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「東京オリンピックが与える経済効果」を予想している数値データをまとめた

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リオオリンピックが終わり、東京オリンピックへのカウントダウンが始まっています。

昨年から今年にかけて、競技場のデザインや予算の問題、ロゴの問題などネガティブな話題が目立っていましたが、今回のリオデジャネイロオリンピックでは日本のメダル獲得数が史上最多を更新し、閉会式での東京オリンピックに向けた演出が大きな注目を集めるなどのポジティブなニュースも伝えられ、2020年東京五輪に向けて機運が高まっていると言えるでしょう。

そこでこの機会に、オリンピックの経済効果はどのくらいが予測されるのか、政府はどのように動いていくのか、様々な業界がオリンピックに向けてどのような取り組みをしているのかなどをまとめました。

1.予測される経済効果

オリンピックのもたらす経済効果については賛否両論がありますが、前回の東京オリンピックのような「高度経済成長期」を作り上げるほどの力はないものの、「実質GDPを毎年0.2%~0.3%押し上げる」(2015年12月日銀発表)と見られています。

発展途上国や新興国ならともかく、先進国において毎年+0.3%というのは大きい数字と言えます。
2018年までで1%~1.2%ですから、現在の実質GDPが約530兆円であることを考えると、およそ6兆円の拡大になります。

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(内閣府 国民経済計算より)

日銀はこの数字を「訪日外国人に対する観光業関連の拡大」と「オリンピック開催にあたっての建設業関連の投資」の2つの軸から試算しており、直接的に恩恵を受けることのなる2大業界は建設業と観光業であると言って間違いないでしょう。

では、その2大業界にはどのような影響があるのでしょうか? また、それ以外の業界には変化があるのでしょうか?

2.観光業に与える影響

そもそもどのくらいの観光客が来るのか、というところからお話していきたいのですが、まずは下図をご参照ください

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(数字は東京都の試算および観光庁宿泊旅行統計調査)

オリンピックによって東京に来場すると考えられているのはのべ1,500万人。

比較対象として例を挙げると、東京の昼間人口と同じくらいの外国人観光客が東京を出入りすることになります。日本人観光客も含めるとさらに大きな数字になるでしょう。

対して、東京の1日あたりの宿泊者数は11万人。あくまで宿泊者数であってキャパシティを示しているわけではないのですが、普段はお客さんが100人しか来ないお店に、ある日900人以上のお客さんが押し寄せてきたらパンクしてしまうのは想像に難くないですね。

ちなみに同じように人が多く集まるイベントだと、

東京マラソン : 1日あたり来場者数172万人
明治神宮の初詣 : 1日あたり来場者数106万人
隅田川花火大会 : 1日あたり来場者数95万人

などがありますが、その時と同様の状態が2週間半ほど続くと考えて頂ければ、特に関東にお住まいの方にとってはわかりやすいかと思います。

このような状況に対して政府は急ピッチで対策を進めており、量・質ともに充分な宿泊施設の確保を急いでいます。

まず量の面から言うと、アンダーズ東京(ハイアットグループ)、ホテルグレイスリー新宿(藤田観光)といったホテルが開業し、客室数は5%増え、招致委員会としては当面の需要を満たしているとしているものの、今後の観光客数の増加も見越してこの機会に新規開業を狙う宿泊施設も出てくるかもしれません。

また質の面に触れると、従業員向けに語学の講義を拡充したケースや、インドネシア語やタイ語などに対応可能な従業員を雇用するホテル、文化・宗教的に柔軟な対応が出来るよう準備を進めるホテルなどもあります。
宿泊業界向けの教育事業や人材派遣事業にも影響が出てくることが考えられます。

なお、オリンピックを別にしても訪日外国人観光客数は急激に増加しており、政府は以前「2032年に2000万人」と掲げていたところ、2015年時点でそれをほぼ達成してしまったため、急遽「2032年に4000万人」と目標を修正するなどしています。

