たった3ステップ、原産地証明書の取得手順

“Made in japan”の世界で浸透しているイメージは”高品質で信頼性があり、安心が持てる”といった具合に好印象で、ナショナルブランドとして確固たるポジションを築いてるのはご存知だと思います。
Made in japanという表記だけで商品を購入する海外の人も少ないでしょう。
ですがその反面、表記を偽造したり偽物が世に出回っているのも事実であります。
本物を仕入れたい海外の企業は”本物である証拠“を今は何より重要視しています。
そこで取引の際に本物だと証明する「原産地証明書」が必要になります。
今回は、一般的な原産地証明書の取得方法についてご紹介していきます。
協定による特恵関税の適用が目的の特定原産地証明書、一般特恵関税適用のための原産地証明書(Form A)とは、また違いますのでご注意ください。
目次
原産地証明書とは
原産地証明とは、「貨物の原産地、つまり貿易取引される輸出品や輸入品の国籍を証明すること」になります。人間でいうと保険証や住民票に値するところです。
原産地証明書は、その真実性を保証するために、輸出地の商工会議所、もしくは官庁、輸出国所在の輸入国領事館などが証明する書類です。
原産地証明書が必要とされる理由やその役割、また原産地の認定基準については以下のとおりです。(1) 原産地証明書が必要とされる理由
①輸入国の法律や規則に基づく時
②貿易取引の契約書や荷為替信用状(L/C)で必要とされる時(2) 原産地証明書の役割
①輸入関税率の確定
②商品の原産地表示
③通商手段の適用(ダンピングの防止、相殺関税、セーフガード等)
④内国民待遇の対象の判定出典:東京商工会議所
原産地証明取得までの3ステップ
原産地証明取得までの流れを3ステップでご説明いたしましょう。
最初に、原産地証明取得までに必要な書類は3つあります。
1.証明依頼書
2.原産地証明書
3.コマーシャル・インボイス
それでは上から順番に1つずつ書類の書き方から申請までご説明していきます。
ステップ① “証明依頼書”を記入しに行こう!
まず、証明依頼書を記入しに輸出地の商工会議所に向かいましょう。
商工会議所の証明センターにあるので、証明依頼書を記入してください。
証明依頼書は次の3つがあります。
(1)ラバー証明用・・・ラバースタンプ(ゴム印)による証明
(2)肉筆証明用・・・・・自筆(肉筆)署名による証明
(3)外国産証明用・・・外国産品証明用(日本産品との混載を含む。ラバー証明、肉筆証明兼用)
(1)ラバー証明用
貿易登録番号、申請会社名、担当者氏名、担当者連絡先を記入が必要となります。
代行業者が申請なされる場合は代行会社の項目もすべて記入が必要となりますのでご注意ください。審査担当者から書類内容についてお問い合わせすることがあります。
原産地証明を申請なされる場合は、仕向国コード*1、品目コード*2、証明件数、証明料をご記入ください。
*1 仕向国コードはこちら
*2 品目コードはこちら
また、申請には手数料がかかります。証明件数と証明料合計を記入してくださいね!
ちなみに東京商工会議所会員の場合、1,080円、非会員は3,240円です。
(2)肉筆証明用
手順はラバー証明用と同じです。
肉筆証明の必要部数(領事査証を取得する部数)をご記入ください。なお荷為替信用状(L/C等)で肉筆署名を要求されている場合は、当該L/C等全文のフォト・コピーを添付してください。
(3)外国産証明用
まず、貿易登録番号、申請会社名、担当者氏名、担当者連絡先をご記入ください。代行業者が申請なされる場合は代行会社の項目もすべてご記入ください。審査担当者から書類内容についてお問い合わせすることがあります。
主な原産国コード*1、仕向国コード*2、品目コード*3、証明件数、証明料合計、証明料をご記入ください。また、肉筆証明の場合には、肉筆の必要部数も必ずご記入ください。
*1 原産国コードはこちら
*2 仕向国コードはこちら
*3 品目コードはこちら
また、貿易取引の種類により、資料に○が必要なので記入してください。
ステップ② ”原産地証明書”を提出しよう!
必要な部数と商工会議所の控えになる1部(フォトコピー不可)を併せて提出します。1件の証明手数料で1~5部まで発給が可能です。
ステップ③ ”コマーシャル・ インボイス”を用意しよう!
