「検討します」で終わる——展示会で確実に成果を上げるための実装ガイド

「検討します」で終わる——展示会で確実に成果を上げるための実装ガイド

これまで20000回以上の海外企業との商談を実施してきた弊社が現場で蓄積した商談運用の知見を整理し、「展示会で名刺は集まるが、その後が続かない」「検討するで終わってしまう」という課題に対して、名刺交換から取引へつなぐために「何が必要なのか」を手順含めてまとめました。

1.1 導入:名刺は集まる、でも進まない

展示会や海外企業から問い合わせを貰って、海外企業との接点は増えているのに、やり取りは「検討します」で止まり、商談・発注に至らない。
これまで400社以上の日本企業様の海外輸出に関わる中で、以下の共通点が繰り返し観測されました。

  • その場で次アクション(10分評価MTG)の日程仮押さえまで踏み込めていない
  • 英語の会社・ブランド・商品の即評価資料が不足
  • 提案が製品単体起点に偏り、相手の棚・顧客・販促前提に結びつかない
  • サンプル送付で満足し、48時間運用(要約送付 → 評価回収 → MTG確定)が欠落

1.2 何が変わるのか?

以下は、本記事の運用(4象限運用/英語資料3点/48時間フォロー)を実装した際の社内検証での代表値です。もちろん、業種・価格帯により数字の上下の振れはございますが、「次アクションの確約」と「評価回収」ができるだけで、成果は全く異なります。

実装によるKPIの変化(Before → After)
KPI Before After 差分 注釈
次アクション日時確約率(ブース接点母数比) 18% 45% +27pt 場内で「10分評価MTG」を仮押さえ
評価回収率(サンプル送付先母数比) 12% 38% +26pt 評価フォーム+48h追客
第1象限化率(高緊急 × 高重要) 22% 35% +13pt ブースでの判定・優先追客
サンプル → 評価MTG移行率 9% 28% +19pt 送付同時にMTG候補3枠提示
受注化率(接点母数比) 3% 8% +5pt テスト販促の分担設計を併用

2 展示会で成果を出すためには??

2.1 そもそも、なぜ「検討します」で止まるのか——よくある5つの原因

  1. 英語資料の不足:会社・ブランド・商品の即評価ができない
  2. 製品単体起点:相手の棚・顧客・価格帯・販促前提に接続しない
  3. リスク分担が不透明:販促負担や失敗時の筋道が見えず、相手の不安が残る
  4. 48時間運用の欠落:御礼で終わり、評価回収・MTG確定まで仕切れない
  5. 相手理解が浅い:販路/ラインナップと価格帯/販促運用の3要素が取れていない

2.2 事前設計:4象限マトリクスで“その場”の判断を標準化

「緊急度 × 重要度」で来訪者を即判定し、象限ごとにやることを固定します。

緊急度×重要度 4象限マトリクス(ブース判断の基準とアクション)

高緊急 × 低重要(短期見極め)

  • 📝 ヒアリング3点(販路/価格帯/販促)
  • ⏱ 48h以内の一次返信を約束
  • 🔗 英語資料リンクを即共有

高緊急 × 高重要(その場で確約)

  • 📱 SNS/名刺交換(担当・決裁者特定)
  • 📅 10分評価MTGをその場で仮押さえ
  • 🧾 英語資料QRを提示/その場送付
  • 🧪 サンプル体験・要点メモ(販路/価格/販促)

低緊急 × 低重要(情報収集)

  • 📨 メールマガジン登録を案内
  • 📂 リスト化し優先度を明示
  • 📄 後日資料送付のみ(追客は低頻度)

低緊急 × 高重要(関係育成)

  • 🧭 評価前提の追加情報収集(棚・顧客像)
  • 🧪 スモールテスト案の提示(費用按分)
  • ⏱ 48hフォロー日時を先に確約
  • 第1象限(高緊急 × 高重要):決裁者同席/明確なタイムライン → SNS/名刺を交換+商品のサンプルや体験をしてもらい、“評価MTG”をその場で仮押さえ、英語資料QR渡し
  • 第2象限:影響力ありだが時間軸不明 → ヒアリングするべき項目を明確にし、48h内のフォローアップ
  • 第3・4象限:情報収集中心 → メルマガ登録、優先度低で仕分け

