経済大国なのに幸福度が低い日本?世界幸福度ランキング2016
米国の世論調査会社ギャラップ・インターナショナルとWIN (Worldwide Independent Network of Market Research) による共同調査により2016年度版の世界幸福度調査の結果が発表されました。*調査対象国は68カ国です
1位 コロンビア
2位 フィジー
2位 サウジアラビア
4位 アゼルバイジャン
5位 ベトナム
6位 パナマ
6位 アルゼンチン
8位 メキシコ
9位 エクアドル
10位 アイスランド
10位 中国
10位内に日本は見当たらないですね。
日本は果たして何位なのでしょうか。
長いので日本を含めた先進7ヶ国のランキングを見てみます。
23位 カナダ
28位 日本
42位 アメリカ
47位 ドイツ
54位 イギリス
57位 フランス
57位 イタリア
日本は68ヶ国中28位。。。う〜ん この順位をどう捉えたらいいのか。
日本同様、国民一人あたりのGDPでは世界トップクラスであるアメリカやドイツも、幸福度に関しては世界平均を下回っています。
反対に、今回の幸福度調査でランキング1位のコロンビアや2位のフィジーは、経済的には決して恵まれているとはいえません。
物質的・経済的には豊かなはずの日本で、幸福度が高くないのはどうしてでしょうか?
物質的な豊かさは心の幸福度につながらない
経済的には豊かな日本で幸福度が低い理由の一つは、「お金やモノ=幸せ」だという考え方でしょう。
モノの大量生産・大量消費が人々の幸福をもたらさないことは日本を含む先進国を見れば明らかです。
持ち物を増やしては家が狭いと嘆き、さらに大きな家を購入する。その繰り返しの結果、アメリカではここ50年ほどで一人あたりの敷地面積が約3倍になったといいます。
日本でも同様に見られる「大量生産・大量消費」は、人々の幸福度向上にはつながっていません。モノを買い、所有することからは、本当の幸せを得られるわけではないのです。
仕事は報酬のため
また、高度経済成長を迎えた日本では、高収入の仕事に就き、稼いだお金でマイホームや車を購入することがステータスだとみなされていました。誰もが物質的な豊かさを求め、働くという行為も、自分の時間を犠牲にして報酬を得るための手段にすぎないと考えられてきました。
プライベートでの幸福な時間のために、仕事の間は自分らしさを抑える。個人は、会社の一員、社会の歯車として働く。そんな労働観が広まったため、働くことに喜びや幸せを感じられる人は減ってしまいました。
幸せな人が多い北欧の国々
モノを所有することに幸せを求め、そのためのお金を手に入れる方法が仕事。日本人のこういった考え方では幸福にはなれないでしょう。
では、幸福度が高い国と日本では、いったい何が違うのでしょう?
幸福度に関する調査で常に上位を占める国が集まる北欧地域に焦点を当ててみたいと思います。
北欧の特徴として、「税金が高く、社会保障が整っている」という点があります。デンマーク、ノルウェー、スウェーデンで25%、フィンランドで23%の消費税は、日本人からすると非常に高く感じられます。しかしその分、誰もが平等に社会保障を受け取ることができ、学費も無料です。
税金が高いということは、給料のうち手元に残るお金は少なくなることを意味します。それでも、幸福を感じる人が多いのです。
北欧の人々は、仕事を選ぶ際には収入より「成長できるかどうか」を重視します。また、日本のような「モノの大量消費」ではなく、旅行などの「経験・体験」に喜びを見出し、できるだけ「シンプルな暮らし」をするのが、北欧の国民性です。
北欧と日本を比べて改めて分かるのは「お金やモノが人を幸せにするわけではない」ということ。北欧の人々と日本人との大きな違いは「幸福に対する考え方」でしょう。
たくさんお金やモノがあるわけではなくても、限られたお金だからこそ使い方を考え、気に入ったモノだけに囲まれて暮らすことに、北欧の人たちは幸福を感じているのです。
これから日本の幸福度は高まっていく
数字だけを見ると、日本の幸福度は決して高くありません。しかし、現代の若者世代の傾向は、今後日本の幸福度が高まっていく可能性を感じさせます。
一言でいえば、「自分らしい人生を送りたい」と考える若者が増えているのです。
例えば、世間の評価や給料でなく、仕事の内容ややりがいを重視して仕事を選ぶようになってきています。一昔前までは、社会でのステータスや収入が就職の決め手でした。そうではなく、多少給料が低くても、「楽しい」「人の役に立っている」と感じられる仕事を望む若者が増えているのです。
周囲の評価を気にせず、自分の人生や暮らしを真剣に考えるということは人によっては「わがまま」だと捉えられるかもしれません。敷かれたレールの上を歩くのでなく、自分自身の道を見つけるのは簡単なことではありません。壁にぶつかり、心理的な痛みを伴う経験もするでしょう。
しかし、「自分の人生や仕事を自ら選ぶ」ことが、一人ひとりの幸福につながります。
教育が果たすべき役割
人々の幸福に関する価値観の変化に応じ、これまでとは違う教育が求められます。自分の将来は自分で選びたい、そんな若者にできるだけ多様な選択肢を示すのがこれからの教育の役割になってくるでしょう。
自分の人生について真剣に考えるものの、まだ人生経験の少ない学生たちは、具体的に何をやっていいのか分かりません。
大学で「就活面接テクニック」や「自己アピールの仕方」を教える代わりに、具体的な行動を起こすためのヒントになるような時間を設けるべきです。さまざまな職業や人生を紹介し、いろんな人の生の声を届ける。そうすることで、実際に自分の進路や仕事を決めるとき、また自分らしい生活を目指すときの選択肢の幅が広がります。
すべてを指示するのではなく、行動のきっかけを与え、若者の視野を広げる教育が、ゆくゆくは日本の幸福度につながっていくはずです。
幸せに生きるために
「幸福な人生を送りたい」。誰もが望むことでしょう。
そのために何より大切なのは、自分にとっての幸福が何なのかはっきりさせること。そして、「モノやお金=幸せ」という考え方を捨てること。
何が自分にとって幸せなのか分かっていないと、幸福な人生を送ることもできないでしょう。
また、モノやお金が必ずしも人を幸せにするとは限らないということは、日本や北欧の例からお分かりいただけたと思います。
「幸せ」を自分なりのモノサシではかり、自分らしい生き方を自ら選択してゆくことが、幸福な人生を送る鍵なのです。
仕事、進路、家庭など、人生には自分の意志で選択すべき場面がたくさんあります。
いざというときに自分なりの決断を下すためにも、海外に目を向けるなど、選択肢の幅を広げる努力をすることが大切ではないでしょうか。