なぜベトナムで愛されるのか?ベトナムくんが語る、7年間の挑戦と新たな夢

日本人でありながら、ベトナムで熱狂的な支持を集めるインフルエンサー・アーティスト、『ベトナムくん』。
大学卒業後にアーティスト活動を開始し、2017年のYouTubeチャンネル開設、2023年初旬のTikTokでのブレイクをきっかけに、瞬く間に人気を獲得。
2021年には株式会社ベトナムエンターテイメントを設立し、2023年9月からはホーチミン市に拠点を移し、その勢いは増していく一方です。

なぜ彼は、日本人でありながら異国の地でこれほどまでに受け入れられ、成功を収めることができたのか。
その独自の活動スタイルと、人々を惹きつける魅力の源泉、そして彼の活動の裏にはどのような想いやストーリーが秘められているのか。

彼がベトナムという国、そして人々にかける熱い想い、前例のない道を切り拓いてきた彼のルーツとこれまでの道のり、さらには彼が見据える未来と今後の展望について、深く話を聞きました。

ベトナムくん

株式会社ベトナムエンターテイメント代表。
SNS総フォロワー数は約230万人を数え、2023年には月間総視聴回数が2億回を突破するなどの実績を持つ。

キャリア初期は大阪でのストリートライブを中心に活動し、その後、ベトナムの視聴者に向けたYouTubeチャンネルでは、現地の人気楽曲を独自の日本語カバーで披露し大きな反響を獲得。
これが現在の「ベトナムくん」としての活動スタイルを確立し、本格化させる礎となった。現地での共感を呼ぶコンテンツ制作に力を注ぎ、活動の幅を広げ続けている。

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1. 「ベトナムくん」誕生からYouTubeへの道、そしてベトナムでの手応え

ーーまず、アーティスト活動からYouTube、そして「ベトナムくん」という名前になった経緯を教えていただけますか?

ベトナムくん:
はい。大学を卒業してから7年間ほど、大阪を中心にストリートライブやライブハウスでアーティストとして活動していました。ありがたいことにワンマンライブで200~250人くらいのお客さんに来ていただけるようにはなったんですが、自分が目指していた「売れたい」という感覚とはまだ少し違っていて。このままではいけない、何か新しい挑戦をして状況を変えなければ、という思いがずっとありました。

活動7年目(2017年10月)の頃なんですけど、YouTubeで海外に向けて発信している日本の方がいるのを知って、「これだ!」と思いました。
以前、宮城県のベトナムフェスティバルに出演させていただいた経験があって、その時の印象や、ベトナムの音楽を調べてみたら曲調もミュージックビデオもすごく面白くて。「これを日本語でカバーして歌ったら、新しい表現ができるんじゃないか」と感じ、ベトナムの方向けのYouTubeチャンネルを開設したのが始まりでした。

ーー実際、動画を発信してみて、反響はどうでしたか?

ベトナムくん:
それが、自分でも本当に驚くほどの反響でした。

ベトナムの楽曲を日本語でカバーしたところ、日本語を勉強されているベトナムの皆さんの間で少しバズったみたいで。それまでオリジナル曲だと、頑張っても2000回再生くらいだったのが、いきなり何万回も再生されまして。

コメントも「私たちの国の歌をカバーしてくれてありがとう」「日本語で歌ってくれて嬉しい」といった感謝の言葉がたくさん届きました。 その時、YouTubeって本当に国境を越えて海外に届くんだなと実感しましたし、特にベトナムの方は自国への愛がとても深いので、ベトナムに関連するコンテンツがすごく喜ばれるんだという大きな発見もありました。その温かいコメントの一つ一つが本当に嬉しくて、夢中で10曲、20曲とカバー動画をアップし続けましたね。最初の動画のコメントは今でも残っていて、本当に感謝しています。

ーー「ベトナムくん」という名前はいつ、どのように決まったのですか?

