大手コンビニ4社とジェトロが連携し、海外展開を拡大する真相とは
コンビニエンスストア大手4社(セブン-イレブン・ジャパン、ミニストップ、ファミリーマート、ローソン)が、海外への展開を拡大するため、日本貿易振興機構(ジェトロ)と連携しました。2015年10月に行われたTPP交渉によって、海外進出がしやすくなったこともその背景にはあるようです。
ん・・・ジェトロ? TPP? 海外にコンビニ? 頭の中が「?」だらけで何を言っているかわからないよ。。。という方!
“安心してください!説明しますよ!”
身近にあるコンビニがどのような施策を売っているのか、1つずつ紐解いていきましょう。
海外進出する日本のコンビニ
まず、コンビニ業界の現状について説明していきましょう!
国内シェアのうち85%以上を大手4社が占める日本のコンビニ業界はここ数年、店内調理やPB商品などで特色を出していかに競合と差別化を図るのか、各社が切磋琢磨してきました。
*PB商品・・・プライベートブランド商品
ですが、人口もどんどん減っている日本でこれ以上店舗数を増やし、競争が激化したところで競合とのパイの取り合いになるだけですよね!
今後の経済成長が見込まれるアジアへと市場を拡大するのは当然の動きだといえます。
コンビニの海外進出は今に始まったわけではなく、数年前から成熟しつつある国内市場から海外へと目を向けるところはありました。
出典:http://diamond.jp/
こちらは少し古いデータになりますが、コンビニエンスストア大手3社の海外店舗数を見るとセブン-イレブンが7683店(資本関係がない海外エリアライセンシーを含めると3万3067店)、ファミリーマートが1万2145店。これに対してローソンはわずか461店になります。
やはり王者セブン-イレブンは、総合的に他の2社を圧倒していますね。
セブンイレブンはマレーシアでも、30年もの実績を有しており圧倒的な市場シェアを握っています。
店舗網の優先か、着実な収益かという選択に関しては、後者を選択したセブン-イレブンに軍配が上がっているようです。
その理由は2012年9月9日付毎日新聞朝刊『ヨーカ堂、正社員半減、従業員の9割をパートに』に書かれていました。
『セブン&アイ・ホールディングス(HD)は傘下のスーパー「イトーヨーカ堂」の従業員をパート中心に切り替え、15年度をめどに正社員を現在の約8600人から半減させる。パート比率を現在の77%から90%に高めて人件費を削減し、不振のスーパー事業の立て直しを図る。(中略)
希望退職者は募らず、同HD傘下企業への転籍や新規採用の抑制で対応する。主な転籍先は、コンビニエンスストア「セブン-イレブン・ジャパン」本部や直営、フランチャイズ加盟店の店長となる見通し』
出典:『ヨーカ堂、正社員半減、従業員の9割をパートに』
スーパーから始まったイトーヨーカ堂が、コンビニエンスストアを出店できたことは時代の流れにうまく乗れたことを表しているでしょう。
小売業界は、小さな商店から、大規模店舗へと移っていった後、今度はダウンサイジング波が再び訪れています。イトーヨーカ堂は傘下にセブン-イレブンがあったこそ、いち早く業態変化に柔軟に対応できました。
その結果、他の競合より一歩抜きん出た形となっているのです。
そして最も海外展開に対して力を入れてきたのはファミリーマートです。店舗数の約6割を海外が占めていて既に海外での地盤を確固たるものとしています。
韓国、台湾、中国、タイなどアジア地域へと積極的に展開し、2012年には国内外合わせてなんと20,000店舗を達成しています。
2020年までに40,000店舗を目指しているそうです。また、ベトナムにも80店舗を展開し、これは日系のコンビニでは最多となっています。
一方、ローソンは国内では2位ですが、海外展開という点では遅れをとり続けてきました。
このように、各社で進度にばらつきはあるにせよ、国内から海外へと市場の可能性を見出し始めたコンビニ業界。
そんな中、2016年1月にコンビニ大手4社がジェトロと提携し、さらなる海外展開を目指すというニュースが発表されました。
今回コンビニと提携したジェトロって?
次にコンビニ大手4社と提携した「ジェトロ」について、少し説明しましょう。
ジェトロの正式名称は「日本貿易振興機構」です。
海外企業の日本拠点設立、日本産の農林水産物や食品輸出、中小企業の海外進出などを支援し、最新の海外ビジネスに関する情報を日本企業に提供することによって、日本の社会・経済の発展を目指す独立行政法人です。
わかりやすくいうと、「日本と海外の架け橋となり、日本が成長するためのさまざまな取り組みを行っている」団体といったところでしょうか。
どうして、コンビニとジェトロは提携したの?
出典:http://blog.livedoor.jp/kaigainoomaera/archives/45614383.html
コンビニ業界は、ほぼ飽和状態にある日本市場から海外に目を向け始めていることはすでにお話ししましたよね。
これに加えて、2015年10月に行われたTPP交渉が、今回のコンビニとジェトロの提携に深く関係しています。
「TPPって、ニュースでよく聞くけどいったい何のこと?」 そんな人のために、簡単にご説明しましょう。
TPPとは「環太平洋経済連携協定」の略で
12の参加国の間での「貿易ルールを統一し、規制を減らすことで、国家間での取引や外国での活動をしやすくしましょう」
というものです。
このTPPに関する交渉が2015年10月に行われ、その結果コンビニは海外展開がしやすくなったのです。
例えば、ベトナムでは、お店を出すときの「経済需要テスト」という出店審査が廃止され、マレーシアでも、コンビニを含む外国の小売業が出店する際の外資規制が緩和されました。
つまり、海外でコンビニを開くためのハードルが低くなったのです。
この交渉のあと、日本政府は、関税撤廃や投資ルールの緩和を足掛かりに日本企業のグローバル化を進めるという基本方針を発表しました。
その柱の1つであるコンビニの海外展開の一環として、今回2016年1月に、ジェトロとコンビニ4社による協議会が発足されたというわけです。
まとめ
日本には、およそ51,000ものコンビニ店舗があります。これに加えて、今後の人口減少も相まって、飽和状態に陥るのも時間の問題と言われていました。
今回のジェトロとの提携も含め、今後さらに海外へと進出していくのは間違いないでしょう。
ここまで書いてきたように、すでに一部の国には広まりつつある日本のコンビニはもちろん日本のお菓子などを取り扱うところもあるようですが、現地の人々が求めるものを置くのが基本です。また、お店としての役割も各国の文化によって違いがあります。
例えばインドネシアでは、買ってその場で食べる「屋台文化」がもともとあったので、ゆっくり腰を落ち着けられるカフェスペースを設けたコンビニに人気が集まっているそうです。
このように、コンビニ業界は、「日本」を海外に輸出しつつも、現地の人々の文化や習慣に適応することで、利用客にとって欠かせない存在になろうとしています。
コンビニの海外展開は、日本産の「高品質」で「便利」なものを海外の人にも知ってもらうとてもいいチャンスになるでしょう。
今後日本のコンビニがどのように展開していくのか、期待を込めて見守りたいものです。