ブースで観測するべき数値: SNS・名刺交換率/第1象限化率(最優先ターゲット率)/次アクション日時確約率

2.3 英語資料「3点セット」——製品の良さより“企業として何ができるか”、「製品提案」から「企業×企業提案」へ

  1. Company Deck(会社概要):工場能力、原料調達、品質保証、開発・デザイン体制、少量試作、納期柔軟性などの企業力を核に。
  2. Brand & Product Sheet:ブランド/商品ごとに1–2枚で用途・仕様・容量・卸レンジ・推奨棚前訴求。
  3. Brand Book:世界観、想定顧客、棚前コミュニケーション、UGC*/KOL*活用例、ミニキャンペーン設計。

共創メニュー例:専売SKU/小ロット試作/原料代替案/テスト販促の費用按分(例:当社50%)/評価基準(回転・粗利・継続条件)を“最初から”提示。

UGC:「User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)」の略で、企業ではなく一般のユーザーから自ら作成・投稿したコンテンツのことです。SNSの投稿、口コミサイトのレビュー、ブログ記事などが含まれ、企業が作成した広告よりも信頼性が高いとされ、近年マーケティングで活用される機会が増えています。

KOL:「Key Opinion Leader(キーオピニオンリーダー)」の略称で、特定の分野で専門的な知識や強い影響力を持つ人物を指します。現在ではSNSで専門性を活かして発信するインフルエンサー全般を指す場合に使われることが多いです。

2.4 当日ヒアリング「3点セット」——即座に提案へつなげる質問

  1. 販路:小売店舗/EC/卸の構成、対象エリア、主力取り扱いカテゴリー
  2. ラインナップ&価格帯:既存ブランドの価格帯、主力SKU、回転速度()
  3. 販促運用:店頭施策、KOL/UGCの活用、費用分担の慣行

この3点を起点に、当日中に「10分評価MTG」を仮押さえ。その場で候補3枠を提示すると確約率が上がります。

2.5 48時間運用:フォローの分解手順(テンプレ付き)

0〜24時間:一次返信(御礼+要約+次アクション再確認)

件名:Thanks for visiting our booth – Next step
本文(英・日):
- 本日の要点:販路/価格帯/販促運用の合意メモ
- 次アクション:10分評価MTGの候補(例:11/20 15:00-15:10 ほか2枠)
- 英語資料3点のURL(会場配布QRの再送)

24〜48時間:評価資材の送付とMTG確定

  • サンプル送付(到着予定日を明記)と評価フォームURL(使用感/棚適合/価格許容/販促前提/所要3分)
  • MTGの確定(候補3つ → 確定/オンラインリンク発行)
件名:Sample shipment & 10-min evaluation meeting
本文:
- 送付内容と目的(評価観点3点)
- MTG確定依頼(候補3枠/オンライン会議リンク)
- 失敗時の筋道(ピボット案:価格帯の見直し、SKU差し替え、販促分担の再設計)

2.6 チェックリスト(DL素材の要点)

  • 英語3点セルフチェック(PDF):企業力・開発体制・品質保証・販促事例の記載有無
  • 4象限判定シート(Excel):判定基準/必要情報/フォロー期限/放棄基準
  • 48時間フォロー台本(Doc):一次返信/同梱文/評価依頼/MTG確定テンプレ
  • 評価フォーム雛形(Googleフォーム):使用感/棚適合/価格許容/販促前提

3 まとめ:未知の国・未知の棚に売る難易度を前提化する

「Made in Japanだから売れる」は前提になりにくい時代です。
製品の良さ × 企業力 × フォローアップを標準化し、名刺交換 から取引/商談実現の最短導線をチームの共通ルールに落とし込みましょう。

名刺はゴールではなく、“10分評価MTG”を取るための手段。場内で日程を押さえた瞬間、商談/案件は動き出します。


※本記事は自社の現場運用で得た知見を再編集し、実務で再現しやすい形にまとめています。

海外展開に向けて「成果を出していきたい」「不安なことがある」方はお気軽にお問い合わせください。お待ちしております!

お問い合わせボタン

記事を”読む”