覚えてる?クールジャパンの成功例を振り返る
みなさんはクールジャパンという単語を覚えていますか?
内閣府によると、クールジャパンとは「世界から『クール(かっこいい)』と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の『魅力』」を指し、食やアニメなど様々な分野がその対象となり得ます。
ようやくインバウンド需要が戻り、これまで以上に日本の魅力を発信するチャンスである今日この頃。実は現在、クールジャパンに関する新しい動きも始まったのです。
今後日本の魅力をどのように発信していくべきなのかを考えながら、少し懐かしいクールジャパンの成功例を振り返ってみましょう。
目次
クールジャパンの成功例
クールジャパンを広めていくために2013年に設立されたのが、官民ファンドのクールジャパン機構です。
経済産業省やジェトロと一緒に、海外への高い発信力とリターンが見込まれるプロジェクトに出資などの支援を行っています。
当時この支援を受けて国内外で日本文化のブームを巻き起こした事例を見ていきます。
Tokyo Otaku Mode Inc.によるポップカルチャーの発信
2012年に設立したTokyo Otaku Mode Inc.は、クールジャパン機構設立後に最初に出資された企業です。
日本のアニメ・ゲーム関連商品の販売を中心とした海外消費者向け越境ECサイトを運営している企業で、今では100カ国以上に販売しています。
元々、アメリカの小額出資ファンド、500 Startups代表のデイブ・マクルーアに事業の可能性を見出され、投資を受けつつ自社のWebサイトを世界向けに作り上げていきました。
大手企業で活躍した人材が集い、自社ECサイトや各種サービスの英語対応にも力を入れていくことで、事業の拡大を進めてきました。
また、経済産業省の海賊版対策に協力して正規サイトへの誘導を行ったり、スペシャルクリエイターを選定して作品発表の場を提供したりと、多方面で連携を行っていました。
当時このスタートアップ企業が調達した資金は、3年間でなんと15億円です。
クールジャパン施策のコンテンツ産業で日本の独自のポップカルチャーを発信する先駆けとなったと言えるでしょう。
Japan in Motionによるお好み焼きブーム
※以下のHPより引用
映像制作関連会社のTSSプロダクションが、フランスで日本を紹介する番組「Japan in Motion」を放送しました。提携したケーブルテレビの当時のユーザー数は、650万世帯で約1200万人も上ります。
その後、フランス人による日本文化博覧会、Japan Expoに参加すると、お好み焼きブームが起こって実際の事業開発に発展しました。今でもパリに人気のお好み焼き専門店があることから、フランスの方々にしっかり根付いていることがわかります。どうやらあの甘辛ソースの味が好きなようです。
余談にはなりますが、このフランスでの日本文化ブームの流れにのって、岡山県倉敷市のMOMOTARO JEANSがフランスを中心に海外売り上げを2倍に伸ばしたという事例もあります。
その結果、フランスから広島への観光客が増えたとの報告もあり、日本文化に関心を持ったフランス人の国内流入という、まさにクールジャパン政策の目標を達成したことになります。
博多一風堂によるトンコツの普及
日本でもお馴染みのラーメン店、博多一風堂は、クールジャパン機構の支援を受けて、現在までに世界の15か国に出店しています。
アジア各国だけでなく、出店が困難だったヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの各都市に、ラーメンをはじめ、日本食・飲料全体の普及と発展のため、2008年から進出し始めました。
一風堂が日本とは異なる「高級な日本食」というイメージを持たせて戦略を立てたことで、「日本のラーメン」という存在が世界中に広まったのです。
なんと2024年中には国外の店舗数が国内を上回る見込みだとのことで、今でも勢いは衰えていません。
一風堂とは違うスタイル、家系ラーメンの海外進出については以下の記事にまとめられています。
ご興味のある方はこちらもぜひご覧ください。
クールジャパンの現在
今や世界でも認知されるようになった日本文化普及の成功例を取り上げましたが、「そういえばそんなこともあったなあ」と思い出した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、今まさに私たちが「クールジャパンって懐かしい」と思っているように、すべてのプロジェクトが成功しているわけではありません。
2023年10月31日に開かれた参院の予算委員会では、クールジャパン機構の経営改善を求める意見が見られ、「成果が上がらない場合には統合するか廃止するか考えないといけない」とまで述べられていました。
翌月11月30日には、それを踏まえて知的財産戦略推進本部の有識者会合が開かれ、4年ぶりに新しいクールジャパン戦略が策定されることとなりました。
果たして世界はまたクールジャパンブームに沸くのでしょうか。
まさに転換期とも言える今後の展開に注目です。
参考文献
・内閣府, 「クールジャパン戦略(令和元年9月)」, https://www.cao.go.jp/cool_japan/about/about.html
・日本経済新聞, 「一風堂ラーメン、米国店はバー併設 海外で稼ぐ店舗戦略」, 2023年9月28日更新, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC311WZ0R30C23A8000000/
・朝日新聞デジタル, 「巨額赤字のクールジャパン機構 首相「経営改善求めること必要」」, 2023年10月31日更新, https://www.asahi.com/articles/ASRB04J0BRB0UTFK00F.html
・時事ドットコムニュース, 「政府、新クールジャパン戦略策定へ ロケ誘致や輸出多角化」, 2023年11月30日更新, https://www.jiji.com/jc/article?k=2023113000596&g=pol