もう日本だけじゃない?日本と世界のわさび事情
鼻を抜ける爽やかさとツーンとした刺激が特徴的なわさび。
古くから多くの日本人に愛されてきましたが、最近では海外でも好んで食べられているということをご存知でしょうか?
日本食ブームを皮切りにWasabiとして世界中に広がっていき、最近では栽培まで行う地域も出てきているようです。
そこで今回は、日本が誇るわさびの世界進出事情についてご紹介していきます。
わさびの種類
まずはわさびについておさらいしてみましょう。
わさびは日本の特産で、綺麗な水で冷涼な気候のもとで育てられます。長野県や静岡県が有名ですよね。
渓流などで育てられる水わさびと、畑で育てられる畑わさびの二種類の栽培方法があります。
水わさびは綺麗な水質活適切な水温、そして弱い日光という厳しい条件が必要となるため、栽培がかなり難しい農作物として知られています。
畑わさびは水ワサビほど条件は厳しくないのですが、ウイルス感染による成長障害のリスクが高いことから、近年では人工的な環境かにおける栽培実験も行われているそうです。
栽培されたわさびは、根わさびと葉わさびとしてすべての部分が食用にされます。
わさびの地下茎を使う根わさびは、みなさんもお馴染みの刺激的な辛みが特徴的な寿司に添えられるものです。
一方わさびのやわらかい部分を使う葉わさびは独特の香りと辛みが楽しめるため、おひたしや天ぷらとして、または生のまま刻んで食べられます。
江戸時代の頃からこのように栽培され食べられてきたわさびは、今や日本食に欠かせない名脇役として人気を獲得しています。
わさびの国内事情
さて、そんなわさびですが、実は日本での生産量は年々減少しています。
農林水産省による特用林産物生産統計調査(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tokuyo_rinsan/)によると、2011年の根わさびの生産量772.1t・葉わさびの生産量1,930.7tから、2021年の根わさびの生産量426.6t・葉わさびの生産量1,458.8tと、全体の生産量は10年間で30%以上減少しています。
考えられる主な原因としては、
・高温化により厳しい生鮮条件がクリアできない
・高齢化により生産者が少ない
・わさび離れにより需要も減少している
などが挙げられます。
この生産量減少に伴って価格も高騰しているため、今後わさびがさらなる高級品となることも予想されます。
世界で広がるわさび栽培
日本国内では減少の一途を辿っているわさびですが、昨今では海外からの需要が増加しています。
海外ではホースラディッシュ(セイヨウワサビ)や粉わさびが流通していますが、やはり本物の味までには届かず、消費者からは日本のわさびを求める声が増えてきており、現地生産に向けた試行錯誤が繰り返されてきました。
現在では以下の国々のわさび栽培が成功し、大きく話題になっています。
イギリス
イギリスのニューハンプシャー州では、Wasabi Companyという会社があります。
ニューハンプシャー州は地下に帯水層があり、カルシウム分が豊富な地下水が潤濁に流れています。
古くからクレソンの水耕栽培が盛んだったのですが、ある日本人が「わさびの田んぼのようだ」と言ったことから、わさび栽培を試みるようになりました。その試みが成功して、わさびとクレソンの平行栽培が可能となったのです。
HPを見てみると、わさび以外にも山椒やゆずといった日本の特産も扱っているようです。日本の味を広めていただけるのは嬉しいですね。
▼HP▼
https://www.thewasabicompany.co.uk/index.php?route=common/home
オーストラリア
オーストラリアの南東、タスマニアでもわさびの栽培が盛んです。
タスマニアは、澄んだ水、恵まれた海洋環境、肥沃な牧草地が自慢であり、自然派の農産物の生産地として注目度が高まっています。
わさびも10年以上前から栽培されており、Shima Wasabiのブランド名で東南アジアにまで輸出される人気商品になっています。
日本と同じ緯度や気候条件をもとに、「本物のわさび」を提供しているようです。
▼Facebook▼
https://www.facebook.com/shimawasabitasmania/?locale=ja_JP
カナダ
カナダのブリティッシュ・コロンビア州においては、Pacific Coast Wasabi Ltdが企業秘密の温室栽培技術により、世界的にも最高級とされるわさびをアメリカやヨーロッパに輸出をしています。
新鮮なわさびそのものだけでなく、カプセル状のものやパウダー状のものといった、日本ですらあまり馴染みのない種類のわさびも販売しているようです。
▼HP▼
https://wasabia.com/
わさびの味は世界に受け入れられるのか
日本食ブームによって火がついたわさびは、先述した通り、世界でもその味が認められ多くの人に愛されています。
近年では、日本食以外にもわさびを有効活用できないかということで、様々なわさび食品が生まれてきています。
トウガラシやコショウと異なる辛さが人気ということで、チーズと合わせたり、フルーツのシロップ漬けやビールに入れたりと、日本では考えられない組み合わせも楽しまれているようです。確かに美味しそうなアレンジ方法ですよね。
さらには、パンナコッタなどのデザートとの組み合わせや医薬品としての役割なども提案されていて、世界におけるわさびの可能性は無限大とも言えます。
近い将来、世界で発明されたわさびに関連する商品が、日本に逆輸入されて人気を博す日が来るかもしれません。
参考文献
・NewSphere, 「ワサビ栽培、海外で拡大中? チーズ、パンナコッタ…斬新な組み合わせも!?」, https://newsphere.jp/world-report/20150607-1/, 2015年6月7日更新