なぜ多くの日本企業はシンガポールに進出しているのか。

なぜ多くの日本企業はシンガポールに進出しているのか。

東京都とほぼ同等の面積でASEAN諸国の中で4番目の経済規模です。
経済規模は神奈川県とほぼ同じですが、東西貿易の拠点となっており、なんと富裕世帯の割合が世界で1位の国です。
2013年度 新車登録メーカー別 ランキング1位ではメルセデスベンツ。

ASEAN諸国の情報発信源でもあり、高い外国人比率と多様な民族構成になっており、法人設立する企業にとってはグローバル人材を獲得しやすい国とも言われています。

東南アジアの情報発信地。シンガポール市場の実態とは。

【基本情報】

  • ・国名:シンガポール
  • ・首都:シンガポール
  • ・面積:697 km2
  • ・人口(年):540万 (2012年)
  • ・人口密度(年):7,746.05人/km2
  • ・一人当たりの名目GDP(USドル):54,775.53 USD
  • ・一人当たりの購買力平価GDP(USドル):64,583.63 USD
  • ・通貨:シンガポールドル
  • ・公用語:英語、マレー語、タミル語、中国語

※情報基※
面積:CIA「The World Factbook」
GDP、人口:IMF「World Economic Outlook Databases」
人口密度: IMF「World Economic Outlook Databases」 ,
CIA「The World Factbook」

※購買力平価とは?
購買力平価とは「為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定する」という観点で、
インフレ格差から物価を均衡させる為替相場を算出している。
これにより各国の物価の違いを修正し、より実質的な比較ができるとされている。

1.シンガポール市場の国内市場と再輸出市場

シンガポールは日本企業が海外進出する上で頻繁に話題がある地域だと思います。
また、一般的には金持ちが多い。成長しているという認識が強い国ですが、海外進出をする日本企業にとってどのような市場なのか、『シンガポール国内市場』『再輸出市場』の2つの市場を分けて紹介します。

1-1.シンガポール国内市場にはどんな客がいる?3つの客層。

  • 1.国民
  • 2.在留外国人・永住者
  • 3.観光客

上記3種類の層があり、それぞれの特徴を説明します。

1-1-1.国民

国民はシンガポール人口の61.4%の331万人ですが、特徴的なのは、シンガポール国民の中でも多様な民族構成となっている事です。

  • 中国系:285万人/74.2%
  • マレー系: 51万人/13.3%
  • インド系: 35万人/ 9.1%
  • その他: 13万人/ 3.4%

画像 民族グラフ
※情報基:Jetroシンガポール

・シンガポール人はお金持ち?

世界で3番目に一人当たり購買力平価が高く、64,583.63USD(7,629,264円)となっています。
※情報基:IMF-World Economic Outlook Databases

ただ、当然ですが、全ての人がこの購買力を持っているわけではありません。
行っている仕事や役職によって格差は広くなってます。

下記は、Report on Wages in Singaporeという調査機関の調査結果で、シンガポール国民の53,400人から集計したデータです。

  • 【主要産業別 1ヵ月当たり役職ごと平均総給与(2013年6月度集計)】
  • 一番低い所得は建設業の労働者で約 85,630円。(1シンガポール$=85.63円 計算)
  • 一番高い所得は金融業の経営者で約932,083円。
  • 【役職別 平均給与】
  • 経営者:¥618,677
  • 管理職:¥422,841
  • 準管理職・技術者:¥280,695
  • 事務サポート労働者:¥188,386
  • サービス及び営業労働者:¥190,270
  • 職人・関連取引労働者:¥207,910
  • 工場の機械オペレーター:¥186,759
  • 労働者および関連労働者:¥93,422

【男女差給与】
男性は女性の約1.2倍の給与の給与を取得しています。

  • 【年齢別 経営者の平均給与】
  • 25~29歳:359,637円
  • 30~39歳:551,529円
  • 40~49歳:691,873円
  • 50~59歳:688,876円

これを見ても、ご理解頂けるように格差があります。
どの程度の格差になっているか、所得格差を表すジニ係数を国際労働期間が発表をしているので、ご説明します。
この係数の値が0に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味しています。

一般的には、0.4を超えると社会が不安定になる可能性があると言われており、シンガポールは0.463(2013年)となっております。
※ちなみに日本は0.336(2010年)

