全ての人に伝えたい 今本当に必要とされるグローバル人材の定義とは

全ての人に伝えたい 今本当に必要とされるグローバル人材の定義とは

グローバルという言葉が当たり前になった時代。
新しいビジネスモデルの創出が求められるようになり、激化している国際的な企業間競争に打ち勝つことが日本企業にとって重要な課題となってきました。
日本という一つの国として、所属する企業として、そしてそこで働く一人の人間として、これからの時代をどのように生き残っていけば良いのでしょうか。

今回はそのヒントになるような、グローバル人材の辞書的な定義から、著名人の考え方までまとめてみました。
グローバルビジネスを志す方、海外赴任を目指す方、企業の採用担当者の方、学生の方など、今後世界で活躍するすべての方々必見の記事ですので、ぜひご覧ください。

グローバル人材の定義

グローバル人材には様々な定義があり、絶対唯一のグローバル人材の定義を挙げるのは難しいです。
その中でも今回は、2012年に国家戦略室グローバル人材育成推進会議で取りまとめられた定義に沿って話を進めていきます。

これによると、グローバル人材のは以下の3つの要素によって成り立つものとされています。

1. 語学力・コミュニケーション能力
2. 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
3. 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンディティー

そもそもコミュニケーションを取るために必要な語学力だけでなく、環境を問わず仕事に取り組んでいく主体性といったマインドや、それを活かすための異文化・自国の理解力が、世界で活躍する人材に必要なのです。
それぞれを細かく見ていきましょう。

語学力・コミュニケーション能力

評価基準がある程度一定であることから、最も身に着けやすい要素と言えます。
政府の考える、語学力を基準としたグローバル人材の能力水準の目安は、5段階に分けて以下の通りになります。

①海外旅行会話レベル
②日常生活会話レベル
③業務上の文書・会話レベル
④二者間折衝・交渉レベル
⑤多数者間折衝・交渉レベル

①②③については、学校教育や、国際化意識の高まりによる個人の自己研鑚もあって達成できている方も多くいらっしゃいます。
しかしながら、将来を見越すと④と⑤ができる人材は不足している状況にあります。
トップエリート層であればこのような人材も多く、今までは彼らが海外進出の急先鋒を担ってきましたが、今後、大企業・中小企業関係なく海外での複雑なオペレーションの拡大が予想されることを鑑みると、この人材層の需要はさらに高まっていくものと予想されます。

折衝や交渉のスキルについては、個人での研鑽が難しい上に、実務経験が生きてくる分野です。
そうなると教育側、あるいは企業側で訓練の機会を提供することが必要となりますが、個人や各組織の負担とコストを鑑みると、簡単にサポートできるような現状ではありません。
政府も課題感を持っているようで、各省庁から大学教育・企業研修に関する改善案が出されています。
特に企業に関する部分では、以下のようなものがあります。

・海外インターシップやワーキングホリデーなどの就労経験を有する若年者の国内での就職を助けるため、渡航前から帰国後まで一貫したキャリア形成支援の体制を整備する
・企業や研究機関内部で、若手社員が海外経験を積むことを推奨する
・中小企業社員に関し、研修の共同実施や海外研修の機会の提供等を促進する

このように発表されている改善案については、将来的に補助金や助成金といった形での、具体的なバックアップが提供される可能性があります。
極力、公的な支援を活用することで、自社内での人材育成も余裕が出来るかもしれません。

主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感

主体性

新日鉄の三村明夫会長は、グローバル人材を「海外展開の際、そこに派遣され、日本とは異なる文化で育った多様な人たちとの交流を通じて、業務をしっかり遂行できる人材」と定義しています。

海外企業が日本人とのビジネスにおける不満点は、意思決定が遅いことです。
例えば海外企業からよく聞くのは、以下のようなお話です。

「日本人と中国人、同じような提案を持ってきたとして、こちらが踏み込んだ質問や、値下げの交渉を提案したとする。
中国人はその場ですぐに決めるが、日本人は『本社に確認するが、時差の関係で今すぐ連絡が取れないので、明日まで待って欲しい』と言う。
だから中国人の方に決める」

日本的なペースで動いていると海外でのビジネスのスピード感についていけません。
ビジネスマン個々人が少し過剰なまでに前に出る姿勢も重要ですし、業務をしっかり遂行できるよう、会社側からはそのような人物に大きい裁量を与えるべきでしょう。

