#これって日本だけ? 日本と海外の違いを鉄道の遅延証明書から考える

#これって日本だけ? 日本と海外の違いを鉄道の遅延証明書から考える

海外と比べた際のその正確さから、世界一の鉄道とも言われる日本の鉄道。
みなさんも、普段利用している電車が1分でも遅れると焦ってしまったり、車内アナウンスで謝罪の言葉を聞いたりした経験があるのではないでしょうか。
5分以上の遅れが珍しい日本だからこそ発行される遅延証明書ですが、実はこの文化も日本特有のものなんです。

そもそも遅延証明書とは?

遅延証明書は、列車が遅れたことを証明するため鉄道会社が発行する書類です。
基本的に5分以上の遅れが生じた場合、駅構内やホームで手の平サイズの遅延証明書が配られます。
日付の他に、電車がどれぐらい遅れたかがわかるようになっています。
これまで紙が主流でしたが、最近では鉄道会社の公式ウェブサイトで遅延証明書を発行するところも増えてきました。
ただ、実際に遅延した電車に乗っていたかどうかまでは証明できないため、学校や会社によっては公式の書類とは認めていないことが大半です。

余談ですが、直接取得したかオンラインで取得したかに限らず、遅延証明書を提出したからといって必ずしも遅刻が認められるわけではなさそうです。
ネット上では、「電車の遅延による遅刻で給料が減るのは理不尽だ」という働く側の声と「いつも遅延証明書を提出して遅刻の言い訳にされている」という雇う側の声の両方が上げられていました。
遅延証明書の扱い方について、きちんと就業規則に記載して互いの認識を確かめておくのが適切な対応のようです。

実はドイツにもある遅延証明書

海外では日本に比べて電車の遅れが日常茶飯事ではありますが、調べてみると他にドイツにも遅延証明書がありました。
ただ、日本のように遅延を証明する役割を持つものではなく、遅延によって返金を受け取る権利を証明する役割を持つもののようです。
ということで、在住経験のある人にドイツの鉄道文化について詳しく聞いてみました。

やっぱり遅れるのが当たり前

他国と同じように、ドイツも2本に1本の頻度で電車が遅れるようで、非常に悩まされたと言います。
先述した通り、ドイツの遅延証明書は返金手続きに利用されているのですが、その返金もなんと最低60分以上の遅延から。
さらに、6分以内の遅延は遅延と定義されないそうなんです。
日本で6分というと、次の電車の乗り換えも1本遅れてしまうくらいの差ですよね。

なぜ電車が遅れるのか

ドイツのこの鉄道文化を形作っているのは、電車を動かす鉄道会社で働く人々の考え方だと考えられます。
最大の鉄道会社・ドイツ鉄道は、実質国営企業です。
「利益を追求する姿勢がなければ、賃金も対応も良くない」と言い、定刻通りに発車しないことはもちろん、現在でも大規模なストライキが起こることがあるそうです。

あまりの遅延の多さや対応の酷さに対して皮肉を込めた歌も作られていて、SNSでも有名になるほどだと言います。
気になった方はぜひご覧になってみてください。

なぜ海外で遅延証明書の文化はないのか

結論として、日本ほど遅延証明書が制度として普及する国が今までになかったように、これから取り入れ始めるような国はないと推測できます。
今回は以下の3つの理由に着目してみました。

世界では電車の遅延は当たり前

これまで述べているように、やはり他の国では電車が時間通りに来るという方が珍しいようです。
外国人が日本に来て驚くことに電車もにならず人々の時間への正確さが度々挙げられていますよね。
電車が遅延しない条件としては、大まかに
①鉄道システムの質の高さ
②鉄道会社で働く人のモチベーション
といった2つがあると考えられます。
トラブルが起こらない、あるいは起こってもすぐに対応できるシステムと働く人のモチベーションがあることが日本の電車の正確さにつながっています。
先述したドイツのように②が低いなど、どちらかが欠けているがゆえに遅延が頻発する国々が多く、遅延証明書を発行する必要があるほど遅延が稀という状況になるのは、世界でも日本を含めた限られた国のみになります。

個々人の倫理性・信頼性

残念ながらそうではない人も一定数はいるようですが、大多数の日本人がこの遅延証明書を適切に利用しているからこそ、今もシステムとして成り立っています。
賛否両論はあると思いますが、鉄道会社の公式サイトで誰でも遅延証明書をダウンロードする機会もあるくらいなので、やはり性善説をベースとした文化がここでも垣間見えます。
海外の方のコメントを見ていると、「もしうちの国で日本のような遅延証明書があったら、偽造したり売買されたり、大変なことになるよ」という声もありました。遅延証明書の偽造や転売とは、全く考えられない発想で驚いてしまいますよね。
こうした一人ひとりの倫理性とそこに対する信頼性の高さは、簡単に変わるものではありません。

遅刻や休みへの捉え方の違い

そもそも遅延証明書は、日常的ではない遅刻や休みの裏付けとして存在するのですから、学校や会社に遅刻してはいけない、休んではいけない、という日本人の考え方の上にあると言えます。
働き方の面で言えば、日本では決まった時間に始業・就業するのが従来の考え方でしょう。
一方の海外では、きちんとアウトプットさえ出せれば何時に何時間働いても良いという考えから、遅刻してもその日の仕事をこなせていれば何も思わない人が多いようです。最近ではフレックスタイム制や裁量労働制など、似たような考え方が日本でも普及しつつありますね。
したがって、わざわざ自分の遅刻の理由を証明する必要性が感じられないのです。
SNSなどでも、「もし電車の遅延で遅刻になるんだったら家に帰って休むかな」と呟いている海外の方を何人も見かけました。
日本人には、時間を守るという側面から、毎日の決められたことをしっかり行う、という文化が根付いているように感じられます。

一方で、海外の働き方と比較される日本の長時間労働や残業に関しては「日本は時間にルーズだよね」と評価されてしまうのも興味深いですよね。

まとめ

今回は遅延証明書に着目しましたが、他にも鉄道運営システムや車内の綺麗さ、車内広告といった日本や海外の独自性が垣間見えるのが、鉄道文化の面白さだと考えます。
旅行先でも移動手段として鉄道を利用することはあると思うので、ご自身で体感してみると、より世界との違いが見えてくるかもしれません。

【参考文献】
・黄金の国ジパング, 「遅延証明書って何?いかにも日本人らしい文化に外国人も驚愕」, https://golden-zipangu.jp/japan-chien/

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