政府は観光を「円高や株安の打撃を受けにくい業界」として成長戦略の大きな柱であると位置づけており、

・中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシアのビザ発給条件を緩和し、より多くの観光客を呼び込む
・全国200箇所の文化財の修繕や、多言語解説を導入し、保全から観光活用へ転換を促す
・大型国際会議の誘致、観光業に従事できる人材育成も進める
・訪日外国人の旅行消費額を現在の3兆5000億円から、2032年に8兆円にすることを目指す

という施策を発表しています。
オリンピックに向けて、というより、オリンピックをきっかけとして、東京のみならず日本全国の観光業が大きく変わっていくでしょう。

<考えられるビジネスチャンス>

観光資産となる文化財関連へのテコ入れによって、今まで注目されていなかった場所が外国人のみならず日本人の国内旅行客にとっても魅力的なロケーションとなることが予想されるため、そのような地域への進出などが検討できます。
また、人材育成に関しては国から新しい補助金や助成金が発表されることも予想できますので、それを追い風として人材育成関連のサービスの受講者が増加するかもしれません。

主体となる観光業者はもちろん、それを支える人材育成業者や人材派遣業者にビジネスチャンスがある他、外国人向けのマーケティング、タクシーや飲食店での外国人向けサービスを拡充する中で、様々なビジネスが生まれていくことが予想されます。

また、自動翻訳ソリューションや観光ナビゲーションといったIT系ビジネスにもチャンスが生まれます。
実際にNTTでは、スマートフォンなど通じて、利用者が見ている風景映像から、高精度に複数のモノ(3次元の物体など)を認識し、その中から利用者の属性(国籍、言語、性別等)や状況(位置、行動の履歴等)に応じた情報を抽出し、利用者の状況に応じた「観光ナビゲーションサービス」を実現するソリューションを発表しています。

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(出典:NTT持株会社ニュースリリース)

3.建設業に与える影響

既存施設を最大限に利用するとされている今回のオリンピックですが、11の競技場と選手村が新設されることになります。

会場建設工事費の総額が4500億円ほどになると予想され予算が組まれていますが、先述の通り観光客数の増加も控える中で、インフラ整備や宿泊施設整備などの需要も喚起されており、建設投資が大きく増えることは間違いありません。
国内の建設投資は1992年の84兆円を境目に右肩上がりで下がっており、2015年は51兆円です。これを機に大きく盛り返しが掛かることが期待されています。

一方で懸念とされるのが人材不足と資材価格の高騰です。

そもそも建設業界では1997年時点で685万人の就業者数がいたところ、2010年には498万人まで減少。その後建設業界の平均賃金が若干上昇したにも関わらず、2015年時点での就業者数は499万人となっています。

東日本大震災とその後の熊本地震もあって全国的に建設労働者は不足する中で、建設業者は“少ないパイを取り合う”状態になっており、職人層の人件費は高騰しています。
資材価格も上昇しており、需要が高まる中でどのように支出を抑えていくかが今後の建築業界の課題となってくるでしょう。

オリンピックを契機として、どのように建設業界が変わっていくのかについて、業界大手の幹部からはこのような意見も出ています。

「オリンピックそのものよりも、その波及効果に期待している。2020年までとは言わないが、2019年頃までは物凄い勢いで仕事が出てくるだろう。震災復興事業や国土強靭化計画に加えて都内ではオリンピック関連の建設ラッシュが始まる。オリンピックの開催に合わせて、民間でも多くのプロジェクトが生まれるのは確実で、需要と供給のバランス、つまり供給側の人不足が今後5年は間違いなく続くのではないだろうか」
(ダイヤモンド・オンライン 2014年4月25日掲載のコラム 「「復興+五輪」で人手不足に拍車かかる建設業界
解決を突きつけられた“前時代的人材獲得法”」より)

人材不足という問題を抱えつつも、確実に需要の増えていく建設業界。

国内需要を牽引する業界の一つとして、この問題を改善したいところですが、国からは助成金という形で支援が提供されています。

認定訓練の受講、技能実習の受講、作業員宿舎設置など多岐に渡る助成金になるのでここでは全てを解説できないのですが、

・認定職業訓練を受けさせた場合、1日あたり5,000円を国から補助する
・技能実習の実施に要した実費相当額の9割を補助する(岩手、宮城、福島については10割)
・新たな雇用管理制度を導入・実施した場合それぞれ10万円を助成
・上記の制度によって離職状況が改善された場合60万円、入職状況が改善された場合さらに60万円

