Z世代は何を考えて何を買う? 推し活から見る“求めるコト”
「最近の子は物欲がない」「財布の紐が固い」「あまりお金を使わなくなった」…
テレビや新聞でこんなセリフを目にしたり、実際に思ったりすること、ありませんか?
昔とは価値観も考えも変わってきた今、Z世代は何を考えて何にお金を使っているのでしょうか。
まさにZ世代である大学生の私が、近年話題の“推し活”をもとに考察していきます!
Z世代がお金を使う“推し活”って?
勉強、食事、遊び、ファッション。
お金の使い道には様々なものが挙げられますが、今若い世代で最も重要視されているのは趣味、特に推し活です。
私たちZ世代の会話の中で、“推し”という単語を聞かない日はありません。
推しとは、芸能人などの中で自分が好きで応援している人を指します。
推しを応援する方法や意味合いはかつてとは大きく変わってきていて、コンサートに行ったりグッズを買ったりするだけが推し活ではないのです。
まずは推し活の具体例についてご紹介していきます。
- ・CDやグッズ購入
- ・コンサート鑑賞
- ・広告
- ・キッチンカー
- ・音楽や動画再生
- ・音楽番組への投票
- ・SNSチェック
- ・チャットアプリ
- ・ライブ配信参加
- ・本人不在の誕生日会
- ・グッズを持ってお出かけ
- ・イベントカフェ
推し活はジャンルによって多岐にわたるため、上記はあくまでも一部です。
Z世代は、どうしてこのような推し活にお金をかけるのでしょうか。
実際に韓国アイドルを推す私が、推し活を通して私たちが求めている4つのコトを考えてみました。
誰かの役に立つ
私たちがいつも推しからのパワーによって頑張れるように、恩返しとして私たちも推しにパワーを与えたいと思っています。推し活の一番の目的と言っても過言ではないでしょう。
推しにお金を使っていること自体本人の役に立っていると言えますが、最近ではその貢献度が目に見えてわかるようになってきました。ただグッズを買って満足するのではなく、こちら側から何かを与える機会が増えているのです。
日本にはなかなかない韓国の推し活として、広告やキッチンカーの差し入れが挙げられます。
いずれも決して安くはありませんが、駅前の大型広告で、街中の道路で、推しの撮影現場で、大勢の人や本人の目に届くような形で推し活できます。
運が良ければ、直接足を運んでこれらを見たアイドルがその感想や感謝を伝えてくれることもあるため、私たちは「推しの役に立てているんだ」と実感できます。
数字だけでなく、自分が応援しているんだという活動を社会や推し自身に認知してもらえる機会をもっても、推し活の意味づけとなっています。
余談ではありますが、お金を伴わずに支えている実感を得られる推し活もあります。
前述した推し活の例のうち、音楽や動画の再生は、見たいから、聞きたいから、という単純な理由だけで行われているのではありません。
例えば、韓国アイドルは新曲をリリースしたのち、特定期間毎日音楽番組に出演し続けます。
中には、CDの売上のみならず、ミュージックビデオの再生回数、SNSのハッシュタグ数、視聴者の投票といった複数の指標を点数化し、出演者同士で順位を競い合わせる番組もあります。
推しに1位をあげたいがために、CDの購入、動画の再生、SNSへの投稿、毎日の投票をファンは欠かさず行います。
順位という数字が出たとき、私たちは自分たちの貢献度具合を実感できるのです。
このような消費者に投票させる競争の仕組みは日本のコンテンツではあまり見かけませんが、直接推しの力になれる絶好の機会と言えます。
自分だけの価値を手に入れる
美味しいものを食べたり好きな服を着たり、といったお金の使い道は、当然全くなくなったというわけではありませんが、推し活を前にしてはその優先順位は下がってしまうかもしれません。
一方で、同じ美味しいものや好きな服にしても、そこに推しが関わることで購買意欲がぐんと上がるのは事実です。
SNSの普及によって、推しはより身近な存在になりました。
私の推しはとある女性韓国アイドルグループのメンバーなのですが、彼女たちは個人のSNSアカウントや、こちらからメッセージを送り会話できるチャンスがあるチャットアカウントも開設しています。