ベトナムくん:
YouTubeで動画を投稿し始めて半年ほど経った頃、初めてベトナムに渡航してライブをする機会をいただいたんです。その時、本名の「井上恵一」では、現地の皆さんにはどうしても発音が難しくて、なかなか覚えていただけないことを痛感しました。「これではダメだ」と。もっと覚えやすくて、僕が何をしている人間なのか一目で伝わるような、分かりやすい名前はないかと考え抜いた結果、「ベトナムくん」という名前に決めました。

もう一つの大きな理由は、日本国内でベトナム関連のイベントに呼んでいただく際に、「井上恵一」として出演するよりも、「ベトナムくん」であれば、僕がベトナムと深く関わって活動していることがすぐに分かってもらえますし、それが少しでもベトナムという国のことを広めるきっかけになれば、という想いもありました。

実は「くん」については、ベトナムでは日本の「のび太くん」のように親しみやすいかと思ったんですが、あまりそういうニュアンスでは伝わっていないようで、最近は「クン」という一つの固有名詞として呼ばれています(笑)。でも、それも今となっては面白いですね。

ーーYouTubeに活動を移行する際、不安などはありませんでしたか?

ベトナムくん:
僕自身が「100か0か」で物事に集中したいタイプなんです。なので、YouTubeで本格的にやっていくと決めた瞬間、それまで7年間続けてきたライブハウスでの活動は、本当にきっぱりと全て辞めました。周りとの繋がりも一度リセットするくらいの覚悟でしたね。

不安が全くなかったと言えば嘘になるかもしれませんが、それ以上に「何かを大きく変えたい」「新しいことに挑戦して、まだ見ぬ可能性に賭けてみたい」という気持ちが圧倒的に強かったです。退路を断つことで、自分を追い込んでYouTube一本に集中できる環境を作った、という感じですね。そのくらい、YouTubeというプラットフォームと、ベトナムという国への発信に大きな可能性を感じていました。

ーー「ベトナムくん」として活動する中で、手応えを感じ始めた瞬間はありましたか?

ベトナムくん:
はっきりと「これだ!」という手応えを感じたのは、ベトナムの活動を始めて2年ほど経った頃、大阪で開催されたベトナム関連のイベントに出演させていただいた時です。

僕が登場する際に、会場の皆さんから自然と「ベトナムくん!」という大きなコールが湧き上がったんです。あれは本当に…めちゃくちゃ嬉しかったですね。ずっとアーティストとして、いつかはお客さんが自分の名前を呼んでくれるような、そんな一体感のあるライブ空間を作ることを目標にしていたので、一つの夢が叶った瞬間でした。 ベトナム現地だけでなく、日本にお住まいのベトナムの方や、ベトナムにいる日本人の方々にも、自分の活動や想いが届いているんだなと実感できましたし、「ベトナムくん」という名前にして本当に良かった、この名前で活動していくことへの責任感のようなものも、その時改めて強く感じました。

何者かになりたかった自分が、ベトナムという名前を背負って活動し、少しでも認めてもらえたのかな、と。感じた瞬間でした。

2. 人気の裏側にある苦悩との葛藤

ーーYouTubeで人気が出た後は環境の変化ってありましたか?

ベトナムくん:
想像していた様な大きな変化はなかったです。ベトナム向けなので、すごくバズっても広告単価が日本の10分の1以下とかで、広告収益だけでは活動継続が難しい状況でした。動画制作費もかかりますし、作れば作るほど赤字になるような時期もありました。

生活環境という視点だと、YouTubeを始めてしばらくして実家を出たんですが、お金がなくて、本当に節約しながらの活動でした。チャンネル登録者が10万人を超えるまでのしばらくは厳しい状況で、世間のイメージとのギャップに恥ずかしさを感じることもありましたね。

ーー経済的に厳しい時期を乗り越え、活動を続けていく中で、状況が少しずつ好転していくような、何か具体的なきっかけや変化はありましたか?

ベトナムくん:
そうですね、大きなきっかけとしては、YouTubeを始めて1年ほど経った頃に、以前から応援してくださっていた大阪のベトナム料理屋さんから初めてPRのお話をいただいたことです。それが本当にありがたくて、長らく活動の大きな支えになっていました。

その後、チャンネル登録者数が10万人を超えたあたりから、少しずつ他の企業さんからもお声がけいただく機会が増えていきました。そして、2022年から2023年にかけて動画をたくさんの方に見ていただけるようになった時期には、ありがたいことに案件でお受けする金額も以前より上がることがありました。ただ、それをどう継続的な活動の安定や、企業さんへのより良い貢献に繋げていくかという点では、また別の難しさも感じていましたね。

ーーどのような難しさや悩みを感じていたのですか?

