世界一の老舗企業数 なぜ日本企業は長寿なのか

世界一の老舗企業数 なぜ日本企業は長寿なのか

世界中のどこを見渡しても、日本ほど長寿企業が多い国は他にありません。
日系BPコンサルティング・周年事業ラボの調査(※)によると、2022年時点で創業100年以上の企業数は世界1位のおよそ37,000社だといいます。
さらに老舗の創業200年以上となると、2位のアメリカの約5倍にもあたる1,300社以上と、ずば抜けた企業数を誇ります。
世界で100年以上の歴史を持つ企業の半数が日本にあるのですが、なぜ日本にはこれだけ長寿企業が集中したのか、他の国との違いはどこにあるのでしょうか。
そして、100年以上にわたって生き残る企業は、どのようにして時代の変化を乗り越えてきたのでしょうか。

長寿企業の国ニッポン、海外と何が違う?

他の国と比べたとき、その理由が見えてきます。
ここでは、地理・歴史的な側面と国民性・企業文化に焦点を当てて考えてみます。

1.地理・歴史的側面

まず、日本は島国であるという点で、陸続きのために国家間の人やモノの移動が簡単なヨーロッパ諸国などと地理的な違いがあります。
また、歴史的にも他国との接触を避けた時期があり、外からの移民が少ない国でもあるのです。
つまり、他国との競争ではなく、自国の企業がサービスやモノを提供することで社会が成り立ってきたのが、日本という国だと言えます。

2.国民性・企業文化

「お客様は神様」という言葉もあるように、顧客第一の文化が日本企業にはあります。
特にその意識が表立ってわかる接客・サービス業は、海外の方から感動や驚きの反応をしてもらえることが多いですよね。
他の業界においても、例えばミーティングやメールでのやり取りなど、日々の業務でいかに目の前のクライアントを大切にしているかはみなさんも実感できるかと思います。

同様の国民性から成る企業文化として、年功序列・終身雇用制度が挙げられるでしょう。
今まで多くの国民が、入社し一つの企業に長く勤めることが仕事の意義だと考えてきました。
利益を上げるよりも客から愛されることを目指し、培ってきた伝統を下の世代へと継承し、社員も一企業に身を尽くす。
このような企業文化と国民性は、長寿企業が日本に集中している大きな理由でしょう。

しかし、「お客様は神様」の精神が批判的に捉えられる場合もあり顧客第一の在り方が変化してきたり、年功序列・終身雇用制度も崩壊しつつあったりと、ここ数年の移り変わりのスピードは今まで以上だと言っても過言ではありません。
これからも老舗として続けていく企業、そしてこれから立ち上がっていく企業は、どのようにして生き抜いていくべきなのでしょうか。

時代の変化を生き延びる企業とは

日本という国は、地理・歴史的に他国からの影響が少なく、“顧客第一”の企業文化、生涯一つの会社に勤めることを美徳とする国民性といった、他国と比べて企業が長続きしやすい社会を築いてきました。
こうした土台を基に、企業が長続きするために何よりも不可欠なポイントは、常に革新を心掛けること、そして中心の軸となる事業の目的や企業のビジョンが明確であることです。

グローバル化が進み、多くの海外企業が日本に進出し、反対に世界へと市場を拡大する日本企業も増え続けています。
さらにこれからは、テクノロジーが急速に進歩し、今まで以上に変化の激しい時代になっていくのは避けようのない事実です。
長続きする企業やビジネスのあり方も変わっていくでしょう。

“不確実性が極度に高いときは、事業環境の変化を待ってから行動を起こす「受け身の戦略」は機能しない。
むしろみずからが積極的に市場を形づくり、他社を寄せつけない革新を起こすことでこそ高いリターンが得られる”
『[新版]ブルー・オーシャン戦略』(ダイヤモンド社)

つまり、100年以上生き延びてきた日本の長寿企業も、変化の時代である現代においてはさらなる変革の意識が必要だということです。

また、変革や革新を起こすにあたって重要となるのは、各企業にしかない軸です。
近年「パーパス経営」というワードが注目されている通り、今まさにその軸の明確化や再定義が重要視されています。
企業は、社会に必要とされ、社会に貢献してはじめて企業として存在できています。
なぜなら、利益をはじめとしたカネや従業員といったヒト、方針を固めるための情報は、企業を信頼し必要としているすべての顧客、社会から提供されているからです。
事業の目的やビジョンが不明確などっちつかずの経営は、こうした社会からの信頼がなくなり、変化や競争にも負けていきます。

現存する日本の老舗企業も、時には時代の変化に適応しながら、その企業の目的やビジョンに沿った価値を提供してきたからこそ長年人々に支持されているのです。

まとめ

発展途上国の急成長、隣国の高度経済成長の圧力により、新興国日本に住む私たちが舌を巻く機会も多くなってきていると思います。
加えてテクノロジーの発展や文化の変化によって、ツールやアプローチの選択肢が増えたり、一方で従来の方法では通用しなかったり、といったことも増えてきました。
グローバル化の中で、どこまで日本の伝統と自らの軸をぶらさず、同時に、生き残りに必要な改革のタイミングを逃さず柔軟に対応できるか。
先を見通すのが難しい時代だからこそ、こだわり柔軟さのバランスが求められるのではないでしょうか。

【参考文献】
※周年事業ラボ, 「世界の長寿企業ランキング。創業100年企業、日本企業が50%を占める」, 2022年10月20日更新, https://consult.nikkeibp.co.jp/shunenjigyo-labo/survey_data/I1-06/

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