【脱・丸投げ輸出】なぜ「直接取引」で数年先の製造まで決まるのか?社員に利益を還元する「持続可能な海外戦略」|千代むすび酒造株式会社

創業から続く伝統を守りつつ、「鳥取から世界へ」をコンセプトに進化を続ける千代むすび酒造株式会社。本インタビューでは、日本酒の海外進出における成功の鍵は「事前の完璧な計画」ではなく、いかに「実践を通じて方法を探るか」にあるという岡空様の哲学に、COUXUとの対話から迫ります。語学力への不安を払拭するマインドセットから、製造と輸出の緻密な連携、そして社内モチベーションの向上まで、その具体的な背景と成功の秘訣を伺いました

この記事でわかること(要点)

  • 脱・「丸投げ」輸出。エンドユーザーの“消費”が見える「直接取引」が、継続的な商談を生む理由
  • 成功法は「やりながら創る」。語学力以上に問われる、自社製品への“誇り”と“熱量”
  • 海外展開の負担を「従業員のやりがい」へ。適正利益の還元で実現する、グローバル対応組織のモチベーション管理

千代むすび酒造株式会社
従業員数(2025年時点)
34名
事業内容
お酒の製造、小売業
海外の輸出状況(取材当時)
アジアや北米など数カ国に輸出

 

動画で全編を見る

インタビューの全編は下記の動画でご覧いただけます


インタビュー:エンドユーザーに近い企業との直接取引を重視する理由

Q. 岡空さんが直接取引を重視し、問屋に丸投げしない理由や背景について教えていただけますか?

A. 私たちもそれを否定するわけではありません。しかし理想としては、現地でどのように売られ、どのように飲まれているかを確認したいという思いがあります。 また、「今年一度出して終わり」ではなく、継続的な取引を望んでいます。そのため、今年だけでなく、来年、再来年の販売計画も取引先と協議や交渉がきるので、その量によって製造もコントロールできるのが大きいですね。

Q. なるほど。売るということは、作るということでもありますからね。そこの制度を高めていく為に、エンドユーザーに近い方と話す必要がありますね。

A. おっしゃる通りです。日本酒は簡単に増産できるものではなく、お米の作付けから仕入れ、製造までを逆算して計画する必要があります。 各国への年間輸出量を事前に決めることで、国内販売分との調整も可能になります。理想は、国内・海外それぞれの出口と量をある程度決めてから製造することですので、そういった長期的な交渉ができる相手を重視しています。


現在の展開状況と今後のエリア戦略

Q. 現在、展開されている国は何カ国ほどでしょうか?また、今後の構想についてもお聞かせください。

A. 今月もスイスとフィリピンへ新規進出し、現在は約25カ国に展開しています。 今後は、カントリーリスクの分散や各国の人口動態を考慮し、特定の地域に偏らず、満遍なく進出したいと考えています。これまでに実績のない南米、アフリカ辺りの展開も視野に入れています。

Q. 国が多い方が、会社としてのリスクヘッジになりますよね。

A. はい。ただ、いたずらに国数を増やすつもりはありません。既存のお客様との関係維持を最優先にしつつ、守りながら新規開拓を進めていく方針です。また、現在売れている市場でもライバルが増え、市場が成熟していくため、常に危機感を持ちながら新しい市場も開拓する必要があります。


海外取引における決済と物流の課題

Q. 海外特有の物流や決済、特に日本酒の品質管理について工夫されている点はありますか?

A. 決済に関しては、海外へは簡単に回収に行けないため、基本的には前金、あるいは半額前払いなどを条件とし、リスクを回避しています。 物流に関しては、特に暑い地域への輸出は品質劣化の懸念があります。基本的にはリーファーコンテナで送るのですが、現地到着後の流通体制(温度管理など)が担保できるかどうかが、出荷の前提条件となります。


社内の反応とモチベーション管理

Q.25カ国への展開は酒造メーカーでは珍しいケースだと思いますが、社内のメンバーや社員の方々の反応はいかがでしょうか?誇らしく感じていらっしゃるのでしょうか?

A. 個人差がありますね。営業部門や製造のコアメンバーは、海外経験者も多く誇りを感じてくれています。 一方で、商品作成担当者などは、国が増えることでラベルの多言語対応など業務量が増えるため、負担に感じる場合もあります。 ただ、海外展開によって商品に付加価値をつけ、適正な利益を確保することで、それを社員に還元する事で、従業員のモチベーションも向上し、喜んでもらえるようになってきています。


語学力への不安と「商品への誇り」

Q.「英語が話せないから不安だ」という理由で海外進出を躊躇している企業に対して、アドバイスをお願いします。

A. 語学は努力次第で話せるようになりますが、それよりも「自社の商品に対する想いや誇り」があるかどうかが重要です。 商品への愛情がなければ、いくら言葉が話せても伝わる内容は薄っぺらくなってしまいます。まずは自社製品に誇りを持つこと、それがあれば想いは必ず伝わると思います。


日本企業の海外進出と将来の展望

Q.最後に、今後の日本酒業界や日本企業の海外進出について、どのような未来を予想されていますか?

A. 今後はメーカーだけでなく、流通業への参入者が増えると思います。また、容器についても従来の重い瓶から、小瓶化やパウチ容器など、形が変わっていく可能性があります。 そして最も重要なのは、日本人自身が日本の伝統文化や製品に誇りを持つことです。まず自国の人が日本の良いものを再認識し、愛することが、世界へ発信するための基盤になります。私は日本酒に限らず、着物や和のスタイルなど、日本の伝統文化全体を世界に発信していきたいと考えています。


まとめ:25カ国展開を成し遂げた老舗酒蔵の勝因は、正解を探す前に動き出す「実践第一の行動力」

  •  ・間業者への「丸投げ」を脱し、エンドユーザーに近い現地パートナーと数年先の販売計画まで共有する、持続可能な関係性の構築
  •  ・完璧な準備よりも「やりながら方法を探る」柔軟な展開力と、海外進出の成果を社内に還元し、組織全体で挑戦を続ける体制づくり
  •  ・「語学力」以上に「自社製品への誇り」が最大の武器になる。作り手の情熱で言葉の壁を越え、プロダクトへの愛を直に届ける姿勢

COUXU社の見解

私たちCOUXUは、既存ルートに頼り現地の一次情報を失う企業を数多く見てきました。千代むすび酒造様が実践する「直接取引」をする理由は、海外事業に『継続性と拡張性』をもたらす理想の形です。原料の作付けから製造まで逆算する「売ることは作ること」の姿勢は、単発取引のリスクを回避する真髄と言えます。
また、岡空様の仰る通り、言語の壁を恐れる必要はありません。バイヤーを動かすのは流暢な英語ではなく「商品への圧倒的な想い」です。決済に関しても、前金決済や厳格な温度管理は、海外取引で自社を守るための重要な「型」となります。伝統を守りつつ、現地の声に合わせ柔軟にローカライズする姿勢こそが、販路を広げ続ける必要な条件でもあります。

 

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