アジアで日本酒が爆売れ?!アジア各国のお酒事情と今、アジアに日本酒を売るべき理由とは!

グローバル化が進み、モノやヒトの国境を越えた移動がますます活発になってきている現代において日本のスポーツや日本食、アニメなどの「日本文化」が海外にも広く伝わり、世界中で人気になっています。特に海外での日本食ブームというのは日本でも報道されることが多く、多くの方が知っているのではないでしょうか。実は「日本酒」というのも例外ではないのです。「SAKE」としてアメリカで人気なイメージがあると思いますが、実はアメリカだけでなくアジア諸国でも今、日本の「SAKE」が大人気なのです。
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目次
アジア圏で大きく伸びている日本酒の消費量
こちらは平成19年から29年にかけての日本酒の輸出国への輸出金額の推移を表したもの(出典:国税庁)です。このグラフから日本酒の輸出金額が平成22年から29年までの8年連続で過去最高を記録しており、最大の輸出国であるアメリカに加えて香港や中国、韓国、台湾、シンガポール、カナダといった国で輸出金額が大きく伸びていることがわかります。そこで、今度は東南アジア諸国に焦点をあててみましょう。
2010年から2014年までのアジア諸国への日本酒の輸出額の推移を表すこちらのグラフ(出典:日経研月報)によると、ベトナムでは一度落ち込んだ年があったものの、ほとんどの国では輸出金額、数量ともに着実に増加をしていることが分かります。
こちらは同じく2010年から2014年にかけてのアジア諸国の日本酒の輸入数量と金額の伸び率を示したもの(出典:日経研月報)です。シンガポール、タイ、マレーシアでその伸び率が特に大きいということが分かります。
こちらの表(出典:財務省貿易統計)は2017年における国別の日本酒の輸出数量の上位5か国とその前年比を表しています。アメリカへの輸出数量が最大で韓国、中国、台湾とアジア圏の国が多く続いていることが分かります。
これらのデータより、以下のようなことがわかります。
・世界的に各国の日本酒の輸入金額・数量が大きく伸びている中で特にアジア圏の国々で大きく伸びている。
・アジア圏の国々の中でも中国、韓国、台湾、香港や東南アジア諸国(特にシンガポールやタイ)で日本酒の需要が高まっている。
そうです。日本酒の人気は国境を越え、アジア諸国で大きく人気になり、そのアジア圏における市場規模は確実に成長しているのです。今やアジア中で「日本酒ブーム」が巻き起こっていると言えるでしょう。
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アジア諸国のお酒事情とは?
- それでは今度はそんなアジア諸国におけるお酒事情をよりミクロな視点でみていきましょう。
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中国のお酒事情
- 中国のお酒の歴史は古く、歴史や人々の生活と大きく関わりながらお酒の醸造技術の発展や様々なお酒の普及が進みました。現代の中国では独自の発展を遂げてきた黄酒、白酒に、ワイン、ビールを加えた4種が主に飲まれていますが、ウィスキーやウォッカ、果実酒なども飲まれています。その中でも近年、人気になってきているのが日本酒です。中国で日本食が人気になり、日本料理のレストランが増えたこと、日本への観光客が増えたことにより日本酒への認知度が上がったこと、そしてアルコール度数が高く、強すぎる白酒よりもほどよい度数でさっぱりとしている日本酒を好む若者が増えてきたことにより、日本酒ブームが起こっています。レストランや居酒屋のメニューに日本酒があることも珍しくなく、高価でもよく飲まれているそうです。その人気は日本と中国の食品関連団体が主催する日本酒コンテストである「SAKE-China」というものが開催されるほどです。中国人の評価によってNo.1の日本酒を決めるというものです。これまでに2018年、2019年、2020年と3年連続開催されています。写真:『中国の一般消費者が好みの日本酒を選ぶ品評会で、授賞式に出席した蔵元関係者ら=23日、北京(共同)』(2019年 西日本新聞ニュースWEB)
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タイのお酒事情
- タイのお酒事情の大きな特徴として、飲酒が禁止されている時間や日、そして場所があるなどのお酒に関する規制が日本よりも厳しいというところです。タイでは11:30から14:00と17:00から24:00というようにお酒の販売時間が決まっています。また、お酒を販売できない時間帯の他に販売が禁止の禁酒日として指定されている祝日が年に数回あるほか、選挙の投票の当日と前夜、期日前投票日にはお酒の販売が禁止されているうえに公共の場での飲酒が禁止されます。さらに、寺院や学校、医療機関、役所、ガソリンスタンド、公園など、飲酒が禁止されている場所もあります。
- 人気のお酒はビールとウイスキーで、タイの国産ビールや米を原料とした国産ウイスキーが飲まれることが多いそうです。ビールは氷を入れて飲むのがタイ流です。また、最近は国外から輸入されたお酒もたくさんの種類がお店に売られています。また、ここでも日本酒が人気になっているそうです。現地で暮らす日本人の需要や近年の和食ブーム、さらにはタイ国民の日本文化への関心の高まりから日本酒を飲むタイ人も富裕層を中心に増えています。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2015年にタイが日本から輸入した日本酒は総額約6400万バーツ(約2億円)で11年の2倍近くに増えたそうです。さらに財務省によると、東南アジアではシンガポールに続く市場となっています。
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シンガポールのお酒事情
- シンガポールにもタイほど厳しくはないですが、飲酒・酒類販売の時間帯や公共の場での飲酒に関する規制が存在します。シンガポールで最も人気なお酒は比較的安価で購入できるビールです。日本のビールも人気です。また、世界各国からおいしいワインが集まるということからワインの人気も高いです。さらに日本のウイスキーもここ数年で人気になってきました。
- しかしシンガポールのお酒事情で最も特徴的なのはなんといってもその日本酒人気です。シンガポールでも国内の日本食レストランが年々増加しており、観光で日本を訪れるシンガポール人も増加していることから日本食やそれに合う日本酒への認知度が上がったことで日本酒の人気が上がり、日本酒ブームが起きているのです。さらに、シンガポールの平均年収や国民一人当たりのGDPは他国を大きく上回っており、富裕層が多いため、シンガポールで輸入コストや関税によって比較的高価で売られている日本酒も購入できる人が多いのです。
- こちらは2010年から2019年までのシンガポール向けの日本酒の輸出金額の推移を表したグラフ(出典:財務省貿易統計)です。輸出金額の急激な増加からシンガポールでの日本酒人気の急上昇が感じられるでしょう。
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海外で日本酒が人気な理由とは?