最新楽曲や番組出演の公式情報はもちろんですが、日常的な投稿や会話でも、推しのファッションスタイルや好きなもの、訪れた場所や食べたものと、得られる情報は多いのです。
自分の趣味でないファッションの小物や自分にとって当たり前のお菓子であっても、推しが投稿すれば特別なものになります。翌日には店舗やオンラインショップから消え去り、売り切れになっていることも多々あります。
推しが他言語を話していたり、熱中している趣味を持っていたりすることがわかれば、それらの勉強をし始める人も少なくありません。
推しの情報を得る機会が増えたことによって、今まで興味のなかったモノにまで視野が広がりました。
一見すると「なんでそこにお金を使うの?」と思われるかもしれませんが、推しと同じことができるだけで、「同じ気持ちになれる」「親近感が持てる」といった大きな価値があるのです。
自分が「価値がある」と思えば手に入れられ、手に入れようとしても咎められない時代になったのでしょう。
日常の質を上げ、心の健康を保つ
普段より良いものを食べる、高級な洋服を着る、といったように、日常に推しを取り込むことで、充実感をもたらし、心の健康を保つ目的もあると考えます。
例えば、ホテルやカラオケの一室を借りて、購入したケーキやグッズを持ち込んで誕生日を祝う本人不在の誕生日会もその一つです。友達の誕生日会のような日常に推しを取り込むことで、生活に彩りが出ます。
推しのグッズ、特に全身写真がプリントされたアクリルスタンドを出先に持って行き、一緒にお出かけしているような写真を撮影してSNSに投稿する人も増えてきました。
単なる思い出ではなく、推しと一緒にいる思い出を写真に残すことができるのです。
最近日本のアイドルやアニメ、ゲームキャラの推し活で流行しつつあるのが、推しのぬいぐるみ、通称ぬいです。
こちらもアクリルスタンドと同じように持ち歩いて写真を撮るのですが、デフォルメされたぬいの方が写真映えします。また、普通のぬいぐるみと同じように、愛着が湧きやすいことも人気の理由の一つでしょう。
グッズのようなモノももちろんですが、日常の中で推しを少しでも感じられるコトが私たちに必要なのです。
自分を表現する
少し前まで、何かに熱中するオタク、マニア、ファンといった存在は遠巻きに見られている印象でしたが、今は違います。
インターネットやSNSが当たり前の私たちZ世代は、目に見えないものや個を出すことに抵抗がなくなっています。
その結果、ファンの能動的で創造的なアイデアから、自分の「好き」を前面に出した新たな推し活が続々と生まれ、広まりを見せています。
推し活の様子や感想はSNSを通じて同じ仲間に共有し、気持ちを分かち合うことができます。
自身を発信する場は、オンラインだけではありません。韓国アイドルの推し活の中には、センイルカフェといって、アイドルの誕生日に合わせたイベントが開催されるカフェが各地でオープンされています。そうした場で他の仲間との交流もでき、自分自身のことも伝えるチャンスになりえます。
誰に決められているわけではなく、「私はこれが好きなんだ」「私はこういう人なんだ」と自分が自分でいられる。ある意味自己表現の手段でもあるのです。
終わりに
お金を使っていないように見えるZ世代が熱中する推し活。
その背景として、
- ・誰かの役に立つ
- ・自分だけの価値を手に入れる
- ・日常の質を上げ、心の健康を保つ
- ・自分を表現する
ことを求めているのではないかとお伝えしました。
従来の概念や価値観、周りの意見にとらわれず、「これだ」と感じたものにお金を使うからこそ、普通使うであろう場面で「お金を使わなくなった」と思われるようになったのだと考えます。
あるいは、お金ではない、時間といったものを使うようになり、「お金を使わなくなった」ように見られるのではないでしょうか。
決して何もかもに興味をなくしたのではなく、自分が求めるもっと他のモノ・コトに重きを置くようになったのです。
最近では、アイドルや芸能人、アニメのキャラクターといった私たちの手に届かないような推しだけでなく、身近な人を推しと言うこともあります。
近い将来、推し活の在り方や、推し活を通して求めるモノも、今とは異なった様子になるかもしれません。