【インバウンド事業】外国人観光客が押し寄せる理由と今後を予測
日本政府は東京五輪・パラリンピックが開催される2020(平成32)年の年間訪日外国人観光客数の新たな目標を4千万人台に引き上げる方向です。
増加を続ける訪日外国人観光客のインバウンドを狙い、観光産業の底上げを成長戦略の柱に据えることで安倍晋三首相が掲げる「新三本の矢」の名目国内総生産(GDP)600兆円達成を目指しています。
訪日外国人観光客が増え続ける以上、今後も外国人観光客への「おもてなし」は求められるでしょう。
目次
1:日本に来日する観光客の推移
出典:expedia
来日観光客は過去の東日本大震災があった年には6,218千人と激減しましたが、そこから年を追うごとに増えています。日本政府観光局(JNTO)が発表したデータをもとにすると、2015年には世界各国から日本へ19,737千人もの人が訪れています。
世界32カ国で展開している総合オンライン旅行会社エクスペディアの2015年の人気海外旅行先ランキングでも、韓国・台湾・香港・タイの4カ国で、全て日本が1位という喜ばしい結果となりました。
COOLJAPANしかり日本政府の政策、ビザ発給条件の緩和措置や円安等追い風の影響が色濃く出ていると考えられ、これからもオリンピック開催国効果などでさらに増加の一途を追うものと期待できます。
1-1:どこの国の観光客が多いのか
出典:日本政府観光局(JNTO)
来日する外国人観光客の中で「どこの国からの来訪者が多いのか」という点は多くの方が興味を持つことでしょう。日本政府観光局が調べた結果によると、平成28年1月からの統計で韓国や中国からの訪日が多いことが分かります。次いで台湾、香港、タイ、アメリカと続きます。統計上では、アジア圏の国籍を持つ方が多く、ヨーロッパやアフリカ、アメリカ圏内からの渡航者は月十数万人程度です。
1-2:他国と比較した場合どれくらい観光客が訪日しているのか
出典:日本政府観光局(JNTO)
日本人が観光目的で海外へ渡航するように、他国に住む方も海外への旅行を試みます。日本政府観光局が示した、2014年の世界各国への外国人訪問者数をひも解いてみると、世界1位のフランスへの渡航者が年間8300万人に対し、日本は1300万人と世界22位のランクです。アメリカやヨーロッパ諸国、中東地域よりも訪日者数は少ない結果にありますが、前述の通り2020年に開催されるオリンピック効果や、サミット等の効果が相まって増加の一途を経ています。オリンピックが近づくにつれて、訪日者数は今後も増加していくと予想できます。
2:観光客は日本の何を求めているのか
出典:アクトゼロ
日本を訪れる観光客は、日本にどういった期待を持っているのでしょうか。2014年7月〜9月の観光客の訪日目的を観光庁が調べたところ、世界遺産にも指定された「日本食」を味わうことと回答している方が大半でした。また、買い物や日本固有の自然を楽しむことを目的としていることが多い結果となりました。諸外国では日本のアニメ文化を支持する傾向もあり、一部の観光客はアニメの舞台を訪れる「聖地訪問」を楽しみとするほか、秋葉原などに代表されるサブカルチャーに触れたいという方もいます。
また日本では、スポーツの国際大会が開かれる機会に恵まれており、観戦目的で訪日する観光客も一定数いることが確認できます。
このことからもインバウンドビジネスはしばらく安定し、日本に恩恵をもたらすでしょう。
2-1:増加によるメリット・デメリット
日本に外国人観光客が多く訪れることで、メリットとデメリットが生まれます。メリットとしては、観光客が日本円で買い物をするため外貨獲得に繋がります。外国人観光客による『爆買い』というキーワードが流行したのは記憶に新しいですね。また、ロボットカフェなどの外国人向けの産業や事業が活性化します。
この一方で生じるデメリットは、観光地が持つ独特のたたずまいや秩序が乱れがちになってしまうことが考えられます。また文化が異なることで起こる治安の悪化なども懸念されます。外国人観光客のマナー問題はニュースにも取り上げられているのが目に付きます。
ただし、このデメリット面は現在、観光地側の努力によって秩序や治安が守られ、そのたたずまいや景観、雰囲気が守られています。こういった自助努力も外国人観光客が「自国にはないこと」として文化の一つと捉えられ、評価されています。
2-2:今後の予測
今後も、外国人観光客の増加は止まらないことでしょう。2020年に開催されるオリンピック効果や、インターネットの普及、海外での旅行雑誌や書籍において、四季折々の景色や文化、最先端のテクノロジー、アニメや漫画アイドルなどの独自の文化の露出が多くされるようになり、今まで知らなかった日本独自の文化に海外旅行客は興味を惹かれています。
また、生活のしやすさも一つの理由に挙げられます。24時間のコンビニエンスストア、街中にある自動販売機、治安が良い、街が綺麗、食べ物が美味しい、交通機関インフラが整っているなど世界から見てもトップクラスの住みやすい国でしょう。
さらにオリンピック開催国効果で世界から注目されることで、経済効果をもたらし国際色豊かな国になることが期待されます。
3:まとめ
日本政府は成長戦略の柱の一つとして、インバウンドの増加を掲げているほど、観光客の訪日は、新しいビジネスチャンスを国内の各産業にもたらし、企業業績とGDPを底上げし、引いては諸外国の日本に対する理解を深め、国際関係にまで良い影響を与えることが予想されます。ですが一方でそのインパクト故の問題も起こってきます。
宿泊施設の面では、東京だけ見ても、2012年時点で14万室あり、現状でも稼働率は85%を超えています。客室数の増加に関しては、少なくも宿泊事業者が今後数年間で客室数を増加させる大きな投資は計画されておらず、このままでは、とても増加する外国人観光客を吸収しきれません。
こうした問題を整理しないまま外国人観光客向けのサービスの対応を進めると国内の既存需要とのコンフリクトが起こります。また、無料WiFiなどのインフラ整備などを放置したままでは、政府の政策による観光客の増加とそれを受け入れるサービスインフラにギャップが生まれ、大きな混乱を引き起こすリスクがあるとも言えます。
世界的に見ると日本を訪れる外国人観光客はまだまだ少ないですが、日本国内へ訪れる外国人の数は年々増えている傾向にあります。日本の文化・サブカルに触れたい方も多く、今後も増加の一途をたどることが予想ができますが、それ以上に日本の受け入れる準備を着実に進めていく必要があります。