世界ぐるみの財産隠し・租税回避。『パナマ文書』を忘れるな
『パナマ文書』を覚えていますか?
日本ではほとんど公開されることがなかった世界規模の大スキャンダルが忘れ去られようとしています。
世界的な富裕層・大企業の財産隠しや租税回避の中には日本企業も多数見受けられました。
日本の富裕層や日本企業の租税回避することにより真っ当に税金を収めている日本国民や経済にどのような影響があるかご存じでしょうか?
日本では本格的に公開されなかった「パナマ文書」のリストは全て脱税者なのです。
それを日本国民は知る権利があります。むしろ知らなければなりません。
目次
大スキャンダル”パナマ文書”とは
出典:http://hbol.jp/
パナマ文書とは、中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」からハッキングにより流出した内部文書のことです。
その中身は富裕層や企業の世界的な財産隠し・租税回避の情報で、1977年〜2015年にかけて作成された1,150万点の電子メールや文書類が明るみになりました。
21万あまりの法人の情報のなかには、10カ国の現旧指導者12人、現旧指導者の親族ら61人の関係する会社も含まれており、芸能人やスポーツ選手といった著名人の関係する会社もあります。
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が情報を入手し、朝日新聞をはじめとする各国の定型報道機関が報道をしました。
パナマ文書流出までの流れ
パナマ文書の流出は、中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の共同創立社の一人でドイツ出身の弁護士、ユルゲン・モサック氏によって行われました。
ユルゲン・モサック氏は1960年代初めに父親に連れられてパナマに移り住み、政界に太い人脈を持つパナマ人弁護士のラモン・フォンセカ氏と知り合い互いの法律事務所を統合して、モサック・フォンセカを設立しました。今では事務所が世界に40支店以上、500人以上の従業員を抱えるまでに成長しました。
若いころは聖職者に憧れ、世界の救済を目指してスイスのジュネーブにある国連欧州本部で働いた経験も持っています。
しかし2008年のテレビ取材では
「なにも変えられなかった。もっと現実的な道を歩むと決めた」
と語っています。
そして犯罪を公にしたいという思いで2014年に南ドイツ新聞の記者に匿名で連絡をし、データ送信をしました。
南ドイツ新聞はその後ICIJにデータ調査を依頼しパナマ文書公開に至ったというわけです。
富裕層や企業の”世界的な財産隠し・租税回避”
出典:http://gigazine.net/
今回の事件を理解するには、まずタックスヘイブン(租税回避地)について知っておく必要があります。
所得に対して税金を納めるのは当然のことですが、もし納税をしなかった場合は脱税として国から追徴課税などのペナルティを受けることになっています。
これは日本のみならず、世界の大半の国で定められています。
しかし、ごく一部の国では所得税や法人税がない国が存在し、
これらの国を“タックスヘイブン”と呼ぶのです。
例えばケイマン諸島は人口4万人ほどの非常に小さい国ですが、税金がまったくかからないことで知られています。
そこに目をつけたのが”巨額の税金支出を抑えたい海外の大企業や富裕層“です。
タックスヘイブンは小さな国ゆえに税金がかからないことが成り立つのですが、海外の企業がそこで仕事をつくり税金を抑えるのは無理があります。
そのために実質は稼働していないペーパーカンパニー(関連会社では税金逃れに不利になるので、自社と関係のない会社や団体に見せかけます)を設立し、
そこへ送金することによってまったく関係のない会社への支出という名目で資金をプールさせる手法を編み出したのです。
このように”富裕層や企業が脱税をすることで、本国には実際よりも少ない金額を納税すること“になります。
すると政府は”財政赤字を抱え、国民や一般企業は増税を余儀なくされる“のです。そこから徴収した税金を財政補助に充てるために、富裕層と一般層の格差はますます大きなものになっていきます。
しかし政府がタックスヘイブンを調査するには情報の壁があり、これまでは不透明な部分が非常に多くありました。
パナマ文書を提供したモサック氏は発表し、「超富裕層の腐敗が資本主義を崩壊させ、革命を引き起こす可能性がある」と論じています。
全世界の富裕層がタックスヘイブンに持つ未申告資産は21兆ドル=2,200兆円以上といわれ、パナマ文書では世界的企業のアップル社、スターバックス社などが列挙されています。
日本の企業は存在したのか?
パナマ文書に記されている日本人は約230人、日本企業は約20社が存在します。
なかでもITなどのベンチャー企業の元、現社長や役員が目立ち、投資家や投資コンサルタントに加え、飲食チェーンや不動産などの実業家、公認会計士、税理士、個人経営の病院長や歯科医院長などの医療関係者や大学教授も名を連ねているという実態です。
2016年の3月29日の参議院予算委員会で共産党の小池晃議員が発言したものでは、日本の富豪上位40人が保有する資産の総額は2015年に15.9兆円にのぼるとされており、続けて上位40人が持つ資産はアベノミクスが実行されたこの3年間で、2.2倍に急増していることが明かされました。
“日本の大企業や富裕層はケイマン諸島でのタックスヘイブンで世界第2位 おおよそ55兆円の巨額な税逃れをし、庶民には消費税増税と社会保障削減が押し付けられるという現在の状況は日本が超格差社会に突入したことを示しています。”
タックスヘイブンの資金流出約55兆円があれば、小中大の教育費無料2兆7,9000億円、消費税撤廃17兆1,120億円、所得税撤廃16兆4,400億円、また保育園もたくさん建設することができる計算になります。
しかしこのような大スキャンダルにもかかわらず、なぜか日本では話題に上がりません。
それはパナマ文書により公開された大企業の多くは、圧力により情報が公開されないよう制限をかけているからです。
一方で議員はタックスヘイブンを利用している企業から多額の政治献金をもらっているために、極力触れないように振舞っています。
パナマ文書により消費税を完全撤廃できることが明るみなってしまうので、いま議員たちが推し進めている増税が間違っていることを認めることになり、ネガティブなイメージがつかないようにしているのです。
今後パナマ文書事件はどうなっていくのか
一部の富裕者、大企業が現在世界的にタックスヘイブンに制限をかけようという動きが出てきています。
日本の富裕者、大企業が政治や経済に及ぼす影響は大きいものと考えられますが、このような動きに日本だけが取り残されていくことがあれば恥じるべきといえるでしょう。
まとめ
格差社会が深刻化すると、やがて庶民からの反発が高まり資本主義経済が破壊さでる可能性があります。パナマ文書の発覚はまだ氷山の一角にしか過ぎません。
できるだけ平等な社会を目指すためにも、情報公開と財産隠しの取り締まりを強めていく必要があります。