貿易収支5年ぶり黒字に!経常黒字は倍増の17.9兆円
財務省が2016年5月12日に発表した2015年度の国際収支速報によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は6299億円の黒字となり、5年ぶりに黒字に転換しました。さらに日本が海外と貿易取引や金融取引などを併せた経常収支は17兆9752億円の黒字でした。資源の乏しい日本はこれまで原油や燃料資源の大部分を輸入し、それを製品化して輸出するという方法で経済成長を遂げてきました。近年ではTPP、中国の進出などに加え、イギリスのEU離脱問題などさまざまな世界情勢の影響を大きく受ける日本の貿易は、どのように推移しているのか見ていきましょう。
1:近年の日本の貿易動向
2014年の貿易総額は約159兆円です。2000年にはアメリカの金融危機の影響を受け、世界的な経済不況を迎えていましたが、2010年にはその反動もあったせいか、景気は回復方向になりました。2011年には東日本大震災があり、輸出にも大きな影響を与えました。原子力発電所が使用できないことで、電力用LNGや原油の輸入が増加、さらに、尖閣諸島問題で中国との関係が悪化し、輸出が減少。しかし2012年にはアベノミクスへの期待から円安が進んだことで、日本への旅行客が増えたことで、貿易収支の改善につながったのです。2014年にはアメリカ経済の回復もあり、デフレ脱却の政界により輸出も増加傾向になりました。
2015年度の貿易収支は1兆792億円でしたが、2014年度は9兆1277億円の赤字であり、過去最大の赤字だった2013年度の13兆7564億円と比べると、赤字は縮小傾向になっていました。2015年は原油安の影響で輸入額がだいぶ減少したことで、赤字額も減ったと見られています。
輸出に関しては鉄鋼や有機化合物、鉱物性の燃焼の輸出の減少が目立ち、日本の大きな貿易相手国の中国への輸出は3.1%の減少となりました。輸入に関しては、原油価格が低下したことで、原油や液化天然ガス、石油製品の輸入が減少。一方で医薬品の輸入が大きく増えているのが特徴です。
さらに中でも農業に大きな影響が懸念されるTPPにおいては、輸出相手国の関税が撤廃されるなど、貿易手続きが簡素化されることで輸出しやすくなることで景気回復につながるとされています。
2:5年ぶりに貿易収支が黒字化したのはなぜか?
貿易赤字の減少が続き、2015年度、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6299億円の黒字を示し5年ぶりの黒字となっています。その理由について説明しましょう。
原油価格の低下
理由の一つは原油価格の低下です。原油が値下がりしたことで、輸入額が減少したことが黒字につながったと考えられます。原油の値下がりは、石油製品や液化天然ガスの輸入の減少にもつながり、それが黒字転換に導いたのです。
中国人の爆買い現象
中国からの旅行者が増え、旅行収支が53年ぶりに黒字になったことも、理由の一つです。中国人の爆買い現象が、日本経済に大きな影響をもたらしたことは言う間でもありません。
海外投資
対外投資の配当も黒字に大きく影響しています。企業の知的財産権などの使用料、子会社から得られる配当、海外有価証券への投資は、3年連続で更新している現状は、日本の経済力を高める大きな原動力となっています。
3:今後の日本貿易事情
アジア諸国の資源価格が下落していることで景気が低迷している影響で、円高傾向にあります。そのため、アジアへの輸出においては伸び悩みとなっているため、輸出金額がさらに伸びるとは考えにくいものです。しかし、全体的な世界経済としては成長していると考えられているため、次年度の輸出額も増加する見通しとされています。しかしながら、日本の貿易課題である産業の空洞化、食糧の自給率、貿易摩擦、資源・エネルギー問題などを解決していく必要があります。
まとめ
貿易黒字の理由として挙げられる原油価格の低下を考えると、今後は中国やインドなどがさらに経済発展を遂げていくに伴い、資源やエネルギーを確保しようとすると考えられます。地球温暖化の問題も含め、資源やエネルギーの確保、太陽光発電などの新技術の開発やリサイクル技術の開発が求められると考えられます。