こちらは1部で大丈夫です。これは商工会議所の控えになります。オリジナルのみで、フォトコピー等は不可ですのでお気をつけください。
●記載方法
・プリンターやタイプで黒か青の印字で記載してください。
・日付は必ず書類作成日(申請日以前の日付)を記載。先の日付での申請は不可です。
・英文会社名(レターヘッドに会社名がある場合は省略可)
・サイン(署名)
・サイナー(署名者)英文氏名(フルネーム)
これは署名者を特定し、登録済署名と照合するために必要です。
詳細な記載方法の見本です。
証明依頼書(証明申込書)(東京商工会議所)
原産地証明書(名古屋商工会議所)
●必要事項
1、コマーシャル・インボイスが必要。その他のProforma invoiceなどは不可です。作成の条件として「輸出の確定」があるため、船積み事項の詳細や商品の総数量等が確定したら作成します。
2、署名
・登録されている署名者本人の自筆で、署名を記載事項の最後に入れる。
・原産地証明書、商業インボイスのサインは登録が必要です。未登録や有効期限切れの場合の申請は受理されません。書類が複数ページの場合、最終ページのみ署名のコマーシャル・インボイスは不可です。
3、虚偽の申請には罰則規定があります。
■原産地証明書の申請時期
1、船積み前、船積み後6カ月以内
コマーシャル・インボイスの記載事項が全て確定した段階で申請
2、船積み後6カ月以上1年以内
通常の申請書類に加え、別途典拠資料が必要
3、船積み後1年以上経過
証明書の発給不可
●証明申請が遅れた場合
上記2の、船積み後6カ月以上1年以内になった場合の別途典拠資料です。理由書を申請者のレターヘッドで作成します。申請が遅れた具体的な理由は「○○国で保税状態になっている貨物を輸出するために必要となった」等の詳しく説明します。日本から船積みされた事実を示す資料の、以下のどれかのフォトコピーが必要です。
1、B/L(Bill of lading)
2、AWB(Air Waybill)
3、SWB(Sea Waybill)
4、EMS/DHL/FedEx/OCS等の受領書
5、輸出許可済のE/D(Export declaration)
①日本国内で製造された商品の場合
自社製品を直接輸出した場合は、自社で製造した旨の誓約文を記載します。他社から購入している場合は以下のどちらかを添付します。
1、製造業者発行の製造証明書
2、製造業者や卸・小売店業者からの納品書や出荷案内書
②外国産商品の場合
当該商品の原産地等を確認できる典拠資料が必要です。
▼詳細な資料(東京商工会議所)▼
http://www.tokyo-cci.or.jp/shomei_center/country_of_origin/coo08/#c3
■原産地証明書に関する罰則
原産地証明書に関する罰則はしっかりと確認しておきましょう。
1、商品名を偽り原産地証明書を申請…申請者および代行業者の登録を抹消
2、商品名以外の原産地その他の項目に事実に反する内容を原産地証明書に記載し申請
(1)故意の場合、申請者および代行業者の登録を抹消
(2)過失または錯誤の場合、1カ月間、原産地証明書の発給停止。停止期間終了後6カ月以内は、輸出許可書の写しまたは製造・出荷証明書などの追加資料の提出が義務3、原産地証明書の発給後、内容を改ざんした
(1)輸出者名の改ざんは、申請者および代行業者の登録を抹消
(2)それ以外の事項は、1年以内の期間、原産地証明書の発給を停止4、原産地証明書用紙を偽造、改ざん…原産地証明書の発給を停止。
5、発給者の署名、証明印または訂正印を偽造…原産地証明書の発給を停止。
発給者の署名、証明印もしくは訂正印を不正に使用、偽造した署名、証明印もしくは訂正印を使用した場合も同じく。6、登録署名人でない申請者が輸出者宣誓欄に署名した
(1)登録済みの署名を真似た場合、1年以内の期間、原産地証明書の発給を停止
(2)未登録の署名を行った場合、6カ月以内の期間、原産地証明書の発給を停止7、輸出者宣誓欄に署名した代行業者は相当の期間、原産地証明書の申請を受け付けない
その代行業者が度々署名をすると、制裁金もあり出典:名古屋商工会議所
実例とまとめ
例えば「日本から材料を輸出し海外の工場で作られ販売された場合、日本製になるの?」といった事例を挙げてみます。
▼日本製の定義についてはこちらから▼
どこからがMade In Japanなの?その定義を調べてみた
一般的品名:釣り糸 原産地:日本
製造工程:日本原産材料をベトナムに輸出し、ベトナムにおいて、糸(第54.04項)をスプールに巻取り、適当な長さで切断し、スプールに丸ラベルを貼り、台紙とともに塩ビケースに入れ、バーコードシールを貼った後、紙製外箱に入れ、製品として日本に輸入する。
認定理由
WTO協定税率を適用するための原産地の認定については、関税法施行令第4条の2第4項、同施行規則第1条の5及び同第1条の6並びに同基本通達68-3-5の規定に従う。
上記規定によると、生産が二国以上にわたる場合は、実質的な変更をもたらし、新しい特性を与える行為を行った最後の国を原産地とするが、当該照会貨物の製造工程において、材料である糸の関税定率法別表の項(第54.04 項)が、製造された物品である当該照会貨物の項と同じであるため、ベトナムにおいて実質的な加工が加えられたとは認められない。
そこで、各原材料について、実質的な変更をもたらし、新しい特性を与える行為を行った最後の国を考えると、全ての原材料について、原産国は日本であるとの照会者の説明である。したがって、当該原材料のみから製造された当該照会貨物の原産地は日本であると認められる。出典:東京商工会議所
意外と取得が難しい(面倒くさい)原産地証明書の取得までの流れは理解できましたでしょうか?
様々な法律や決まりがあるものの、流れを理解してしまえばそこまで難しくありません。
これから日本の商品がどんどん海外に出て行くことを期待しています。