日本はもう”貿易立国”ではない。輸出依存型から内需依存型へ
日本は「貿易立国」として成り立ってきましたが、実はそうではなくなってきていることをご存知でしょうか?日本の輸出依存度や経済状況から紐解いていきます。
貿易立国とは
貿易立国とは、資源の乏しい国が外国から原油や鉱石などの鉱産物、また原材料などを輸入し国内で加工、製品を輸出して得た利益で国の経済を維持することです。日本は今までに「加工貿易」を得意としてきました。
*加工貿易とは、原材料や半製品を他国から輸入し、それを加工してできた製品や半製品を輸出する貿易の形態
貿易立国と呼ばれる代表的な国は?
貿易立国と呼ばれる代表的な国はその国の輸出依存度を見ることで把握することができます。この依存度は国民ひとりあたりの国内総生産(GDP)または国民所得に対する輸出入額の比率のことを指します。一般的にGDPが小さい国であるほど、輸出依存度が大きいといわれています。2014年の財務省貿易統計「名目GDP-世界のネタ帳、輸出額」によると、輸出依存度上位5国は以下です。
・オランダ……66%
・台湾………58.8%
・アイルランド…57.8%
・スイス………45.7%
・韓国…………43.9%
日本は貿易立国なの?
日本経済はどれくらい輸出に依存している経済状況なのでしょうか。同データによると日本の輸出依存度は、15.2%。対して輸出依存度トップといわれるオランダは66.0%となり、その差は50%近くあります。「日本は貿易立国であり、内需の不足を輸出によっておぎなっている(=輸出依存型経済)」と呼ばれることがありますが、実際には内需依存型の経済です。
・輸出依存型経済……自国の市場だけですべての産業を自給自足的に成立させることが難しく、国外市場への輸出や国外供給地からの輸入に頼らざるを得ない経済状況のこと。一般的にはGDPが小さい国に多い経済パターン。
・内需依存型経済……輸出依存型経済と逆に、自国の市場の中で産業を自給自足できる経済状況のこと。日本では高度成長期時代に内需依存型経済の代表的な傾向が見られた。
日本は輸出依存型というよりも内需依存型に移行?
以前、日本は輸出依存型経済と呼ばれていましたが、あるきっかけで内需型経済へ転換したといわれています。それは1980年代の米国との貿易摩擦です。貿易摩擦とは、輸出と輸入のバランスが悪くなることで、経済的な問題が発生することです。輸出できる製品を多く持つ国は輸入する国から多くの金額を得ることができますが、輸出できる製品を少ししか持たない国はお金が出て行く一方となります。日本と米国の貿易摩擦はそれ以前から発生しており、当時の輸出状況では1960年代後半は繊維製品、1970年代では鉄鋼製品、1980年代では電化製品と自動車が米国から問題視をされていました。
この貿易摩擦は1980年代にピークを迎え、米国からは「日本の内需拡大と市場開放」を強く訴えられました。そのために、牛肉やオレンジなどの輸入数量制限を撤廃したり、日本メーカーが米国に工場を設立し現地生産をする方法で、日米貿易摩擦が収束をしたのです。1980年以降の日本の輸出依存度の推移は以下です。
出典:世界のネタ帳、輸出額-財務省貿易統計
1980年代半ばから輸出依存度が低くなっていますが、1980年代前半も15%を下回っている状態でした。これは2014年よりも輸出依存度が低いということです。一見して日本は米国との貿易摩擦により、輸出依存型から内需依存型に以降したと思われがちですが、実際にはもともと輸出依存型ではなく、内需依存型の構造になっていたことを示します。
今後の日本の貿易状況の変化
しばしば「貿易立国」と呼ばれる日本ですが、実際には世界的に見るところ輸出依存型ではなく、長期にわたり内需依存型の経済を維持してきました。しかし、1980年以降の日本人の消費性の傾向は年々変化しつつあり、国内市場のみを意識して産業を発展させていくことは難しいといえるでしょう。またこのような日本の内需依存型経済は、ある見方では鎖国や社会主義経済を意味することともいえるので、現在の国際情勢を意識したバランスの良い経済を見いだしていくことが必要といえるでしょう。
まとめ
高度成長期以降、日本産の優れた製品は海外で高く評価されてきました。しかし1980年代の貿易摩擦以降、特に近年では電化製品など外国製の優れた製品が日本でも人気を集めていることからみても、日本の内需依存型経済が転機を迎えるときはそう遠くはないでしょう。