- ではなぜ、最近になって海外で日本酒人気が高まり、現在各国で日本酒ブームが起きているのでしょう。
- 最大の理由は海外の日本食レストランの増加です。これによって日本食の人気が高まり、さらに日本酒が日本食レストランで出されることで認知
- 度が上がるとともに日本食レストランで嗜む日本の高級で珍しいお酒というイメージから日本酒を飲むことに憧れる人が増えたのです。
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- こちらは海外における日本食レストラン数の推移を地域ごとに示したもの(出典:外務省調べ、農林水産省推計)です。全体的に大きく増加しており、特にアジアにおける増加が著しいということがわかります。
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日本酒の国内需要の低下と海外需要の増加
- 以上の内容より、日本酒の海外における需要は大きく上昇し、アジア圏を中心に日本酒ブームが起こっていることがわかります。一方で、国内における日本酒の需要は低下し続けているというのが現状です。
日本の種類課税数量と成人人口の推移を表したこちらのグラフ(出典:国税庁「酒のしおり」)からもわかるように、日本酒の国内需要は下がり続けています。原因としては消費者の嗜好や娯楽の多様化が挙げられるでしょう。様々な娯楽施設やスマートフォンの普及により手軽に楽しめるようになった映画や漫画、動画視聴やSNSなど、余暇の時間の使い方の多様化が進んでいます。さらにこのグラフからわかるように、消費者に飲まれているお酒も多様化しています。果実酒やリキュール、缶チューハイ、ウィスキー、焼酎など、その種類が多様化し、様々なお酒が好まれるようになったことで全体に占める「その他」の割合が大きく増加しています。
こちらのグラフ(出典:国税庁「清酒製造業の概況」)によると、日本酒の製造業者数は減少し続けており、1ヶ月あたり約2.9社が廃業している計算であるということが分かります。日本酒の国内需要の低下に伴って日本の日本酒製造業者が大きな打撃を受けているというのが現状となっています。さらに日本の人口減少も長期的に日本酒の国内需要減に拍車をかけると考えられます。
したがって、これからの日本酒製造業者にとっては縮小している日本酒の日本市場だけではなく、拡大している海外市場に目を向け、海外販路開拓による輸出によって収益を得るという方針が好ましいといえます。しかし、自社製品の海外輸出や海外営業の経験のない日本企業にとっては貿易の知識や書類作成、海外営業のノウハウや海外の日本酒を買う海外バイヤー企業の情報や言語の壁など、課題が多く、海外販路開拓に失敗してしまうという事例も少なくありません。
COUXUについて
弊社は「セカイコネクト」というプラットホームを通じて日本企業様に海外バイヤーの調達要望の情報をご提供し、海外販路開拓を一貫して支援しております。また、セカイコネクトacademyというサービスにて海外営業や海外への輸出が初めての方やご経験が少ない方向けに海外営業、英語、輸出業務、海外バイヤーへの商品の提案の仕方などの知識やノウハウの提供を通じてサポートをさせていただいています。少しでもご興味のある方は是非、以下のフォームよりお問い合わせください。
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まとめ
- 日本酒の海外、特にアジア圏における需要の高まりと、国内需要の衰退、国内市場規模の縮小という背景からこれからの日本酒製造業者は海外へ目を向ける必要性があるということがいえるのではないでしょうか。
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参考文献
- 一般財団法人日本経済研究所月報(2016年8月)「日本酒販売のアジア展開に関する調査~シンガポール・タイを中心とした最近の動向~」
- マイナビニュース(2015年2月)「2014年の「酒類」輸出金額、3年連続で過去最高–清酒は5年連続で過去最高」御木本千春
- note Clear Inc.(2019年10月)「日本酒の市場規模はどれくらい? ─ 国内と海外双方の視点から」
- 食品産業新聞社ニュースWEB(2018年2月)「2017年の清酒の輸出は金額・数量共に過去最高、8年連続で過去最高更新」
- vivid(2020年12月)「シンガポールのお酒事情。ビールとワインが人気な市場で日本酒が奮闘!」
- 西日本新聞ニュース(2019年8月)「日本酒品評会、最高賞は福井産」