参考になる日本企業の海外ビジネス成功事例【アジア編】
世界的にグローバル化が加速していき、これから国内市場は収縮していく一方だろうと言われていますが
日本は未だに自国のマーケットを中心に据えた発想から脱却できていません。
そんな中企業の生き残りを賭けて海外戦略を目論む企業が増加しています。日本で培われた製品や技術を海外で展開するにはまず事前の情報収集が不可欠です。
グローバル化の時代とはいえ、日本国内では共通する常識や法律に守られています。海外展開するということは文化や風習、商習慣のまったく異なる国や業界を相手にすることになり、さまざまな困難や苦労を乗り越える必要があるのです。
ここでは実際にアジアで海外ビジネスを成功した企業を3社厳選し、成功事例を通して成功へのヒントを探ります。
実際にあった日本企業海外ビジネス成功事例【アジア編】
成功事例①【アジア編】
出典:京都精工株式会社 HP
・社名 京都精工株式会社
・所在地 京都府宇治市
・従業員数 25名
・展開先 中国・広東省
産業用検査装置の設計から製造をトータルプロデュースしている企業です。顧客の要望を受けてオーダーメイド生産しているのが特徴です。とくにリークテスト装置の分野で自動車部品メーカーの顧客を多く抱えていました。
自動車部品メーカー自体が中国への海外展開を果たしていた中、業界の流れに応じるように中国への進出を決めることとなります。
中国の中でもどこに拠点を置くかが社内で何度も検討が重ねられました。
京都精工の場合は中小企業基盤整備機構のアドバイザーからサポートを受けるかたちで現地の情報収集を始めていきます。
そして企業として初めての海外進出となるため中国の主要な工業区の見学を経て決定されたのが広東省佛山市でした。
京都精工のケースでは顧客となる自動車部品メーカーが既に多く進出している都市に拠点を選び、そこから現地におけるハード面、ソフト面の状況を緻密に検討しています。
また、単純に「部品を中国で製造する」「国内製品の市場として中国をターゲットにする」といった意識ではなく、中国現地法人を設立して周辺の顧客企業のネットワークの中で足場を確固たるものしていこうとした点にアドバンテージがあったと考えられます。
短期的な利益を追い求めるのではなく、中国現地で種まきから水や肥料をやってじっくり事業を育てていこうという姿勢には学ぶ点が多いといえるでしょう。
成功事例②【アジア編】
出典:タマノイ酢株式会社 HP
・社名 タマノイ酢株式会社
・所在地 大阪府堺市
・従業員数 300名
・展開先 香港、上海、シンガポール、ニューヨーク
豊臣秀吉の時代にまでさかのぼるという歴史ある老舗企業が海外へ事務所を開設したり現地法人の設立に動きを見せたのは2008年以降でした。
タマノイ酢では創業100周年の節目となった2007年に海外事業部を起動させて海外への販路拡大を模索し始めます。
海外展開を意図した背景には国内での酢市場の縮小が予測されることにありました。和食が世界的な注目を浴びるようになり酢の輸出に着目したのです。
ただ、アジアではコスト面の関係で商品価格が高額になってしまうため現地生産の拠点を設立する計画も生まれています。
上海やシンガポールに現地法人を設立した際、価格の高さが販路拡大に障害となっていました。
現地のネットワークを作りつつ情報収集に集中することで富裕層にとどまらず中間層の消費情報の獲得にもつながり、ユーザーの広がりを意図した戦略が立てられるようになったと見えます。
タマノイ酢では海外展開に当たって現地における情報ネットワークの確立が出来る人材こそ大切だと考えていることがわかります。
成功事例③【アジア編】
出典:株式会社くしまアオイフォーム HP
・社名 株式会社くしまアオイフォーム
・所在地 鹿児島県串間市
・従業員数 8名
・展開先 シンガポール、香港、台湾
サツマイモの一大産地である串間市にあるくしまアオイファームは地元農家から事業規模を拡大してきました。
市場に卸すのではなく小売店に直接販売を続け、2012年以降は海外へも積極的に輸出をしています。
シンガポールや香港、台湾においてそれぞれの国や地域における市場調査を深め、
輸出の専門家の意見を取り入れながら定期出荷のベースを生み出しました。
くしまアオイフォームの場合、消費者の声をつぶさに取り入れサツマイモに対する生産方法を常に改良してきたことが海外での市場開拓を順調に推移させた要素と考えられます。定期出荷で大切な生産量調整を実現して、海外へも安定した輸出を可能にしたことが海外市場獲得の糸口を掴んだといえます。
まとめ
3つの企業の成功事例を見てきましたが、いずれにも共通しているのは徹底した情報収集と専門家からのアドバイスを受け止めて戦略の練り直しを続けてきたことです。
冒頭でも言った通り、安倍首相が打ち出した「第三の矢」に象徴される国内の構造改革が成功としたとしても、人口減少が予想される国内市場が大きく成長することは考えられないため、海外市場への進出は必須と言っても過言ではないでしょう。
例えば、“国内で技術ばかり磨いて素晴らしい商品を作れたとしても肝心の買ってくれる相手がいなかったら本末転倒”だということです。
日本で大手と言われている企業でも海外進出は苦戦しています。市場調査不足、個々の国によってニーズが違う、並びに商談の進め方も違うのに日本のやり方で進めようとするのが大方の原因だと思います。
海外の市場や文化を深く理解しないで日本の優れた商材、優れた営業力を持っていたとしても海外市場で機能することはありません。
ゴールドラッシュと言われているアジアや東南アジア市場進出は我が先と争っている状況です。あと2〜3年もしたら進出のピークになり、ブランドや市場が確立してしまい新規参入ができなくなってくるでしょう。
今回はご紹介した成功事例は情報、人材、そして基礎となる企業の技術。それをないがしろにすることなく、あくまで事業戦略の一つとして地に足の付いた海外ビジネスを目指したところに成功の秘密があるのかもしれません。