「成功するチームが持つ3つの共通点」デイビッド・バーカス 〜TEDの堅苦しいビジネスコラムをわかりやすく日本語で解説!〜
成功しているチーム、素晴らしいチームと聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?オリンピックに出場しているスポーツチーム、ビジネスで成功を収めた会社のメンバーたち、様々なチームがあると思います。その中で今回は特にビジネスにおいて成功しているチームに着目し、成功しているチームにおける3つの共通点について2020年10月にTED Ideas に掲載されたデイビッド・バーカス氏が書いた記事をもとにわかりやすく日本語で解説しました。チームマネジメントやチームで協働する上で大切なことを学び、これからもチームとしてやっていく上での成功のヒントや参考になれば幸いです。
成功するチームに共通する3つのこととは?
組織の発明、つまり1つのプロジェクトに向けて異なる人たちを集めて協力することはおそらく人類史上最も偉大な発明の1つといえるでしょう。組織によって個人では到底想像のできなかったようなより大きな価値を創造することが可能になりました。この組織というものはいくつものチームによって構成されているのです。
したがって、成功しているチームに共通するものは何なのか?というのはとても良い質問なのです。着実に新しい価値を創造し続けているチームには何が共通しているのか?期待を超えたパフォーマンスを発揮することができるチームが持っていて、そうでないチームに欠けているものは何なのか?
研究の結果から、成功するチームには以下の3つの共通点が見出されました。
・知的多様性
・精神的安全性
・挑み、戦う価値のある目的
次にこの3つの要素について説明していきます。対面で会うチーム、リモートで話し合うチーム、どちらも行うチーム、どのタイプのチームに属していたとしても、これらの要素は等しく大切であり、会議が会議室や役員室やzoom、どこで行われていたとしても成功するチームになるためにはこの3つが必要なのです。
1. 知的多様性
成功しているチームが共通して持つものの1つ目として知的多様性が挙げられます。企業世界においては“多様性”という言葉は主に人種的多様性や性的多様性を指します。
しかし、知的多様性はそれよりもはるかに広い意味を持ち、個人やグループの意見、考え、経験や視点のあらゆる側面を含んでいるのです。異なるバックグラウンドや人生経験を持つ人は異なる視点で物事を考える傾向にあります。したがって、異種な人々が集まり、グループとして協働すると、同じような考えや経験を持つ人達のグループよりも問題を解決しやすいという傾向があるのです。
最終的なチームの仕事は問題解決です。もしもメンバーが皆、同じバックグラウンドを持ち、もしくは同じように教育を受けていて、または同じ人種や性別に関わる経験を持っていたら、生み出されるアイディアも同様に似通ったものになる傾向があるのです。一方で、これら全ての要素がチームのメンバー達の中で多様であると、出てき得るアイディアの幅はより広くなり、問題を解決するための的確なアイディアを見つけやすくなるのです。
2011年の研究(Anita Woolley and Thomas W. Malone, 2011 study)は性的多様性がいかにより強い知的多様性を生み出し、価値を加えるかということを分かりやすく、そして明確に示しています。研究者達は異なる多くのチームに着目し、女性がより多く含まれているチームはより優れているということを発見しました。根底にある知的多様性を与えるという意味ではこれは他のどの多様性にも当てはまることです。
知的多様性とは成功するチームを形づけているものの中心にある、最も大切なものですが、大切なのはそれだけではありません。
2. 精神的安全性
次の要素は精神的安全性です。多くの組織が知的多様性を追求する必要があるということを認識している一方で、知的多様性があってもメンバーの全員が気軽にアイディアを共有してくれるわけではないという事実に直面するのです。これはそのメンバーがチームに貢献できる自信がないことによって引き起こされます。
ここで精神的安全性が大事になってくるのです。精神的安全性とはチームのメンバーがどれだけお互いにそれぞれのアイディアや経験、そして自らを曝け出すことができるかというものです。これは話し合われるアイディアだけでなく、メンバーがどれだけリスクを負ったり、間違いを認めることができるかというものに影響します。精神的安全性はチームを新しく、異なる方向へ導いてくれるような、そして時には天才的な発想に繋がるようなクレイジーなアイディアをチームメンバーにとって出しやすくすることができます。
