シャープ人材流出相次ぐ。鴻海傘下での再建に不安か

シャープ人材流出相次ぐ。鴻海傘下での再建に不安か

2016年4月2日台湾の鴻海によりシャープの買収が決定し、世界的に注目を集めました。日本を牽引してきた大手企業の買収にショックがあった人もいたのではないでしょうか。買収後、シャープ内でのドタバタが様々なメディアで報道され、特に人材の異動が注目されています。

シャープの現状

まずシャープの現状の振り返りからざっくりとしてみましょう。

シャープは1912年ベルトのバックル製造業から初め、1925年以降家電メーカーとして事業を広げてきました。2001年以降は液晶テレビの時代を「AQUOS」で築き、世界的に有名な企業へとなりました。2012年で創業100年目を迎えた歴史あるシャープですが、2016年3月期に液晶事業などの不振で2年連続の巨額赤字を計上、連結債務超過に陥りました。この経営危機を迎えたことにより、2016年3月に台湾の鴻海がシャープ買収を発表。現在再建に尽力しているものの、様々な大きな課題に直面しています。

シャープが台湾の鴻海に買収された流れ

鴻海とは「鴻海精密工業」が正式名称であり、電子機器受託製造(EMS)を得意とする台湾の工業メーカーです。EMSとは、自社のブランドで商品の生産・展開・販売をおこなうのではなく、他社から依頼を受け、製品の生産のみを担当する仕組みです。鴻海の売上高は日本円にして約15兆円を誇っており、今回シャープを3888億円の値段で買収しました。
鴻海の主力となっているのが、液晶パネルの製造事業です。スマートフォンやパソコンの流通が加速するにあたって、高精度の液晶パネルの需要は増加傾向にあります。しかし、サムスンなど他社との競合が激化しつつあり、鴻海にとって液晶パネルの精度を上げるのはとりわけ大きな課題となっていました。そこに、高い液晶生産技術を持ったシャープの経営危機の話が舞い込みます。液晶事業を強化したかった鴻海精密工業にとって、シャープこそまさに必要としていたエネルギーだったのです。

シャープの経営危機の原因

シャープの経営危機にはいくつかの原因がありました。まずは経営赤字と借金です。
シャープはスマートフォン市場に伸び悩み、主力の液晶事業の採算悪化が目立ちました。2016年の3月期決算では営業損益が1629億円の赤字となり、減損などで670億円の特別損失を計上しています。
次に市場トレンドの読み間違いも大きな要因となりました。液晶事業で名を馳せてきたシャープですが、堺市に約4000億円を投じて建設した第10世代液晶パネルの工場が経営不振に陥り市場悪化で不採算となりました。さらに今後世界的な太陽電池ブームを想定したシャープでしたが、 コア素材であるシリコンの長期調達契約を高値で締結したあとに、シリコンと太陽電池の両方の需給が急落してしまい、失敗となりました。

度重なる経営危機が明らかになった以上、シャープ自社の再建策が検討・実施されました。
しかし経営幹部間の意志の不統一、メインバンクの監督不全や鴻海などの支援企業との交渉が不調となったことにより、事業再編、資産整理の遅れなどが発生してしまい破たんを回避できなくなってしまったのです。

ですが、シャープの身売りには企業上有利と見られる点があります。鴻海の支援により、企業破たんを回避し事業継続や顧客や人材、ブランドや技術などの維持を図れるメリットがあります。またグローバル企業として発展する鴻海のもとで再成長するチャンスも臨めます。

そして買収条件もシャープには魅力的な形でした。事業解体・業界再編・銀行債権放棄・経営者総退陣などを求める、産業革新機構からの買収提案に比べ、鴻海の買収条件は、国際水平分業・大部分の事業存続・雇用の確保・銀行債権の維持・経営陣の残留など有利に写ったのが今回の買収に至った経緯です。

シャープの人材転職が増加

台湾の鴻海で再建を目指すシャープでかつての優秀な経営幹部が相次いで他社に転職しています。 液晶事業を推進してきた方志教和(ほうしのりかず)元専務執行役員(63)は2016年7月1日付で、競合する液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)の副社長に就任。また、昨年12月に電子部品メーカーに転職したものの、7月1日付でシャープに戻った中山藤一専務執行役員(62)もいます。

一方日本電産には、シャープを成長させたものの“液晶一辺倒”の巨額投資で危機を招いた片山幹雄元社長(58)が移っています。片山氏は、代表取締役副会長という好待遇で迎えられました。財務部門のトップだった大西徹夫元副社長(62)も同社に移っています。日本電産の永守重信会長兼社長(71)は引き抜きを否定してはいますが、シャープから300人規模の退職者受け入れを表明しているという現状があります。このように鴻海傘下での再建の不安に駆られる社員の流出はまだまだ続くと考えられるでしょう。

このような事態に対し、台湾北部・新北市の鴻海本社で2016年6月22日に開かれた株主総会で、郭台銘(英語名:テリー・ゴウ)会長は、「退職した人材は『流出』したのではなく、シャープの液晶事業をダメにしたので、敵陣にいったのは良かった」と話していますが事実、優秀な人材が他社に流れて行ってしまっていくのを黙って見ていられない株主達の反論が膨れています。そのため若手社員の育成にも意欲的に取り組み、再建を目指すために株主の懸念を払拭することに懸命です。

鴻海傘下での再建を目指すシャープ

鴻海は、国内外で7千人程度の人員削減や海外拠点を整理する可能性があることを認めています。シャープ再建に向けて人件費を抑えることでコストを下げることも必要とはいえ、優秀な人材を引き止めることも簡単にはいかないことでしょう。シャープの元幹部や重要なポストに就いていた人材が競合他社に移っていることからも見受けられますが、国内の大手電機メーカーは「鴻海傘下でのシャープから優秀な人材を獲得することも視野に入れているはずだ」、と株主から声が挙がっているのも実情です。

まとめ

人材流出が加速しているシャープですが、鴻海が示すとおり若手人材の育成を強化していくこと、またすでに抱えている優秀な人材が他社に引き抜かれないように待遇を見直すなど今後の課題は山積みのようです。日本を代表する企業なだけに目の付け所をシャープに頑張っていってほしい。

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