1-1-2.在留外国人・永住者

続いて、在留外国人や永住者について説明します。
国民のみではなく、在留外国人や永住者が多い事も特徴です。

  • 【シンガポール内に住んでいる方の内訳】
  • 国民:331万人/61.3%
  • 外国人:156万人/28.9%
  • 永住者:53万人/9.8%

画像 国民グラフ
※情報基:Jetroシンガポール

日本での在留外国人と永住者を足した数は日本の人口の約2%弱となっている事から、この違いを想像頂けると思います。

観光客を除いて計算すると、日本で100人通りすがると約2人は在留外国人+永住者。
シンガポールで100人通りすがると約40人は在留外国人+永住者。

この主な背景はシンガポール以外のビジネスマン、移住者を受け入れしやすい環境がある事です。理由としては少子高齢化する人口を外国人移民で補完しようとする政策として、シンガポール全体で取組を行っている事である。
人口が少なく、経済を発展させようとしている地域での共通点でもあると思います。

シンガポール政府は、2013年1月に人口政策としても発表しています。

2013年1月29日、包括的な人口政策「人口白書~ダイナミックなシンガポールのための持続可能な人口」で、国土利用計画の指針となる下記、人口想定値を発表。
・2020年までに580~600万人、2030年までに650~690万人への増加見込む。
・国民の割合: 2012年6月時点の62%から、2030年に55%へ。
・外国人の割合: 2012年6月時点の38%から、2030年に45%へ(永住権者、EP、Sパス、WPなど含む)。
・少子高齢化で縮小する人口、外国人移民で補完。
出展:Jetroシンガポール

実際にビジネス幹部育成を専門とする世界的ビジネススクールであるIMDでの調査では、主要世界60か国でビジネス開発を行いやすい国ランキング(2014年)で、1位となっているので、政策の実行度合いが理解できると思います。
また、今後もシンガポール市場での在留外国人、永住者は増えていくであろうと予想されています。

シンガポール市場に進出するという事は、このような在留外国人、永住者を客として、展開する事でもあるという認識をしておく必要があります。

1-1-3.観光客

世界観光機関の国際観光客到着数によると、シンガポールは1109.8万人(2012年度)のの観光客到着数であり、毎年増加傾向となっています。
内訳は、来訪者の約8割がアジア地域(インドネシア、中国、マレーシア、オーストラリア)が主な来訪者ですが、日本、香港なども前年比10%以上増加しています。
観光による経済規模は、日本国土交通省によると2013年のシンガポー年間観光収入は1兆9,035億円(235億Sドル)であり、GDP(3,456億Sドル)の約6.7%となっているほどです。
※日本1.9%、韓国1.5%、フランス3.7%、イギリス3.4%
(2012年のGDPと観光収入により算出)

この理由としては、世界の20の地域にシンガポール政府観光局地域事務所を展開をしています。
このうち16拠点はアジアであり、現地のニーズに対して観光プロモーションを実施し、集客出来ている事で、これほどの観光客を呼び込んでいます。

観光客の目的はほとんどが、レジャー・カジノ、買い物であり、この観光客にターゲットを絞った商品の展開をする企業もいるほどとなっています。

産業、役職別で10倍以上の所得格差があり、人口在留外国人28.8%の156万人、永住者が9.8%、年間1109.8万人万人ほどの観光客。
このようにシンガポール市場では多様なターゲットが存在している事を認識している必要があります。
『一人当たり購買力平価が高いから』というだけで展開する事では難しい市場です。

1-2.東南アジアへの再輸出マーケット

シンガポールも香港と同様に再輸出マーケットとして注目されている市場です。
香港については、またご説明いたします。

その主な理由は、地域の小さい、且つ人口も少ない自国の経済発展のために、貿易に頼る必要性がある事です。結果、貿易依存度も世界で2番目に高いです。
そのため関税制度も少なく、一般関税はビールなど6品目のみが課税対象ですが、自由貿易協定(FTA)を締結している国に対しては、特恵関税が適用され、原則税率はゼロとなっています。
輸出入手続きに関しても、EDI(電子データ交換)システムが導入されており、関税・諸税の手数料支払いや、貿易手続きが自動的に一括処理されています。
隣国のマレーシア、インドネシアの輸入相手国は、中国に続き2番目にシンガポールとなっています。

