タイ市場進出を検討する食品企業の勝ち筋〜小容量×価格×棚前3秒で動かす〜

タイへの食品輸出は、小容量×現地価格レンジ×棚前3秒訴求を起点に、 法規・物流・販路KPIまでを90日で設計するのが近道です(本稿は匿名化・弊社ノウハウベース)。
目次
市場クイックビュー(要点だけ3分で)
- 市場規模・成長:公的統計・業界レポートの推計では都市部中心に堅調。インバウンドと中間層拡大が下支え。
- 主要販路:プレミアム輸入食品店、コンビニ、近隣型スーパー、ショート動画コマース、モール系EC、自社EC。
- 価格感:輸入プレミアム店は日本店頭比1.3~2.0倍になりやすい一方、コンビニは小容量・低単価が主戦場。
- 売場の特徴:はっきりした色調のパッケージ、棚前POP、短尺動画など「3秒で伝える」仕掛けが多い。
- 留意規制:品目により販売時間帯・表示・許認可に制約(詳細は所管当局・輸入者と要照合)。
海外メンバーの一言:
「プレミアム輸入店は輸入品中心で価格は上がりがち。コンビニは小容量・低単価が常識です。」
“現地基準”の要点(小容量/価格レンジ/棚前3秒)
一言まとめ:小容量は導入条件、価格は衝動買い帯、棚前は3秒で用途を伝える。
- 小容量:1回分パウチ(例:10~40g/個食)。コンビニ導入の前提になりやすい。
- 現地価格レンジ:小容量は「衝動買い」帯に設定。通常容量はプレミアム店・ECで価値訴求。
- 棚前3秒訴求:「何か・誰に・いつ使うか」を3秒で理解できるコピー・図解・短尺動画。
- 視認性:高明度配色/大きめフォント/ピクトグラムで可読性担保。
- 同時施策:棚帯・ミニPOP・レシピカード・15~30秒動画(無音でも伝わる)を同梱。
海外メンバーの一言:
「コンビニはシングルユースのパウチでないと、価格も棚条件も噛み合いません。」
価格レンジ×容量(目安)
容量区分 | 販路 | 目安(役割) |
---|---|---|
小容量(10~40g/1回分) | ||
小容量 | コンビニ | 低単価(衝動買い)。 導入条件になりやすい。 |
小容量 | プレミアム輸入食品店 | 低~中価格。 試し買い導線の役割。 |
小容量 | EC(モール/自社) | 低~中価格。 まとめ買い施策と併用。 |
通常容量(100~300g等) | ||
通常容量 | コンビニ | 非推奨~限定(棚負けしやすい)。 |
通常容量 | プレミアム輸入食品店 | 中~高価格。 試食/動画で価値訴求。 |
通常容量 | EC(モール/自社) | 中価格中心。 定期/セット/送料条件で調整。 |
※為替・店舗条件で変動。レンジは感度確認の仮置き(最終は現地バイヤー・輸入者と要詰め)。
法規・表示・物流:ミニチェックリスト
一言まとめ:「誰が何を担うか」を前倒しで確定し、表示・許認可・温度帯・物流条件を一気通貫で設計。
表示言語・必須情報
- 現地語・英語の併記方針を決定
- 原材料、栄養、原産国、内容量、保存方法、アレルゲン、連絡先等
- 日付表記(MFG/EXP、表記順)を現地仕様へ統一
許認可・役割分担
- 品目別の登録・届出・検査(所管当局と要照合)
- 輸入者・メーカー・弊社の役割分担を契約前に明文化
温度帯・梱包・物流
- 常温/冷蔵/冷凍のコールドチェーン要件
- インナーカートン等の最小出荷単位と破損率想定
- FOB/EXW等の貿易条件、現地配送、返品規定
販売時間帯・店舗運用
- 品目により販売時間・場所に制約あり得るため、運用ルールを店舗と合わせ込む
海外メンバーの一言:
「棚に置くだけでは動きません。棚帯・POP・短尺動画・SNS露出まで一体設計が必要です。」
販路別攻略とKPI目安(レンジ)
1) 卸(プレミアム輸入食品店)
- 初期条件:通常容量+試し買い用小容量。棚前POP/試食/15秒動画を同時投入。
- KPI:配荷店舗数、フェイス数、試食→購入率20~30%、週次消化率、返品率。
- 資料:価格表(卸/希望小売/MOQ)、商品規格書、四半期プロモーション計画(英語/現地語)。
2) EC(モール/自社)
- 初期条件:通常容量+セット/定期。レビュー創出(体験者10~30名)。
- KPI:CTR1.0~3.5%、CVR0.8~2.0%、AOV、配送LT、返品率。
- 商品ページ:使用タイミング・レシピ・比較表・UGCを1画面に集約。
3) ショート動画コマース(TikTok Shop等)
- 初期条件:小容量で認知→通常容量で回収。スクリプトは「正直な感想+生活文脈」。
- KPI:視聴→商品ページCTR3~8%、配信売上/時間、CPV(Cost Per View)、CPA(Cost Per Acquisition)。