といった補助が実施されています。

<考えられるビジネスチャンス>

建設業そのものにとってオリンピックがビジネスチャンスであるのは言うまでもないのですが、それを取り巻く諸々の業種、例えばより安く資材を調達できる商社や、運送業者などにチャンスが生まれてくることが考えられます。

4.金融業に与える影響

また、オリンピックをきっかけに大きく変わっていくことが予想されているものを一つ挙げるならば、クレジットカード関係があります。

日本と比較してクレジットカードの利用率の高い外国人観光客が多く流入することを契機として、キャッシュレス化が進むことが予想されますが、オリンピック開催地である東京だけではなく全国的にキャッシュレス化を推し進めるという方針を政府は明らかにしており、2014年末に発表された「キャッシュレス化に向けた方策」では、様々な方針が打ち出されています。

<今後の方針(一部抜粋)>
・ 海外発行クレジットカード等での現金引き出しが可能なATMの普及
・ 海外発行クレジットカード等での交通系カードの利用環境の整備
・ クレジットカード等使用可能店舗での表示促進
・ 地方商店街や観光地等でのクレジットカード等決済端末の導入促進
・ クレジットカード及びクレジットカード決済端末の IC 化
・ POS 端末を含むキャッシュレス決済端末のセキュリティ仕様の標準化

この他、クレジットカード利用に関連するセキュリティの厳格化、地方税のクレジットカード決済の促進などといった方針も掲げられており、電子決済を取り巻く状況は著しく変化していくものと考えられます。

日本人はクレジットカードの所持数は多く、一人平均3枚程度となっているのですが、利用できない店舗・サービスも多いために、下図の通り他国と比較して低い利用率となっています。

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<考えられるビジネスチャンス>

現状の14%を他国同様の50%程度まで押し上げるとすると、そこに巨大市場が生まれます。

例えば情報セキュリティ関連業者や、銀行ATMやPOS端末といった機械のメーカー。
新しいシステムが必要になればIT業界にも新たな需要が生まれます。
また、新制度をアピールするためにPOPやポスターの制作で、関連する製造業や印刷業にも影響があることが予想されます。
クレジットカード周り一つをとっても、オリンピックが幅広い市場に影響を与えることは間違いありません。

5.オリンピックをきっかけに、ビジネスマン一人ひとりが求められていくもの

ここまでで企業側への影響を述べてきましたが、最後にこれからの“個人”に今回のオリンピックがどう影響を与えていくのかを書きたいと思います。

最も大きな影響としては、やはり、一層の国際化が進むことだと思われます。

特に国が「成長戦略の大きな柱」としている外国人の呼び込みは、観光客のみならずビジネス客の呼び込みも指しています。
まずは言語など、手のつけやすい部分から始めつつ、文化的・宗教的に極端に異なる相手とでも良い関係を築けるような、グローバル人材としての考え方を身に着けていくことで、よりビジネス上でも重要な人材となっていくことができるはずです。

1964年のオリンピックをきっかけに、日本企業は国内の高度経済成長に貢献してきましたが、それから52年、当時とは比べ物にならないほど日本は発展しました。
もちろん、これからも外国人観光客の呼びこみや、新しい決済システムの導入などで市場が膨らむこともありますが、さすがに昔ほどの伸び代は無いかと思います。

2020年のオリンピックをきっかけとして、日本企業はアジア等の新興国の「高度経済成長」に寄与することで、更なる飛躍を狙うタイミングが来ているのかもしれません。

●多様な文化にも対応できるノウハウを身につけた日本の観光業
●急な需要の増減にも対応でき、確かな技術力を持った建設業
●国の決済システムが大きく変化するのにも適応した金融業
●そしてそのような業種を支えた実績を持つ数多くの業種

それらを動かす日本発のグローバル人材は、必ずや海外諸国の経済にも貢献できるはずです。

“目指せ2020年”といわず、その先も見据えた海外展開に向けたチャンスとして、オリンピックに向けて準備をしていきましょう。

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