中国の経済成長が日本に与えた影響とは

中国の経済成長が日本に与えた影響とは

中国のGDP成長率は、2000年~11年まで△8%以上を維持しました。2003年~07は二ケタ以上です。2012年に△7%台に落ち込み、2015年は△6,9%では、と見られています。順調に高度成長から安定成長に移行しているように見えます。しかし李克強首相自らが遼寧省党委書記時代、「目安にすぎない。」と発言しているように、その信憑性には疑義がもたれていました。2015年はさらにそれが強まり、7%前後どころではない、実際は3~5%台だろう、というアナリストが多いようです。現実は高成長から低成長に急激にシフトダウンしている、と見られます。そんな折、中国のこれまでの経済成長が日本に何をもたらし、次に何をもたらすのか、考えてみます。

中国の経済成長により変化していった日本

ユニクロ、しまむらを支えた中国の労働力

中国の経済成長を存分に利用して成功したのはユニクロです。1999年、東証一部への指定替えとともに、価格破壊の1900円フリースを1600万枚も売り、鮮烈なメジャーデビューとなりました。販売量もすごいですが、これだけの数量を生産するのはさらに大変です。日本のアパレル史上空前でした。それを担ったのは中国です。糸、編立て、染色、縫製、すべて中国の工場で行っています。中国の安価で豊富な労働力があればこその大プロジェクトでした。翌2000年には、各社一斉に後追いし、日本の中国からの繊維輸入が19,7%の大幅増加、さらに2001年には繊維輸入の70%以上が中国となり、その後2013年まで、13年間70%台をキープしました。
 経営スタイルではユニクロの対極にある、しまむらも同様です。1997年の500店舗突破、2003年グループ1000店舗、2008年の1500店舗、今年の2000店舗突破まで、同じように中国の成長と重なります。しまむらの商品生産もこの間90%近くが中国でした。今や、アパレルチェーン世界ランキングで、ユニクロは3位、しまむらは10位に躍進しています。
一方で大・中・小の日本メーカー各社も中国に工場進出し、中国の安価な労働力を利用して日本市場向け商品の製造コストを引き下げました。中国の経済成長が日本にもたらした影響の最たるものは、物価の安定、だったかも知れません。

中国経済の現状は

GDP-Japan-China-US

しかし景気減速とは関わりなく、賃金上昇と円安によりこのビジネスモデルはもう限界でした。上海市の最低賃金は2006年の750元から2015年には2020元(約4万円)と10年で3倍に近くなり、改定の見送られた2009年を除き二ケタ上昇です。外資系企業がこの賃金で労働者を雇用するのは実質不可能で、最賃の少なくとも1,5倍に社会保険と住宅積立金でさらに40%以上の会社負担が必要です。労働コストメリットは縮小を続けています。さらにアベノミクス以来の円安が、輸入価格を押し上げました。もう中国製品は安くなくなっています。そこへ中国の景気減速が追い打ちをかけます。
中国税関の統計では、2015年1~11月の輸出累計(人民元ベース)は▲2,2%となりました。昨年は△4,9%ですから、明らかに潮目が変わりました。GDP成長エンジンとしての輸出には多くを望めません。もう一つのエンジン固定資産投資は2ケタの伸びを維持していますが、その結果「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンやゴースト工業団地が全国に乱立しています。とても有効とは言えません。最後の頼りになる成長エンジンが個人消費です。この指標は、6~7月の株式バブル崩壊にもかかわらず、どの地方政府発表を見ても△10%台前半で安定しています。これをさらに上昇させるべく、各地方は輸出競争力を犠牲にしても、最低賃金を上げていくと思います。

まとめ

今後の日系企業の将来戦略は明らかでしょう。中国の「労働力」を利用するのではなく、高まった「購買力」を利用する方向へのチェンジです。すでに工場は中国市場向けにシフトしないと生き残りは困難です。パナソニック、カルビーなどの中国工場撤退が巷間を賑わせていますが、この方向性で成功している工場もたくさんあります。中国市場の開拓と工場進出をセットとして行動している日系企業もあります。これはB to B、B to Cビジネスを問いません。
 B to C企業なら、進化の早いインターネット通販事情の把握が大切です。沿海部の大都市はすでにオーバーストア状態で、閑古鳥の鳴く「鬼城」ショッピングセンターが珍しくありません。それに反してネット通販は毎年40%ペースで成長を続けています。日本でも話題となった11月11日(独身の日)、アリババ集団の仕掛けた24時間ネットセールは、前年比60%増の912億元(約1兆8000億円)の売上げを記録しました。ユニクロのすごいのは、ここでも第4位の6億元を売上げ、外国企業のトップセラーとなっていることです。ともあれ販路開拓の方法が絞られてきたのは好機と思います。爆買いツアー頼りでは今後が不安、ということでしたら、思い切って進出を考えてみてはいかがでしょう。

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