奥が深いぞ!機械翻訳と人力翻訳の使い分け方とは?
2017年10月5日、Googleが新型インイヤーヘッドホン「Google Pixel Buds」を発表しました。
日本語を含む40ヶ国語に対応するリアルタイム翻訳機能が特徴です。
これにより言語の違う相手と容易に会話をすることが可能になります。
英会話教室に通ったり、〇〇こんにゃくを食べずとも、全世界の人々とコミュニケーションをとれる世の中が眼前に迫っていると言えます。
多くの日本企業にとっては「言語」という足枷が取り払われることによって、より海外展開をスムーズに行うことができるようになるのではないかと思います。
とはいえ海外ビジネスを進めていく中で、専門性の高い翻訳は未だに必要な分野と考えます。
今日は機械翻訳と人力翻訳の違いと専門翻訳について詳しく見ていこうと思います。
目次
■翻訳の種類
まずは翻訳にはどんな種類があるのでしょうか。
主な例をあげます。
① 実務翻訳
「産業翻訳」や「ビジネス翻訳」などとも呼ばれ、翻訳市場の中では9割ともいわれる最大の需要を占めている。
・医療(メディカル)翻訳
医学、薬学に関する文書の翻訳
・特許翻訳
出願用特許明細書、優先権証明書、公報、補正書、意見書などの翻訳
・金融翻訳
証券、銀行、保険などの分野で発生する文書の翻訳
・IT翻訳
コンピュータ、通信などの情報技術を扱う翻訳
・技術翻訳
電機、機械、自動車などの工業技術に関する翻訳
・環境翻訳
生物学的調査、気候問題、エネルギー開発、エコライフなどの分野に関する翻訳
② 出版翻訳
文芸翻訳とも呼ばれ、小説や絵本、雑誌やビジネス書まで、あらゆる出版物を翻訳すること
③ 映像翻訳
メディア翻訳とも呼ばれ、テレビのニュースやドキュメンタリー番組、映画などを翻訳して字幕にすること
(※アルク「翻訳・通訳のトビラ」より抜粋)
このように「翻訳」といっても様々な種類があるということがわかります。
また、日→英、英→日だけでなく、様々な言語から様々な言語への翻訳もあります。
おそらく、どの分野の翻訳においても、今後機械翻訳の精度が飛躍的に向上していくことは間違いないでしょう。
■機械翻訳の落とし穴
では、2017年現在、すべての翻訳を機械に頼ることはできるのでしょうか。
答えは「ノー」です。
いくらGoogle翻訳の精度が上がったからといって、そのチカラを過信するのは賢明ではないでしょう。
その理由はいくつかの事例をご覧いただければおわかりになるかと思います。
1, 「My right foot is sleeping.」
この文章をGoogle翻訳で英日翻訳すると、「私の右足は寝ている」となります。
正しくは「私の右足が痺れてしまった」と訳します。
これは、sleepという単語には「痺れる」という意味があるにもかかわらず、機械翻訳では正しく訳することができなかったためです。
2, 「I can’t help crying.」
この文章のGoogle翻訳は、「私は泣くのを助けることはできません。」です。
“cannot help ~ing” は「~することを避けることができない」という意味を表すため、「私は泣かずにいられない」などと訳するのが適当でしょう。
3, 「It is no use crying over spilt milk.」
こちらは本来は「覆水盆に返らず」ということわざの1つですが、Google翻訳で変換をすると、「流出したミルクを泣かせることはありません」という役になってしまいます。
ご覧の通り、精度が上がったGoogle翻訳でもまだ完璧に翻訳ができるわけではありません。すっかり信用しきってしまい、どんな場面でも機械翻訳に頼ってしまうと思わぬ失敗をしかねないので注意しましょう。
■機械翻訳と人力翻訳の使い分け
もちろん、機械翻訳がダメというわけではなく、シーンによって機械翻訳と人力翻訳を使い分けることが重要です。
以下、これから海外展開を目指す日本企業(英語に不安を抱えている)が海外企業に営業をするという場面を例に、機械翻訳と人力翻訳のどちらがふさわしいのかを見ていきましょう。
ケース1:海外企業に自社の製品をアピールするためのカタログやプライスリストを作りたい。
→「人力翻訳」
日本語の会社案内やカタログの中に、おかしな表現や誤字・脱字が無いように気をつけるのと同様にしっかりとしたものを作成するべきでしょう。
その他、動画やランディングページなどでアピールする際も、専門の会社などに依頼するのが賢明です。
ケース2:海外企業から英語でメールが届いたので、どんな内容か確認したい。
→「機械翻訳」
まずは機械翻訳で日本語訳してみましょう。
ある程度何を伝えようとしているのかは機械翻訳でも十分理解できるはずです。
もし、わからない文章や単語がある場合は、人力翻訳の助けを借りましょう。
ここで大事なことは、海外企業とやり取りをおこなう際は返信に時間をかけ過ぎないことです。せっかく興味を持ってくれている相手も、時間が経つと熱が冷めていってしまいますので、スピーディーな対応を心がけましょう。
ケース3:取引における契約書を作ってほしいと海外企業から頼まれた。
→「人力翻訳」
このケースは問答無用で人力翻訳ですね。
国内取引においても契約書の文言は一言一句間違いのないように何重にもチェックをするものですが、英語で契約書を作るとなれば尚更です。
必ず専門の会社に依頼をしましょう。
機械翻訳と人力翻訳の特徴を簡単にまとめると以下のようになります。
機械翻訳 人力翻訳
スピード ○ △
正確性 △ ○
コスト 低い 高い
それぞれの特徴を理解し、シーンに合わせて使い分けましょう。
最後に、人力翻訳をおこなう場合に気を付けるべきポイントを「日本翻訳連盟」のサイトの中から抜粋してご紹介いたします。
「バイリンガルなら翻訳もできるだろう」の落とし穴
プロの翻訳者は、本質的には「物書き」です。訳文といえど、読ませる力のある文章を書けてこそプロなのです。言語に堪能であるだけでなく、ふたつの言語を結ぶ架け橋として、原文のメッセージを読み取り、適切な文体と用語で母国語の文章に昇華させることができるのが翻訳者です。一方、バイリンガルとはふたつの言語を流暢に話せることですが、情報を一方の言語からもう一方の言語に変換する能力に優れているとは限りません。さらに、自称バイリンガルの人が自分のコミュニケーション能力を過大評価する傾向があるというのは、多くの人が認めるところです。
(※日本翻訳連盟「翻訳で失敗しないために」翻訳発注の手引きより抜粋
■まとめ
文章の翻訳の精度が上がり、音声のリアルタイム翻訳が可能になったいま、「ヒト」による翻訳はもはや不要になってしまっているのでしょうか。
機械翻訳と人力翻訳を組み合わせることによって、英語が苦手な方でも海外企業と商談をおこなうことが可能です。実際に私たちのお客様でその手法を使い海外展開をおこなっている企業がいらっしゃいます。
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