ベトナムくん:
そうですね。ありがたいことに企業様からお声がけいただく機会は増えたのですが、高額な報酬をいただいても、「これで本当に企業さんのためになっているのだろうか? 貢献できているのだろうか?」という違和感や不安が常にありました。もちろん、活動を続けていくためには案件をお受けすることも重要だと理解していましたが、自分が本当に追求したいクリエイティブな表現と、企業様のご要望との間で、どうバランスを取るべきか戸惑いを感じることもありました。

特に、案件の企画提案ですとか、その成果を次へと繋げていくための営業活動といった業務が、正直なところ本当に苦手で…。会社(株式会社ベトナムエンターテイメント)を設立してからは、運営面にも関わるようになり、もっと動画制作そのものに集中したいという理想と、現実とのギャップに深く悩んでいた時期があります。

そんな状況の中で、大村さんとは、それ以前からいくつかのお仕事をご一緒させていただく機会があったんです。そのやり取りの中で、僕が大切にしているクリエイティブな部分や、将来やりたいことに対して、いつも親身になって耳を傾け、理解しようとしてくださる姿勢を感じていました。「この方なら、今の自分の悩みを率直に話せるかもしれない」と、徐々に信頼を寄せるようになっていったんです。それで、大村さんに相談するようになったんです。

3. 転機となった出会い:創作活動への集中

ーーこれまでにも所属などのオファーも多数あったと思いますが、なぜ今回エージェント契約という新たな一歩を踏み出されたのは、どのような心境の変化やきっかけがあったのでしょうか?

ベトナムくん:
そうですね、本当にありがたいことに、この7年間で数えきれないほどのオファーを国内外からいただきました。「所属しませんか」「一緒に何かやりませんか」と。でも、僕は昔からどこかに縛られるのがあまり得意ではなくて、インディーズでライブ活動をしていた頃から基本的には「自分でできることは自分でやる」というスタクルを貫いてきましたし、「自分でもできるはずだ」という思いも強かったので、ほとんどのオファーをお断りしてきたんです。

ただ、大村さんとは最初、案件のご連絡をいただいたのがきっかけでしたが、何度かお仕事をご一緒させていただく中で、他のエージェントの方や企業の方とは何か違うな、という感覚を徐々に抱くようになりました。

ーーその「何か違うな」という感覚から、最終的に決断された、具体的な「決め手」は何だったのでしょうか?

ベトナムくん:
決め手になったことは本当にたくさんあるんですが、一番大きかったのは、僕が本当にやりたいこと、つまりクリエイティブな活動や表現を何よりも最優先に考えてくださったことです。

以前、とあるカフェで初めてじっくりお話しさせていただく機会があったのですが、その時に大村さんが、僕が抱えている悩みや、将来的に挑戦してみたいことを、時間をかけて聞いて、整理してくださったんです。「ベトナムくんが本当にやりたいことがブレない形で、PR案件なども作っていきましょう」と明確に言ってくださったり、僕が「実はドラマのような作品作りにも挑戦してみたいんです」とポロッと本音を漏らしたら、「じゃあ、ドラマでPRしましょう!」と、僕の意向を汲んで企業様にも喜んでいただけるような形で、すぐに具体的な案件としてアレンジして動いてくださったり。

これまでの7年間、クリエイティブのことを本当に第一に考えてくれるエージェントさんって、正直なところ、なかなかいらっしゃらなかったんです。企業さんや代理店さんだと、どうしても「これを入れてほしい」「こうしてほしい」という要望が先に立つことが多かったので…。大村さんとお話していく中で、「この人になら自分の弱いところも全部さらけ出せる、心から信頼できる」と強く感じました。それに加えて、僕が本当に苦手で大きなストレスを感じていたメールの対応や煩雑な事務作業を「それは僕たちが全部やりますよ!」と快く引き受けてくださったのも、本当に、本当に大きな決め手でしたね(笑)。

ーーエージェント契約を結んで、日々の活動や、特にベトナムくんが最も大切にされている動画制作などのクリエイティブな作業に対して、具体的にどのような変化がありましたか?

ベトナムくん:
まず、精神的な変化が本当に大きいです。以前は、インフルエンサー案件のメールが山のように届くだけで「何て返したらいいんだろう…」「ミーティングもどう進めたら…」と気が重くなって、本来集中すべきコンテンツ制作へのエネルギーが削がれてしまっていたんです。大村さんに率直に相談して、本当に必要なものだけに絞っていただけるようになりました。

その結果、僕が心の底からやりたかった動画制作や新しいコンテンツ作りに、100%の力で集中できる環境がようやく戻ってきた、という感覚です。まさに僕の「100か0か」の性質でいうところの、「100」の状態でクリエイティブに向き合えるようになったのは、本当に大きな、そして嬉しい変化ですね。

ーー仕事に対する向き合い方も変わりましたか?

