日本の商品はアメリカで売れるのか?―2025年度版アメリカ進 出のリアル

日本の商品はアメリカで売れるのか?―2025年度版アメリカ進 出のリアル
近年、円安や海外志向の高まりもあり、「日本の商品をアメリカに展開したい」という声をよく耳にするようになりました。とくに日本の化粧品や食品、サプリメントなどは品質が高く、海外市場でも注目されつつあります。
しかし、いざアメリカに進出しようとすると、現地の流通構造や競合商品との戦いなど、想像以上に高いハードルが待ち受けています。
本記事では、「実際のアメリカ市場の現状はどうなっているのか」「日本の商品が入り込む余地はあるのか」「どのようなマーケティングや販売チャネルが有効か」というポイントを、2025年度の最新情報に触れながら解説していきます。

アメリカ小売市場の実態

大手チェーンストアの規模と特徴

アメリカの小売市場には、ウォルマートやホールフーズといった大手チェーンストアが多数存在します。これらの店舗は非常に広い売り場面積を持ち、同じカテゴリの商品が10種類、20種類と大量に並んでいるのが特徴です。

サプリメント売り場:同じ効果・効能の商品が数多く並び、1つの商品を探すだけでも苦労するほど
水の売り場:30種類以上のブランドが置かれていることも珍しくない

このように競合商品がひしめき合うため、日本から新たに参入した商品が目立つことは容易ではありません。多くの商品がアメリカ国内で生産・消費されている国産メーカー品で占められており、輸入品の割合は全体の10%に満たないという話もあるほど、輸入品が少数派の構造になっています。

小規模店舗の特徴

一方で、1店舗のみ・最大でも10店舗ほどを展開するような小規模店舗の場合、そもそも自社ブランドの商品しか扱っていないケースが多いです。理由としては以下の通りです。

・他社商品を仕入れるよりも、自社商品の方が粗利率が高い
・輸入品を扱う場合、関税や輸送費、書類手続きなどコストがかかり手間が増える

そのため、小規模店舗は自社ブランドのみで勝負し、大手チェーンは複数メーカーの商品を大量に陳列するという構造が一般的です。いずれの場合も、日本など海外製品を新たに取り扱う動きは少ないのが実情といえます。

なぜ輸入品は少ないのか?―アメリカ企業の経済合理性

国産メーカーが有利

アメリカでは、輸入品よりも国産メーカー品が圧倒的に多いです。海外から輸入すると関税・輸送費・各種手続きなどが増えるため、小売店側からすると国産メーカー品を扱う方が仕入れ工数が少なく合理的です。

利益率・差別化の必要性

小売店の視点では、利益率を最大化するために自社商品や国産メーカーの商品を優先します。わざわざ海外製品を導入するなら、よほど明確なコンセプトや差別化が必要になるでしょう。

アメリカ市場における“コンセプト”の重要性

5秒〜10秒で伝わるコンセプト

アメリカの店頭には大量の商品が並ぶため、いかに短時間で「何の商品か」を伝えられるかが重要です。たとえばコーヒーの例を挙げると、

Death Wish Coffee(デスウィッシュコーヒー):ドクロマーク+「世界最大級のカフェイン量」をウリにした超刺激的なコーヒー
Intelligentsia Coffee(インテリジェンシア):“頭の良い人が飲む”をコンセプトに、高付加価値・高品質を強調

このように、「誰に」「何を」「どうメリットがあるのか」という点が明確でないと、大量の商品に埋もれてしまいがちです。日本商品の「品質の良さ」「本物志向」といった抽象的な訴求だけでは、アメリカ市場では弱い可能性が高いといえます。

日本製品が入り込む余地はあるのか?

日系・アジア系コミュニティでの需要

ロサンゼルス(LA)などには、リトルトーキョーやコリアタウンなどのアジア系コミュニティがあり、そこに集まる富裕層も存在します。そのため、一部では日本の商品を高く評価し、小規模でも輸入品を扱っている店舗があります。

    事例:1店舗か2店舗しかない小規模店で、数万円のサプリや化粧品を扱うケースがあります。例えば、日本で8,000円のサプリメントを輸入し、パッケージを変えて1万5,000円で販売するといった手法をとる。

アメリカは最低時給が17ドル前後で、日本より物価も人件費も高いです。そのため、高品質・高価格帯の商品であっても「それなりに売れる土壌」があるのです。

まとめ買い文化

サプリメントや健康食品を取り扱う店舗では、3〜4個のセット販売が多くみられます。医療費の高さから健康意識が高い消費者が多く、「どうせ続けるならまとめて買おう」という考え方が定着しているため、セット販売+ディスカウントのビジネスモデルがうまく機能しています。