- 運用:マイクロインフルエンサー複数、週次でクリエイティブABテスト。
4) モール内実店舗(専門店・催事等)
- 初期条件:試食・実演+動画サイネージ。高単価は「理由の見える化」。
- KPI:来店者接触数、体験→購入率、客単価、週次消化率。
90日実装プラン(週次タスク×合格基準)
一言まとめ:毎週合格基準となるKPIを設定し、「数字でGO/STOP」を判定します。
90日実装プラン | |||
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週 | 主要タスク | KPI(合格基準) | 達成できなかった際の対応策 |
1 | 現地価格レンジ・競合棚の読み解き /ターゲット定義 |
価格・容量仮説(小/通常)を文書化 | 追加視察/競合再調査 |
2 | 表示・許認可要件の棚卸 /輸入者と役割分担確定 |
要件チェックリスト完成 | 専門家の確認・レビュー |
3 | 小容量SKUの仕様決め (内容量・原価・希望小売) |
粗利計算書の雛形作成 | 内容量/原価再設計 |
4 | 通常容量SKUの役割定義(EC/卸) | SKU別KPI達成 | 販路先の再設定・再定義 |
5 | 棚前3秒訴求(コピー/図解) ・POP/棚帯/動画台本 |
店頭資料をまとめた雛形作成 | リライト/動画等の再撮 |
6 | クリエイター/配信者リクルート (10~30名の確保) |
応募者数・想定CPV/CPA達成 | 報酬/コンセプトの再設計 |
7 | パッケージ最終化 ┗ 色調/可読性/表示 |
視認性テストを○/×で判断 | 色/情報量の再調整 |
8 | 試作・モックアップ /簡易ユーザーテスト |
購入意向スコア(目安)で判断 | 訴求方法/容量の再検討 |
9 | 卸向け提案書 /価格表(現地語)完成 |
取引条件ドラフト合意 | MOQ/リパック検討 |
10 | EC商品ページ制作 ┗ UGC/比較表/レシピ等 |
CTR想定1.5%以上 | 1画面再構成 |
11 | 動画素材撮影 ┗ 15~30秒×n本/商品 |
視聴維持率目安クリア | 冒頭3秒差し替え |
12 | テスト導入 ┗ 小売1~3店舗/EC限定 |
週次消化/CTR/CVRの下限達成 | 価格/訴求/同梱物調整 |
13 | 結果レビュー→拡大条件決定 ┗ 四半期計画 |
拡大量の損益試算○ | SKU/販路の役割再配分 |
※海外営業 / 消費者開拓開始後の合格基準と対応策になります。
商品ジャンルや進出状況に応じて行う内容に変化はあるかと存じます。
よくある失敗と回避策(現場示唆)
- 容量×価格のミスマッチ:通常容量をコンビニへ→小容量パウチ+衝動買い価格へ切替。
- 視認性不足:落ち着いた配色・情報過多→高明度×情報3点に削る。
- 「置けば売れる」前提:販促同梱なし→棚帯・POP・15秒動画・SNS露出を同時投入。
- 高級施設偏重:来場者限定で消化鈍化→プレミアム店×EC×動画コマースで役割分担。
- 規制の読み違い:販売時間・表示・許認可の盲点→輸入者・所管当局での事前照合を定例化。
海外メンバーの一言:
「場所が変われば“安い/高い”の基準も変わる。エリア×販路での価格検証が先です。」
まとめ:明日からの次アクション(役割×タスク×判断基準)
- プロダクト担当:小容量SKUの仕様確定(内容量・原価・希望小売)/粗利レンジを満たすか
- マーケ担当:棚前3秒訴求・POP・15秒動画を同時制作/3秒理解率・購入意向スコア
- ロジ・法規担当:表示・許認可・温度帯・MOQ・リパック可否を確定/LTと返品規定の合意
FAQ(タイへの食品輸出)
- Q1. まずは小容量と通常容量、どちらを優先すべき?
- A. コンビニ・動画コマースは小容量を優先。通常容量はプレミアム店・ECで価値訴求とセットに。
- Q2. 表示言語はどの程度必要?
- A. 必須情報は現地語・英語の併記方針を推奨。最終は輸入者・所管当局と照合。
- Q3. 価格の決め方は?
- A. 棚前競合の最安/中央値/最高の3点と、粗利=販売価格−原価−手数料−物流費のバランスで決定。
- Q4. どの販路から始めるべき?
- A. 小容量テストがしやすい販路(動画コマース/限定EC/小規模店舗)から始め、KPI達成後にプレミアム店へ拡大。
- Q5. インフルエンサーは必要?
- A. 必須ではありませんが、短尺レビューは生活文脈での使い方が伝わりやすく、初速の検証に有効。
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