積極性

ジャーナリストの池上彰氏は、グローバル人材を「世界に通用する人間であると同時に、日本の良さも自覚した上で働くことのできる人材」とし、それには「日本について客観的な目を持つことに加え、自分とは違う物の見方や考え方をする人がいるという多様性を常に意識することが大切」と話しています。

慣れ親しんだ日本文化から抜け出し、欧米文化、あるいはアジアや中東の文化に接するとなると、習慣、宗教、気候、人々の気質など様々な違いを感じることになります。
海外では、善意の場合や悪意の場合がありますが、「納期が間に合わない」「品質水準が満たされない」などの非常に多くのトラブルが起こり得ます。
この対策としては、自分の力だけで情報を収集し、そうして担保した信用や信頼、人間関係を基にビジネスを行うことが重要となります。
日本国内で自社が培ってきたノウハウや商習慣が使えないことを念頭に置いて、困難な状況を打開するだけの積極性・行動力を持つ人間が求められているのです。

異文化に対する理解と日本人としてのアイデンディティー

異文化理解と一言に言っても、少しぼやけたイメージかもしれません。
そこで今回は、異文化理解に欠かせないコミュニケーションの手法と柔軟性の二つについて述べていきます。

コミュニケーションの手法

日産自動車の高橋雄介執行役員が考えるグローバル人材の定義は、「異なった意見や考え方を理解できる多様性があり、共通の言語やプロセス(手順)、ツール(手段)で仕事をこなし、成果を上げられる人材」です。

日本人は、「行間を読む」「察する」能力を日頃から無意識に使って・使われて生きているので、はっきりと自分の意見を言わない文化がありますよね。
対して外国人は、欧米であれ東南アジアであれ、自分の意見を発信することの重要さを教育されている場合がほとんどです。

全く異なるバックグラウンドの者同士、「最初は理解できなくて当然」「考えが合わなくて当然」と割りきって意見をぶつけあうことで、初めてお互いの考えを理解するに至ります。
意見のぶつけ合いというのも重要ですし、話をするときはなるべく論理的に、細かい部分まですり合わせるようにしましょう。
あやふやなまま進めてトラブルになるよりも、事前にしっかり土台を固めておくことで盤石の体制を作ることができます。

柔軟性

あまり保守的にならずに異文化を受け入れるようにしましょう。
池上彰氏と日経ビジネス編集委員の山川龍雄氏の対談では、「日本を起点にして物事を考えるのではなく、地球規模で広く物事を考えるという視点がグローバル人材の一つの要素」とも言及されていました。
商品開発を例にとると、「日本は均質国家と呼ばれ、高品質な商品を提供するという良い面もあるが、海外に行くと『郷に入れば郷に従え』の気持ちになかなかなれず、『日本はこうだから、現地もこうあるべき』という発想で取り組むことが多い。そういった考え方を崩すことがグローバル人材とは何かに関わってくる」と考えていらっしゃるそうです。

例えば、現地の労働者が思い通りに働かなかったとしたら、こちらの価値観だけに基づく一方的な改善案を突き付けるのではなく、彼らのバックグラウンドや習慣を理解した上で、より生産性が上がるような話し合いの場を持てるようにしましょう。

柔軟性とは少し違うかもしれませんが、海外でよく仕事をする方はこう仰っていました。

「ビジネスの場では英語を使うにしても、現地語で『こんにちは』『ありがとう』『乾杯』『また会いましょう』くらいは言えるようになっておいた方がいい。
つたなくても『僕はあなたたちのことが好きです』という姿勢を見せるだけで、場の空気がぐっと和らぐ」

あまり難しく考えることはなく、一緒にビジネスをやる相手と仲良くする、というくらいの気持ちで良いのかもしれません。

まとめ

これからの時代、ビジネスなど何をするにしても国内だけに留まることは難しくなっていきます。
世界、日本社会、企業、そして一人の人間としても、グローバル人材としての立ち振る舞いは必要になってくるでしょう。

「そのために何から始めれば良いのか」「今の自分には何が足りていないのか」「どうしたら変えていけるのか」
そう悩んでいるすべての方の参考になりましたら幸いです。

参考文献
・グローバル人材育成推進会議, 「グローバル人材育成戦略」, 2012年6月4日発行, https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy04/pdf/20120604/shiryo2.pdf
・日本経済新聞, 「語学だけじゃない 企業が求めるグローバル人材」, 2012年4月21日更新, https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG18046_Y2A410C1000000/
・JCAST会社ウォッチ, 「「グローバルな人材」 池上彰氏が説く「定義」は・・・」, 2017年3月7日更新, https://www.j-cast.com/kaisha/2017/03/07292122.html?p=all

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