アメリカ進出を成功させるためのマーケティング戦略

まずはWebでD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)

小売店に商品を持ち込む前に、自社ウェブサイトで直接販売(D2C)するのが鉄板の流れです。最近はサプリメントや化粧品で成功しているブランドの多くが、オンラインで認知を高めてから、実店舗展開へ進む手法をとっています。

1. 自社ウェブサイトでのブランディング
○ 明確なコンセプト設定:誰のために何を解決する商品なのか
○ 商品のストーリーや理念をわかりやすく提示

2. SNS・インフルエンサーマーケティング
○ InstagramやYouTubeなどでインフルエンサーを活用し、話題をつくる
○ UGC(ユーザー生成コンテンツ)を増やし、口コミを拡散

3. サブスクモデル(定期購入)の導入
○ 特にサプリメントなど継続使用が前提の商品は、定期購入モデルと相性が良い
○ LTV(顧客生涯価値)を高め、ブランドコミュニティを育成

成功例から学ぶ:AG1の例

最近アメリカのサプリメント市場で注目を集めているのが、AG1 というブランドです。以下に、その概要を簡単にまとめます。

    製品概要

    ・1回あたり12gのパウダーに、75種類のビタミン・ミネラル・栄養素を配合
    ・1食(1スクープ)あたり約50kcal、炭水化物6g、食物繊維2g、タンパク質2g
    ・ビタミンCやビタミンB12など、多くの栄養素が1日の推奨摂取量を大きく上回る配合

    4つの独自ブレンド

    ・アルカリ系・栄養密度の高いスーパーフードコンプレックス
    ・栄養豊富なエキス・ハーブ・抗酸化物質
    ・消化酵素 & スーパーマッシュルームコンプレックス
    ・乳製品不使用のプロバイオティクス

    品質と認証

    ・NSF Certified for Sport:不純物や安全性に関する厳格な基準をクリア
    ・人工着色料、甘味料、GMO不使用
    ・ヴィーガン・ベジタリアン・ケトなど幅広い食事スタイルに対応
    ・950種以上の有害物質についてサードパーティ機関がテスト

AG1は、“健康志向の高い層向けに、手軽に多種多様な栄養素を摂れる”という強いコンセプトとD2Cモデルで成功しています。まさに「5秒で伝わる」明確さがあるからこそ、多くのユーザーを獲得し、オンラインから実店舗への展開にもつなげている好例といえるでしょう。

小売店に並べるには“実績”が必要

セフォラ(Sephora)のようなコスメやビューティー系の大手セレクトショップにも海外ブランドが並ぶケースはあります。しかし、それはあくまでオンラインやSNSで人気が出て“売れる”という実績がある場合が多いです。

・初期段階から小売店に置く
○ →知名度がなく、コンセプトも曖昧だと埋もれやすい

このリスクを避けるには、オンラインでファンを獲得して売上を伸ばしてから、小売店やセレクトショップに交渉する流れがベストです。

まとめ:アメリカで勝つための3つのポイント


1. 商品コンセプトを一瞬で伝えられるようにブラッシュアップ
○ 抽象的な「高品質」「本物志向」だけでは弱い
○ 「誰に」「どんな悩みを解決」「どんなメリットをもたらす」かを5秒で伝える

2. まずはオンラインでD2Cを展開し、認知度と売上実績を作る
○ 自社サイト + SNS + インフルエンサーマーケティングが有効
○ サブスクモデルなどでLTVを高め、ファンコミュニティを育成

3. 小売店へ進出する際は、オンラインでの“売れる証拠”が鍵
○ SNSでの話題や売上データを根拠に、大手チェーンやセレクトショップを説得
○ 必要に応じてOEMやパッケージ変更など、ローカライズも検討する

おわりに

アメリカ市場への参入は決して簡単ではありませんが、ロサンゼルスのアジア系コミュニティや高品質・高価格帯商品を求める層にアプローチすれば、日本の商品が評価されるチャンスは十分にあります。重要なのは、アメリカの消費者が「一瞬で理解」できるコンセプトと、オンラインでのマーケティング戦略です。

AG1の成功事例に見るように、明確なブランドコンセプトとD2Cモデルをうまく組み合わせることが、アメリカ進出の大きなカギになるでしょう。日本の繊細な品質と独自のストーリーを武器にしつつ、アメリカの大きな市場で勝負する。2025年に向けてその扉は、しっかり準備を整えたブランドにこそ大きく開かれています。

 

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