ベトナムくん:
はい、これはもう劇的に、180度変わったと言っても過言ではありません。以前は、「本当にこれで企業さんのためになっているのかな…」など迷いながら取り組んでいた案件も、今は「ちゃんと企業さんのためになる形でやれている」という強い納得感と手応えを感じながら、全ての案件にすごく前向きに取り組めています。

以前は苦手意識しかなかった企業様との打ち合わせも、今では「どうやったらもっと面白いものが作れるだろう?」「どうすればもっと良い結果を出せるだろう?」って、純粋にワクワクしながら企画を考えられるようになりましたし、何より、自信を持って「もっと色々な企業さんとベトナムを繋ぐお仕事がしたい!」と胸を張って言えるようになったんです。これは本当に、自分の中で革命的な変化だと思っています。

4. ベトナムへの恩返しと今後の活動

ーー今後、パートナーシップを通じてベトナムくんが実現していきたい夢や、エンターテイメントを通じて成し遂げたいことについて、ぜひお聞かせください。

ベトナムくん:
はい、大きな夢が二つあります。

一つは、本当に壮大な目標になるのですが、100万人が同じ空間で感動を共有できる大規模な音楽フェスティバルを、いつかベトナムで開催することです。
会場に来てくださったお客さん全員が、日常の悩みや疲れを忘れて心から笑顔になれて、「本当に楽しかった!」「幸せだな」と感じてもらえるような、そんな温かい空間をエンターテイメントの力で作り上げたいんです。現代社会で多くの人が抱えるかもしれない寂しさや孤独感を、そうしたエンターテイメントを通じて少しでも和らげることができたら、それはもうアーティストとして最高の喜びですね。

そしてもう一つ、これは僕の活動の大きな原動力でもあるのですが、これまで僕を温かく受け入れ、応援し続けてくれたベトナムという国と、そこに住む人々への恩返しです。
YouTubeを始めた頃から今日まで、ベトナムの皆さんからは本当にたくさんの「ありがとう」という言葉をいただいてきました。でも、正直なところ、僕はただ動画を見てもらっているだけで、その感謝に対して何も直接的な形でお返しができていないという気持ちが、この8年間ずっと心のどこかにあったんです。 だから、今後の活動を通じて得られた収益の一部を使って、ベトナムのまだ教育環境が十分に整っていないような地域に学校を建てたい、と強く思っています。そうやって、感謝の気持ちをちゃんと具体的な形にして恩返しができて初めて、ベトナムの皆さんからの温かい「ありがとう」という言葉を、僕も心から素直に受け取れるような気がするんです。その思いが、今の僕を突き動かす大きなモチベーションになっていますね。

ーー最後に、今回のエージェント契約について、改めてコメントをお願いします。また、ベトナムへの進出を考えている、あるいは既に進出している日本企業に向けてメッセージはありますか?

ベトナムくん:
まず、今回のパートナーシップを結ばせていただけたことに、本当に心から感謝しています。7年間、良くも悪くも一人で試行錯誤しながら活動してきた中で、やっと心から信頼でき、自分のクリエイティブを最大限に活かしてくれるチームと出会えたという気持ちで、今はワクワクしかありません。

そして、これからベトナムへの進出をお考えの、あるいは既に進出されている日本の企業の皆様へのメッセージですが、今の僕と僕のチームには、単に動画をバズらせるということ以上の価値を提供できるという、確かな自信があります。

皆さんの製品やサービスが持つ魅力を最大限に引き出し、それがベトナム市場でどうすれば響くのか、ビジネスをどう一緒に盛り上げていくことができるのか、一緒に考えさせてください。「僕たちチームに任せていただければ、きっとご期待以上の成果をお約束できます」と、今は胸を張って言えます。ですので、ぜひ安心して、ベトナムでのビジネス展開についてご相談いただければ、これほど嬉しいことはありません!


ベトナムくんが語ったベトナムへの深い感謝と『恩返し』への強い想いを胸に、私たちCOUXUは彼のエンターテイメントがベトナムと日本の架け橋となり、彼の目指す社会の実現に向けて、一丸となって活動していきたいと考えています。

 

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