アメリカでは教育にも!日本の折り紙はなぜ世界で人気?そのすごさに迫る

アメリカでは教育にも!日本の折り紙はなぜ世界で人気?そのすごさに迫る

誰しもが幼稚園や小学校で一度は遊んだことがある折り紙。
海外の方のお土産でも人気な折り紙ですが、実は日本発祥ではないことをご存知でしたか?
なぜ折り紙が日本文化として世界中で人気なのか、また海外ではどのように注目されているのかをまとめてみました。

世界にもある折り紙

折り紙の起源は、日本ではありません。
「じゃあ紙の発祥地でもある中国?」と思う方も多いかもしれませんが、中国だという正確な情報もありません。
古い文献から、室町時代に贈答品を包んで渡すための「折形(おりがた)」が日本での起源の一つではないかと言われているようですが、いつどこで折り紙が生まれたのかは正確にはわかっていないのです。

そんな折り紙ですが、私たちも作ったことがあるものの中には実はヨーロッパ生まれのものもあります。
例えば、指を入れてパクパクし占い遊びとしても楽しめる「パックンチョ」は、ドイツの「ココット」と呼ばれる伝承折り紙です。
他にも自分なりの折り方で楽しめる「紙飛行機」や、不思議な体験ができる「だまし船」もヨーロッパの伝承折り紙に含まれるそうです。

いずれにしても、数百年も前の世界各国の折り紙が時代と国を超えて同じように引き継がれていると考えると、感慨深くなりますよね。

なぜ日本文化として人気になったのか

決して日本特有の文化から始まったわけではない折り紙が、どうして日本文化になったのでしょうか。
いくつか理由はあると思いますが、今回は以下の2点に着目してみます。

和紙を活かせる

無形文化遺産にも登録された日本の伝統・和紙は、私たちが一般的に利用している洋紙とその性質が大きく異なります。
表面のでこぼこ具合から印刷に向いていない一方、柔軟性や耐久性に優れているため、アートとして用いられるのに適しています。
また、質感やデザインといった産地ごとの個性が光り、見て触って日本の歴史や文化、地域と直接触れ合うことができます。
素材としての適性と独自の文化を持ち合わせる和紙だからこそ、日本独自の折り紙文化を創り出しているのでしょう。

折る・畳む文化

もう一つに、日本の古くからの文化の中に「折る」「畳む」行為が根付いているという理由が考えられます。
例えば日本の伝統である風呂敷は、一枚の布からモノを包む袋に生まれ変わります。折ったり畳んだり結んだり、まるで魔法のように布を変化させます。少し異なるかもしれませんが、日本のモノを包装する技術は現在でも世界から絶賛されているほどの丁寧さ・美しさですよね。
また、ご飯を食べる際に、ついつい割り箸の袋で箸置きを作ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。私もその一人で、細長い袋をさらに細く折ってくるりと輪を作り、そこに割りばしを差し込むということを毎回しています。お箸があるからこその習慣ですよね。

このように、日本の美しい素材とそれを折る・畳むことでさらに良くする文化の融合が、折り紙という文化にマッチして高く評価されているのだと考えます。

世界で大人気のorigami

各国に存在する折り紙団体

日本文化としてのorigamiは、私たちの想像以上に世界での人気を誇っています。
確認できるだけでも、アメリカ、イギリス、スペイン、フランス、ブラジル、中国、韓国、などなど…他にも多くの国に折り紙団体が存在し、折り紙がまさに世界中で愛されているということが分かります。
以下のページには世界の折り紙団体の一覧が記載されていますので、ぜひ参照してみてください。

中でもアメリカでの折り紙人気は高く、2017年時点で「全米あるいは世界各国100以上、1700人に及ぶ愛好家が参加する」(PUBLIC RELATIONS OFFICEより。https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202112/202112_08_jp.html)Origami USAという団体が存在するほどです。
この団体は、世界中の折り紙ファン同士の交流や折り紙技術の向上、そして折り紙の楽しさを広めることを目的に、折り方講座などのイベント開催や雑誌販売を始めとした活動に尽力し、その魅力を発信しています。
最近でも対面とオンライン双方で大規模なイベントが定期的に開催されているようで、HPではイベント内容やその際に折られた折り紙の写真などが見られます。かなり高難易度の面白い折り紙がアップされているので、ぜひチェックしてみてください。

アメリカでは教育にも

さらに驚くべきことは、アメリカでは折り紙が教育のアイテムとしても利用されていることです。
折り紙は、

・紙一枚で誰でもどこでも遊べる創造力
・折り方を通した論理的思考能力と空間把握能力
・交流をきっかけとしたコミュニケーション能力

などを向上させられるため、特に子どもたちの成長を促す効果があると期待されているのです。

実際に、英語で書かれた教育のための折り紙本は数多く販売されており、日本人やアメリカ人が先生となる折り紙教室も全米で開かれています。
また、折り紙による教育活動を促進する”Origami for Education”という非営利団体も存在し、子どもたちの教育だけでなく人々の健康も促進することを目的に活動しています。
この団体では、アメリカの学校を訪問し、子どもたちに折り紙の楽しさだけでなく、創造力や数理力も育むワークショップという形で無償で折り紙を教えています。さらに、コンテストや毎年の大きな会合の開催や、教育のツールとして折り紙が子供たちの様々な能力に与える良い影響に関する研究の実施など、他にも多くの活動を行っています。

もちろん日本にも折り紙に関連した団体はありますが、ここまで日々の生活に折り紙を浸透させるような活動はなかなか体験しませんよね。

折り紙が最先端技術に

歴史、遊び、教育という様々な面を持つ折り紙ですが、現代では私たちを支える最先端技術にも取り入れられています。

ロバート・J・ラング博士というアメリカの物理学者は、昆虫や動物の作品で有名な折り紙アーティストです。NASAで勤務した後に、コンピューターを用いた折り紙数学の理論研究を本格的に始め、その第一人者となっています。
現在はそんな折り紙と数学が融合した「折り紙工学」を用いて太陽電池パネルや災害用仮設住居、体内に入れる医療機器、車のエアバッグなど小さくたたんで大きく開く折り紙の技術を応用した製品開発に携わっています。
以下はロバート・ラング博士を紹介するYouTubeの動画ですので、ぜひご覧になってみてください。

とにかく「すごい」折り紙

折り紙の思いもよらない用途や効果、そのポテンシャルに驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事の最後に、Origami USAもメッセージとして掲げる、アメリカの折り紙作家マイケル・シャル氏が残した言葉をご紹介します。

Origami is for anyone, anywhere, anytime!
―――折り紙は、誰でも、どこでも、いつでも(できる)

年齢を重ねるにつれ、なかなか触れる機会のない折り紙。
たまには誰かと一緒に記憶を掘り起こしながら折るのを楽しむのも良いかもしれません。

参考文献
・K’s折り紙, 「折り紙の歴史」, https://origami.ousaan.com/library/historyj.html#:~:text=%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%91%E3%81%AE%E5%8F%A4%E5%85%B8%E6%8A%98%E3%82%8A%E7%B4%99%E3%81%AF,%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%A8%E6%83%B3%E5%83%8F%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82
・PUBLIC RELATIONS OFFICE, 「折り紙の世界」, 2021年12月更新, https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202112/202112_01_jp.html
・機能紙選定ナビ, 「【簡単まとめ】和紙の特徴について(洋紙との違いはなに?)」, 2022年5月13日更新, https://www.tamura1753.jp/Functional-Paper-Selection/blog15/

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