食べられるのは日本だけ? TKGが海外では食べられない!? そのワケとは
「TKG」と聞いて、すぐに「卵かけご飯」だとわかるあなたは、きっと筆者と同じTKG愛好家に違いないでしょう。
美味しさや手軽さだけでなく、ほくほくのご飯にとろっとした卵を落として醤油をかけて食べたり、卵を溶いてから入れたり、納豆を加えたり、ネギや海苔をかけたり、様々なアレンジができるのも魅力です。TKGという言葉が生まれたことからもわかるように、卵かけご飯を愛する日本人は多いです。
しかし、そんな究極の和食・卵かけご飯が、海外でも食べられているという印象はあまりないですよね。外国人の方々の卵かけご飯への「何この食べ物!?」というようなリアクション動画を目にしたこともあるのではないでしょうか。
今や世界中で食べることができるご飯に、全人類が食べてきた生卵を落とすだけの卵かけご飯が日本にしかないのは、きちんとした理由があるのです。
海外で卵かけご飯を食べない理由
“食べない”のではなく”食べられない”
それはずばり、サルモネラ菌です。
サルモネラ菌とは食中毒を起こす菌の1つで、食中毒の主な症状は悪心、嘔吐、腹痛、下痢、発熱等です。39℃以上の発熱が特徴で脱水症状を示す場合もあり、小児、老人の場合は重症で稀に死に至ることもあります(厚生労働省検疫所ホームページより)。
卵はサルモネラ菌による食中毒の主な原因であり、鶏卵にはサルモネラ菌が付着していることが多いのです。したがって、海外では卵を生で食べることは危険で卵は卵黄まで火を通すのが普通だと考えられており、生卵を使う卵かけご飯には抵抗があるのです。
確率は高くはないですが、実際に海外で生卵を食べることで食中毒を起こすことはあります。
では、なぜ他の生の食材には付着していないサルモネラ菌が卵には付着しているのでしょうか。
サルモネラ菌が卵に付着するのはなぜ?
サルモネラ菌が卵に付着する理由についてお伝えする前に、みなさんに質問です。
卵はどこから出てくるか知っていますか?
正解は「お尻の穴から」なんです。
これを聞いて驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
すべての卵は母親の肛門から排出されています。
厳密には、多くの生物は直腸、排尿口、生殖口を兼ねており、その器官を総排出口と言います。
母鶏の胃や腸を通るというわけではありませんが、そこまでは別のルートで、最後の総排出口の付近で合流し、最後は糞尿が通ったところと同じところを通って排出されるのです。これで菌が付着しているのも納得ですね。
卵の汚染には、鶏の消化管等に存在する菌が糞便と一緒に卵殻表面に付着するon egg汚染と、感染している鶏の卵巣や卵管が汚染され卵の形成過程で内部に取り込まれるin egg汚染の二つがあります。このどちらか、もしくは両方によってサルモネラ菌が鶏卵に付着するのです。
日本で生卵が食べられるのは…
ここまで聞くと「じゃあ本当は日本でも食べられないのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。
安心してください、食べられます。
海外とは異なり、日本では卵を生で食べることを前提とし、衛生面に十分に配慮した鶏卵の生産・管理・輸送システムが整っています。
日本での鶏卵の一般的な流通経路では、パックに詰められる前に次亜塩素酸ナトリウム溶液の消毒液で卵の外側の洗浄・殺菌がされています。
また、養鶏場において抗生物質を投与するなど、親鶏がサルモネラ菌に感染しないようにする十分な取り組みがなされており、on egg汚染とin egg汚染、どちらも除去されます。
さらに、卵の配送は基本的にチルド配送で行われており、賞味期限も「生で食べる場合」のもので短めとなっているので、生卵を食べたとしても食中毒を心配する必要はほとんどなく、安心して生卵を食べることができています。
日本の卵の賞味期限が短く、海外では賞味期限が非常に長いのはそれが理由です。
最近では海外進出も!?
海外の一部の国でも、きちんと消毒が行われた卵を生で食べられる機会が増えてきました。
アメリカでは、Pasteurized EggsまたはPasteurized Shell Eggsとして殺菌済の卵が売られていることがあるそうです。
イギリスでも、卵の生産方法や衛生状態の改善によって、2017年10月より品質保証の赤い「ブリティッシュ・ライオンマーク」がついた卵は誰でも生で食べても大丈夫だという基準に変更されました。
近年、特に卵かけご飯が話題なのは香港です。
日本からの卵はほとんどが香港へと輸出されているほど人気なのですが、その食べ方として卵かけご飯の認知度も高まってきているのです。
テレ朝news(https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000302394.html)によると、香港で数店舗展開する卵料理専門店の「たまご園」がブームの火付け役だと言われています。卵焼きや親子丼の他に、白身がメレンゲ状になったふわふわの卵かけご飯が大人気なんだそうです。
海外では生卵を食べる習慣がないゆえに、いざ食べたとしてもそのドロッとした食感や独特の味が得意ではない人が多くいます。たまご園の卵かけご飯はふわふわの食感でその点を見事解消しており、「生卵は美味しいものだ」と発見してもらうきっかけとなったのです。
メニューだけでなく、店舗も日本らしさを残しつつかわいらしい雰囲気ですので、ぜひホームページをチェックしてみてください。
まとめ
このように、サルモネラ菌が原因で、卵かけご飯は日本や一部の限られた国でしか食べることができません。
食べ慣れていて「生卵」という概念や食感に抵抗がないのももちろんですが、卵かけご飯に欠かせない白いご飯や香ばしい醤油、それに合う食材が十分に堪能できるのがやはり日本であるというのも、卵かけご飯という日本文化を支える大きな要因になっていると考えられます。
しかし、最近では生卵を安全に食べることができるようになったり、日本産食材を積極的に取り入れて提供する海外店舗が増えたりしている国もあるため、日本の誇る卵かけご飯が今以上に世界中で食べられ愛される日も近いかもしれません。