TPPとは?理解するための3つのポイント
2015年10月5日に大筋合意に至った環太平洋パートナーシップ協定(TPP)。その名前を耳にする機会は多いものの、具体的にどのようにしてビジネスに活用できるのか、わかりにくいと感じていますよね?
そこで、今回は中小企業であっても海外進出を実現させられるという観点からTPPを最大限活用するためのポイントをお伝えします。
目次
TPPを理解して120%活用するための準備
まずはTPPについて簡単におさらい
TPPは12ヵ国(日本、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、チリ、ペルー、メキシコ)間での経済連携協定(EPA)です。
TPPは、関税撤廃をはじめ、投資や知的財産保護といった非関税分野や、貿易の周辺分野(労働、環境など)のルール作りを含めた貿易自由化に関する包括的協定となっています。
要するにTPP締約国が世界全体のGDPに占める割合は36%、合計人口は約8億人となっており、ものすごく有望な市場だと言えますね。
さて、TPPの概要について確認したところで、企業が海外進出をするうえでどのような点を活用できるのかを見ていきましょう。
TPPを理解して120%活用するための3つのポイント
1.二国間貿易におけるメリット:関税撤廃により価格競争力の向上
TPPと聞いて真っ先にイメージするのは、関税撤廃ではないでしょうか?大々的な関税撤廃・引き下げが報道などでも注目されましたが、日本から締約11ヵ国への輸出に関しては、ほぼすべての物品にかかる関税が撤廃されることになります。
まず、工業製品においては、86.9%の品目の関税が即時撤廃され、猶予期間を経て最終的には99.9%の品目の関税が撤廃される予定となっています。
また、農林水産品に関しても、日本からの輸出拡大の重点品目(牛肉、米、水産物、茶など)のすべてにおいて猶予期間を経て関税撤廃が実現する予定で、米国やカナダ向けの清酒やベトナム向けの水産物(ブリ、サバ、サンマなど)の関税は即時撤廃されるのです。
物品への関税が撤廃または引き下げされることによるメリットは、輸出先の自国内やTPP域外の製品に対する価格競争力が増すことです。特に、TPP域外との間では関税率の差が数10%にも及ぶ可能性があります。生産コストの低い他のTPP締約国に拠点を設置することも選択肢のひとつですが、日本からの輸出でもこのメリットを享受できる余地は十分にありますよね。
必然的にスーパーマーケットや量販店に並ぶ商品価格も下がることでしょう。
2.三国間貿易におけるメリット:原産地規則の緩和によりTPP域内からの調達需要が増加
TPPでは、原産地規則において「完全累積制度」が採用されます。
原産地規則とは、輸入国の税関がある輸入品に適用する関税率を決めるための規則ですね。加工・組み立てによってどれだけの付加価値がついたかによって「原産地」が決まります。EPA締約国の「原産品」と認められた場合は関税優遇の対象となるが、EPAごとにその基準は異なるのです。
完全累積制度とは、原産地を判断する際に、複数のEPA締約国にまたがって加工・組み立てがおこなわれた場合に、各締約国での付加価値を足しあげて、その合計が原産地認定の基準を満たせば「EPA域内原産」とみなすものです。TPPでは完全累積制度を使うことで、実質的には域内での付加価値が合計45%となれば関税優遇を受けられるのです。
完全累積制度の採用により、TPP域内からの調達需要が高まり、域内の三国間貿易の増加が期待されます。今までとは違い材料メーカーなどにとってはTPP締約国市場への進出チャンスが増えるでしょうね。
3.中小企業にとってのメリット:海外進出のためのハードルの大幅低下
通常、海外進出をおこなうためには現地拠点の設置が必要です。拠点を設置するためには多額のコストや人員派遣などの負担が大きく、これまで中小企業が海外進出を検討する際のハードルとなっていました。
しかしTPPでは、締約国においてサービス業を展開したり、電子商取引をおこなったりする際に、現地に拠点やデータセンターを設置する必要がないのです。このことにより、中小企業は日本の拠点にいながらにして、TPP域内への海外進出が可能となるのです。
さらに、ビジネス関係者の一時的な入国要件が緩和されるので、拠点を置かなくても、出張などによる現地での業務が行いやすくなります。
また、中小企業の海外進出を後押しする国の制度も準備されています。いわゆるクールジャパンや環境技術などの分野で海外市場の開拓・事業展開を目指す企業に対して総合的な支援を提供することで、その成功率60%以上を目指すという目標が掲げられています。
まとめ
TPPにはいまだ賛否両論がありますが、海外進出を考えている企業には多くのメリットがあります。それらのメリットを最大限活用することでこれまで海外進出が難しいと考えられてきた業種や商品、またコスト面でためらいのあった中小企業であっても海外進出を実現させられることが期待できます。