この事から、東南アジアへの進出を行う上で拠点設立や、東南アジア開拓のため、最初のマーケットとしてシンガポールへの展開を考える企業は多く存在します。

3.シンガポール進出するために抑える2つの開拓方法。

3-1.現地法人の設立

3-1-1.日本企業の現地法人設立の難易度が低い。

『シンガポール 法人設立』とインターネットで検索するとご理解頂けますが、多くの法人設立支援会社が出てくる事がわかります。
シンガポールでの法人設立は他国と比較すると設立にかかる日数、金額ともに低く容易に会社の設立が可能です。また、申請、承認、設立を行うまでは現地への渡航がなくとも設立が出来る事も特徴です。

3-1-2.外資を受け入れやすい体制と税制上のメリット。

法人税率は17%と日本と比較すると大きな税制上のメリットがある事がご理解頂けると思います。
また、外国人を含んだ設立企業についても助成を行うなど、設立に向けてもメリットがあります。
下記はその代表的な制度についてである。

【2005賦課年度に税額免除(新スタートアップ会社)制度】
新たに設立された法人で適格とされるものについては、設立から3年間、
通常の課税所得のうち、最初の10万Sドルの100%および次の20万Sドルの
50%が免税となる。 2010賦課年度からは、新会社に適用される免税措置に、
有限責任保証会社(company limited by guarantee)も含まれることとなった。
※但し、2013年2月25日以降に設立された、投資持ち株会社および、
不動産開発会社は、税額免除(新スタートアップ会社)制度の適用除外とされる。
出展:Jetro

【政府による3年間の賃金助成制度(WCS: Wage Credit Scheme)】
2013 年度の税制改正により、生産性の向上により、
企業が獲得した利益を適切にシンガポール国民の従業員に還元することを促進するためである。当該制度では、月額給与4,000Sドルまでのシンガポール人労働者について、13年から15年までの間、その昇給額の40%が政府から助成補助される。
出展:Jetro

3-2.ダイレクトメールを活用した営業開拓方法。

シンガポール市場についてはビジネスインフラが整っています。
近代的店舗と言われる、ショッピングモールや、チェーン店が一般的です。

商流もある程度決まっており、日本と同様に、製造業⇒メーカー⇒問屋⇒小売店⇒消費者という形でものが流れる事が多いです。

また、2012年から年間10以上の小売プロジェクトが実施されており、ほとんどはショッピングモールとなっています。そのため、小規模事業者として、小さな小売店を持つ企業は少なく、『現地企業でないとわからない』複雑な現地ネットワークも少ないです。

この事から企業リストの取得や、インターネット上から企業情報を取得する事が他国と比較すると容易です。

取得については下記のような企業や団体が行っています。

このような企業からリストを購買する事で、シンガポール企業へコンタクトを取る事が出来ます。弊社でもこのような方法で海外企業にメールや電話をし営業開拓を行ってますが、他の地域では、獲得が困難な場合が多い事に対して、シンガポールでは比較的に容易です。
このような、ダイレクトメールを活用し営業開拓が出来る事も特徴の一つです。

具体的なダイレクトメールを送る方法については、別途ご説明します。

4.まとめ

遠隔での取引を頻繁に行っている企業が多く、商談設定までは比較的容易な地域です。
国を上げて、外国企業、外国人を受け入れている国であるがこそ、このメリットは感じますが、それと同時に、競合他社は様々な地域から来ており、ここに勝てる強みを持っている必要があります。
最低でも競合他社が何をしているかを知っておくべきであると思います。

安易に『富裕層を狙う』『みんなお金持ってる』という認識のみでは進出が困難です。
現地に会社を作る事が容易な地域だからこそ、進出をするのであれば『ガッツリやる』必要があると感じています。

日本から近い地域なので、まずは視察をしてみる事も良いと思いますが、容易にコンタクトを取れる地域なので、まずはコンタクトを取る事をお勧めします。
日本に対しても非常に良いイメージを持って頂いているので、良いコミュニケーションが取れると思います。

【日本に頻繁に買い付けに来る、弊社のバイヤー】

【シンガポールバイヤー】

セカイコネクトアカデミーオンライン

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