アリババのジャック・マー氏がKFCに倍返し…!驚きの戦略が話題
今や世界企業約2000万社を顧客としている大手中国IT企業『アリババ』。
創始者ジャック・マー氏がした”あること”が世界で話題になっています。
目次
ジャック・マー氏が約52億円出資
2016年9月3日、中国の銭江晩報は記事「ジャック・マー氏がケンタッキーフライドチキン中国の親会社に出資」を掲載しました。
ケンタッキーフライドチキン、ピザハットなどを擁する米ファーストフード大手ヤムブランズは中国事業を分割し、ヤムブランズ・チャイナとしてニューヨーク市場に上場させる。この中国事業に中国の投資会社・春華資本集団、アリババグループ傘下の[虫馬]蟻金融サービス集団が出資することが明らかになった。出資額は春華資本集団が4億1000万ドル(約426億円)、[虫馬]蟻金融サービス集団が5000万ドル(約52億円)。
出典:livedoornews
ここまではただの出資話しですが、何が話題となっているのでしょうか。
やられたらやり返す『倍返し』
この出資話がなぜ取り上げられているのか。それはジャック・マー氏の過去にあります。
今でこそ、アジア一の富豪とも言われているジャック・マー氏は学生時代から優秀な成績ではなく、就職活動もうまくいっていませんでした。
一代で世界的IT企業を作り上げたアリババのジャック・マー氏だが、就職活動では30社以上に応募し、ことごとく落ちたという苦難のエピソードを持っている。門前払いした会社の一つがケンタッキーフライドチキン。25人が応募し24人が採用された。断られたのはジャック・マー氏だけだったという。それから30年、今度は大株主という身分でケンタッキーフライドチキンに乗り込むことになる。「見事借りを返した」「すばらしい成功物語だ」と中国ネットユーザーは絶賛している。
出典:livedoornews
就職活動時代に自分を落とした会社に30年後出資するという驚きのエピソードがこの出資話にはあったのです。中国ではマンガやドラマのようだと騒がれています。
この出資話の裏側は?
この出資話はただの成功物語ではないのです。
アリババにとって、KFCとパートナーを組んだことは大きな発展となります。KFCは900都市で計5000件のレストランを経営しています。KFCはアリペイサービスを提供する3番目に大きい小売業者になるために、ウォルマートやフランスの小売企業であるカルフールの後に続いています。
急速に成長を進めているオーツーオーとは、ユーザーがスマートフォンを通じてレストランやタクシーを探して、支払いをするといったように、実際にある場所とデジタルなものの領域を組み合わせたサービスを指します。これは、オンラインショッピングを活用するユーザーを、実際の店舗に導かせる目的があります。
また、アリババのようにオーツーオーサービスを展開している大手企業があります。それは中国の検索エンジンを提供する企業であるバイドゥーです。バイドゥーは2018年にかけてオーツーオーの領域に32億ドルを投資することを発表しました。
このように中国でのイーコマース市場の売り上げが減少していく中、新しい領域に踏み入る企業があるのは珍しくありません。
出典:US株.com
この出資話の本当の狙いは「オーツーオー」という仕組みにありました。この「オーツーオー」とは一体なんでしょうか。
「O2O(オー・ツー・オー)]とは?
O2O(オー・ツー・オー)とは「オンライン・トゥ・オフライン (Online to Offline)」、つまりインターネットなどのオンラインと実店舗などのオフラインの活動が連携し合ったり、またオンラインでの行動がオフラインでの購買に影響を及ぼしたりすることを表します。
ファストフード店やDVDレンタル店などで見られるオンラインクーポンもそうですし、クーポン共同購入サイトも一つのO2Oの形と言えます。
逆の「オフライン to オンライン」もO2Oです。
例えばテレビCMでよくある「続きはWebで」や、電車内広告などでの「詳しくは”○○○”で検索」といったような誘導は、オフラインからオンラインへの流入を促しています。
ジャック・マー氏はイーコマース市場の売り上げが減少していく中、このO2O(オー・ツー・オー)に目をつけたのです。
その理由はスマートフォンなどのモバイル・デバイスの普及と、ソーシャルメディアの隆盛によりいつでもどこでもオンラインにアクセスすることが可能になってきていることがあげられています。
日本でもスマートフォンは今後はほぼ1人1台の所有となっていき、国内で普及率60%を越えるといわれています。
【日本国内におけるスマートフォンの普及率推移(MM総研予想)】
2009年:3.0% → 2015年:54.0% → 2019年:70.9%(予想)出典:O2O販促ラボ
O2Oの市場規模も年々拡大を続け、1年後の2017年には、その市場規模は50兆円に達することが予想されています。
そのためスマホを利用したO2Oマーケティングが注目されているのです。
O2Oマーケティングの実例
今でもO2Oマーケティングは様々な形に派生して行われています。
①オンラインクーポン型
出典:マクドナルド、O2O販促ラボ
今一番主流となっている形です。アプリやWEBサイトでオトクなクーポンを提供し実店舗への来店を促します。
位置情報を活用して近隣店舗情報をプッシュ通知するなど、技術向上による効果の高い販促ツールへと進化しています。
来店ポイント・チェックイン型
出典:ガッチャモール、O2O販促ラボ
来店客に自動でポイントなどの特典を付与するアプリやサービスです。来店検知にBeacon(ビーコン)・Wi-Fi(ワイファイ)・GPS(ジーピーエス)など各社様々な技術を採用し、検知精度向上による費用対効果の改善などが注目されています。
③ゲーム・ゲーミフィケーション型
出典:LAWSON×INGRESS、O2O販促ラボ
ゲームを楽しむユーザーの位置情報を活用した来店促進手法です。ゲーミフィケーションは「日常生活の様々な要素をゲームの形にする」というゲーム化から派生した活動で、ゲームデザインの技術や構造を利用して販促活動することを指しています。今はやりのポケモンGOもこの分野に含まれるでしょう。
④オムニチャネル型
出典:『ISETANナビ』、O2O販促ラボ
これまでそれぞれ独立して販売していたネットと実店舗の販売チャネルの垣根を取り払い、連携させることで、オンラインでもオフラインでもあらゆる場所で買い物客へアプローチしていく戦略です。
⑤ソーシャルギフト型
出典:Starbucks eGift、O2O販促ラボ
SNSのユーザー同士がクーポンや特典などを贈りあうSNSを介したギフトサービスで来店促進します。SNSでのクチコミの広がりを活用することもO2Oの重要なポイントです。
まとめ
騒がれてるKFCに就職できなかった「お返し」をすることが目的ではなく、その先のビジョンを見据えてのことだったことが伺えます。
オンラインとオフラインをうまく融合したO2O(オー・ツー・オー)は消費者をうまく誘導していき、今後の市場を拡大することは間違いないでしょう。
ジャック・マー氏にはいくつ先のビジョンまで見えているのでしょうか。