精神的安全性に関する基礎的な研究(foundational study of psychological safety)はハーバードビジネススクールの教授、エミー・エドモンソン氏(Amy Edmondson)が中心となって行いました。エドモンソン教授はある病院の違うフロアをそれぞれ統括している看護師たちのリーダーシップについて調査をし、すぐにある興味深いことに気づいたのです!チームのメンバーからの評価が高いリーダー看護師は評価が低いリーダー看護師よりもエラーの報告率が高い傾向にあるというのです。
さらなる調査の結果、彼女はその理由を突き止めました。評価の高いリーダー達は精神的安全性をチーム内に生み出すことで、看護師達が気軽に間違いや失敗を認め、それを正すことができるようにしていたのです。さらに、その間違いを認め、曝け出すことで得た学びから成長することができていたのです。それとは反対に、評価の低いリーダー達はこの精神的安全性を十分に生み出せていなかったために、そのナース達はエラーを隠さなければいけないという気持ちになっていたのです。それだけではなく、そのチームのメンバーから失敗からの学びも奪っていたのです。
この精神的安全性があって初めて私たちは無視されたり批判されたりせずに心から貢献し、リスクを負い、間違いや失敗を認めることができると感じます。精神的安全性があってこそチームは知的多様性による恩恵を受けることができるのです。
したがって、知的多様性と精神的安全性は相互に作用し合い、”good”なチームを”great”にしてくれるのです。しかしこれで終わりではありません。もう1つ大切な要素があります。
3. 挑み、戦う価値のある目的
成功しているチームが共通して持つ要素の3つ目は挑み、戦う価値のある目的です。
私たちはチームのパフォーマンスのために共有されたビジョン、ミッション、目的というものがどれだけ大切かについてはとっくに知っています。しかしこういったミッションステートメントや目的というのが日々の仕事に適用するにはあまりに曖昧すぎるというのはよくあることです。それらが曖昧だからこそ、チームが結束し、何かを目指して進むために必要な“高い目標”という最も大切なものの一つを欠いているのです。
ここで大事なのが、“働く目標”だけでは足りないということです。成功しているチームには彼らが挑み、それに向かって“戦い続けるための目標”というものを持っています。アーティス・インターナショナルという研究グループによる、武装を伴う革命や反政府活動、テロ組織に人は何をきっかけに参加したいと思うのかという研究によると、見返りが高くなり、その目的が人々が目指して働く未来から目指して戦い、挑む未来へと変わると、2つの重要なことが起きるのです。
まず1つ目として、最も大事な価値というのが神聖な価値というものに変わります。何かが戦う価値があるということはそれは重要という言葉では足りず、神聖なものということになるのです。これによって終わらせなければいけない仕事というものが彼らの価値を守り、さらに広げていくために必要な仕事というものに変わってくるのです。
2つ目にチームメンバーがグループとしてのアイデンティティーをより強く自覚するということです。戦い自体が戦う人たちというものを決め、その人たちの結束を強めます。その結果として、彼らは目標のためだけでなく、お互いのためにも一生懸命働くようになるのです。
目的、目標、そしてビジョン、これらは全て非常に重要です。しかし、新しい価値を創造し続けている、あるいは世界を変えるような、成功しているチームというのを見てみると、彼らにとっての目標はそれに向かって戦い、挑む価値のある目標や目的である場合がほとんどなのです。
まとめ
まとめると、成功しているチームというのは3つの鍵となる要素を持っているのです。知的多様性、精神的安全性、そして戦い、挑む価値のある目的です。もちろん、これら3つの要素を全て自力で獲得することができるチームはほとんどいません。これらは個人、もしくはチームを統率している人たちのグループのどちらかの形によるリーダーシップというものを必要とします。チームには知的多様性がより必要な時というのが分かり、グループ内に精神的安全性というものをつくることができ、さらには組織の目標というものを戦い、挑む価値のある、メンバーを動かす動機に変えることができるリーダーが必要なのです。
この記事について
この記事はDavidBurkus.comに掲載されたものをその著者の許可の上でTED Ideas(https://ideas.ted.com/)に掲載しているものをもとに作成しております。
参考元の記事:IDEAS.TED.COM “The 3 things that great teams have in common”
参考記事の著者について
デイビットバーカス氏ー”Leading from Anywhere: Unlock the Power and Performance of Remote Teams”を含む5つのベストセラーを著書に持つ組織心理学者。
以下はデイビッド・バーカス氏のTED×ネバダ大学の講演(TEDxUniversityofNevada Talk)です。