取るべき3ステップ

ここからは、すでに独占契約を結んでしまっているご担当者向けに、現実的な“やり直し方”を3ステップでお伝えします。

ステップ1:契約書を“営業目線”で読み直す

まずは、一度冷静に契約書を開いてください。見るべきポイントは、法律論よりも、「営業として、どこまで動ける余地が残っているか」です。

  • 独占の範囲:
    ・国全体なのか、特定エリアなのか
    ・オフラインのみか、オンライン(EC)も含むのか
  • 期間と更新条件:
    ・何年契約か
    ・更新は自動か、協議が必要か・途中解約や見直しのトリガーが明記されているか
  • 売上・マーケに関する条項:
    ・売上コミットやKPIは入っているか
    ・マーケティング活動の責任分担はどう定義されているか

これを整理すると、

「この条件なら、どこまで代理店と話し合って再設計できそうか」

が見えてきます。

ステップ2:代理店に「マーケティングプランの再提出」を求める

次にやるべきことは、「売ってくれない」と嘆くことではありません。

「どう売るかを、一緒に再設計させてください」

と、具体的なテーマを持って話し合いの場をつくることです。

その際、必ず「定性+定量」で整理してもらいます。

  • 定性:
    ・どの小売チェーンに、どの順番で提案するのか
    ・オンラインなら、どのプラットフォームで販売するのか
    ・SNS/インフルエンサー/イベントなど、どの施策を組み合わせるのか
  • 定量:
    ・各施策に対して、いくら投資するのか
    ・そこからどれだけの売上・粗利を見込むのか
    ・6〜12カ月で、どの売上水準を目標とするのか

同時に、日本側からも「ただのお願い」ではなく具体的な支援メニューを提示することが重要です。

  • 販促物(POP・什器・動画)の提供
  • 店頭スタッフ向けの商品説明・トレーニング
  • 一部マーケティング費用の負担(掛率の調整を含む)

特に大手小売にしっかり売場を作ってもらうには、十分な粗利と販促コストが必要になる場合が多いです。
「現地が頑張ってくれない」のではなく、「頑張れる設計になっていない」ケースも多い、という視点は持っておくべきです。

ステップ3:並行して「市場理解のための対話」を増やす

契約上、すぐに他の代理店へ切り替えられないとしても、現地市場の理解を深める動きは明日からでも始められます。

例えば、現地のディストリビューターや小売担当者と話す機会があれば、必ず次のような質問を投げかけてください。

  • 競合商品はどれか? その価格帯・売れ筋は?
  • 競合はどんなマーケティングをしているのか?
  • 消費者はどこでこのカテゴリの商品情報を得ているのか?
  • 購入チャネルはオフライン/オンラインのどちらが強いのか?

最初は「自社商品の説明しかできない」状態でも構いません。重要なのは、

・1社1社との会話から情報を持ち帰ること
・2社目、3社目への提案内容を、その情報でアップデートしていくこと

です。

私たちCOUXUが現場で強く感じているのは、

「最初から完璧な海外戦略を持っている日本企業はほぼ存在しない」

という現実です。大切なのは、動きながら市場情報を取りにいく姿勢であり、それをもとに代理店との関係や契約もアップデートしていくことです。


【結論】「現地代理店との独占契約が売れない」ときは、設計をやり直せばまだ間に合う

「現地に代理店もできたし、独占で扱ってくれる。あとは任せておけば売上がついてくるはずだ」

現地代理店との独占契約が売れない状態を抜け出すには、この発想から脱却すること。

このまま海外に出てしまうと、かなりの確率で、この記事で紹介したような袋小路に入ります。

  • 独占を渡してしまったが、売上が立たない
  • 契約のせいで、他の選択肢も取りにくい
  • 社内では「やっぱり海外は難しい」という空気が強まる

私たちCOUXUは、こうしたケースを何度も見てきました。だからこそ、少し厳しい言い方

をするなら、

「代理店が悪い」のではなく、「丸投げした側の設計」を見直さない限り、同じことが何度でも起こる

ということです。

独占の有無は「スタート地点」ではなく、「結果」として検討すべきテーマです。

  • 最初は小さく取引を始める
  • 市場の反応と、パートナーの動き方を見る
  • 定性+定量のマーケティングプランを一緒に組み立てる
  • 必要に応じて、期間・エリア・チャネルで独占を設計しなおす

このプロセスを踏めば、「現地代理店に丸投げして失敗だったかも」という後悔は、確実に減らせます。

セカイコネクトスタジオでは、こうした“現場で本当に起きている失敗”と“再設計のプロセス”を、今後も包み隠さず発信していきます。

もし今まさに、

  • 「独占を渡してしまって身動きが取れない」
  • 「代理店が動いていない気がするが、どう切り込めばいいか分からない」

という状況にあるとしたら、それは「海外は向いていない」という結論ではありません。
「設計をやり直すスタートラインに立った」と捉えてください。

私たちCOUXUは、その“やり直し”の伴走を、これまでの商談支援を通じて続けてきました。
次の一手を一緒に考えるところからでも、十分に間に合います。

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